1926話 それぞれのやること58
気まぐれ
「断ることはできるんですかね?」
「もちろん断るのは自由じゃが・・・・・・お前さん言葉とは反対に楽しみにしてるように感じるがの?違うか?」
爺さんに言われた言葉にすぐに反対することができなかった。すぐに反対すれば爺さんも受け入れてくれたかもしれないが口から言葉が出ることはなかった。
心臓の音が早くなって気持ちが高ぶってきているのは、自分の筋肉が小刻みに痙攣していることから分かった。
筋肉と細胞が爺さんの技を受けたがっている。
爺さんを攻撃したいわけじゃなく鈴君の師匠である爺さんの技を前よりも受けられるか筋肉と細胞が試したがっている。
そんな感じがする。
葉君を一人で人気の少ない場所で待たせるわけにもいかないし、爺さんと俺の体力的にも勝負は一本だけだと思う。
手袋とマフラーとコートを外して自分も準備運動を始める。
体を動かしていると寒いはずなのにいつもより体が熱を持ち始めているように感じる。
いつから俺はこんなに攻撃的になったんだろうと心配になるぐらいだ。
大きく深呼吸してから両頬を思いっきり叩く
『バチッ!!!』
周囲が静かなせいかいつも以上に音が大きく響いたような気がした。
思いっきり叩いたせいか少しぼーっとしていた頭も冴えて準備運動が完了する。
「お待たせしました」
「待っとりゃせんよ。時間が無いのに付き合わせて悪いの」
爺さんは鈴君よりリラックスするような形で立っている。このままなにもしなければ引き分けで終わりそうだがせっかく相手をしてくれるなら受けないわけにもいかない。
それに引き分けで終われる状態ではない。
隙を探すようにゆっくりと距離をつめていく。
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