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勇者より軍隊の方が使えることに気づいてしまった件  作者: 亜和鵶吾明
第1章:平和的交渉
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平和的交渉11

「魔王軍の目的はこいつらに王国軍の動きを報告させること。そのためにはこいつらには生きていてもらわないと困るから、全ての食料を奪うことはしなかった。だが、残しすぎるとこの付近で活動する部隊に現地調達され、彼等の口に入ることになる。だから残す食料の量はできるだけ絞った。魔王軍の行動は理に適っていると思うが?」

「違う! 俺が言いたいのはそういうことではない!」


 杉下はつかつかと俺の目の前に歩み寄り、人差し指を俺の胸元に突きつけて言った。


「お前は言ったよな? 村には税として納めるはずの食料が丸ごと残っていると。俺達はそれを信じてお前に着いてきた。しかし、ここには食料は無いらしいじゃないか。どう責任を取るっていうんだ? ええ?」

「だからお前をここに招き入れなかったんだ。誰かこいつをまた簀巻きにしておいてくれ」


 杉下に蹴破られた入口から覗いている高木派の面々にそう言うが、今回は誰も動こうとしない。誰も彼もが俺に疑惑の目を向けている。

 俺はひとつ、大きな溜息を吐いた。


「いいだろう。ではお前達、せめて最後まで話を聞くことだ。杉下、お前もだ。食料を得る当てはまだ、ある」


 俺は、再度ジャン達に向き直った。


「通信機はどこだ?」

「え?」

「そのフードの男との連絡に、通信機のようなものを受け取ったはずだ。それはどこにある?」

「い、いえ、そのようなものは何も……」

「何? ではどのように『報告』とやらを行なっていた?」

「定期的にどこかから魔物が――そう、例の空飛ぶ猿の石像みたいなやつです――あいつが飛んできて、我々が集めた情報を記した手紙を受け取るとまたどこかへ飛び去っていく。それの繰り返しでした。もっとも、戦争が終わってからこっち、一度も現れていませんが」

「その魔物はどっちから来て、どっちへ飛び去って行った?」

「まちまちでした。森の深くへ飛び去ることもあれば、森の縁に沿っていくようなことも」

「王国内部方面へ行き来するようなことはあったか?」

「王国の方ですか? いやあ、あったような、無かったような……。はっきり思い出せる範囲では、無いかと」

「ふむ……では戦争中、魔王軍がこの辺りを通ったか?」

「ええ、ええ、そりゃもう、何度も何度も通りました」

「どちらからどちらへ向かった? これもまちまちか?」

「いえ、これはいつも同じです。いつも北側の森の中から現れます。行く先はまちまちですが、たぶん我々が送った情報を元に王国軍のいる方に向かっていたのではないかと」

「それだ。正確にどっちの方角か教えろ」

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