目指す街 メタリカーナ
前回のあらすじ。
人の夢と書いて儚い
マスターは端から見たら独り言を呟く危ない人
人間よ、さようなら
しかしSPはホントにシビアだな。人族の場合はこの世界でレベルのみを頼りに無双ってのは無理そうだ。基本上限100だし。
むしろ人族以外が優遇されすぎてる感があるけどなんでだ?神は人族が嫌いなのか?むしろ神が人型じゃないのかもしれない。この世界のヤツは。
とりま色々まとめるとー、俺の選択肢は以下の通りって感じだな。
1.現状維持のまま保留して後で決める。
2.すぐにダンジョンを造って弱い人が来てくれるのを待つ。
3.俺自身の力で敵対者を倒し、DPを稼ぐ方向で動く。
4.迷宮主を諦めて普通に生活ができるように頑張る。
5.ダンジョン造りつつ自分も鍛えて侵入者をフルボッコにできるよう頑張る。
まず5は没な。俺氏死んじゃう。
なけなしのDP使ってダンジョン作ったら俺自身の強化できないし、モンスターと戦える人たちと俺が渡り合える未来が想像できない。
早速俺がフルボッコされるヴィジョンが視える。
1はThe日本人的で正直好ましいがなんの解決にもならないし、そもそも現状の生活力皆無だからダメな。
多分のたれ死ぬパターンが濃厚とみた。餓死とかきつい。
2は運任せの風任せか。これもないな。
運よくいい感じにいければいいが博打すぎるモノに命かけらんないって。
なんか俺が全然適わないような盗賊とかがダンジョンに居座ったら終了だし?
あー、そうなると消去法的には3か4しか残らないか。
個人的な好みで言えば4だけど、多分それデッドエンドルートっぽいかなぁー。
この世界の普通の人の生活やその水準がわからんけど、出身も経歴も何もない19歳じゃまっとうな所で働けるか怪しい。
下手したら10歳前後で人生決まるような世の中かもしれないと考えるとちょっと足踏みする。
散々読んだラノベ的展開で言えば、親の仕事を継ぐか、幼少期に見習いからやらないとまともな職に就けないパターンなんかもあったし。住所不定無職の異国(異世界)人とかどう考えても怪しいしな。
そう考えると必然的に3か。戦闘経験皆無の俺じゃ絶対に無理ぽ。
っていいたいところだが、そこはスキル補正と、なるべく初期の雑魚モンスター退治とかでどうにでもできるだろ。
ていうかDPで自己強化できる俺、既にチートじゃね?とか思ってるし。
まずは安全確実に倒せる相手だけ倒して自己強化する、地道成り上がり系チート野郎を目指して頑張るとするか!
「決めた!3にする!」
《はい、マスター。カナデはマスターと共にあります。》
お、おう。すげーな。俺の脳内会議の結果を急に出したのにまったく動じないっていうか意にも解さないよこの娘。
「おう!頼りにしてる!よろしく頼むな、カナデ!」
《はい、マスター。》
「まずはスキル・魔法一覧でも見ながら近くの町や村でも目指すかー。カナデ、地図とかは参照できそう?」
《はい、マスター。マスターの視覚情報にリンクします。》
「お、きたきたー。サンキューカナデー。」
今度もまた先ほどのステータス画面同様、俺の視界の一部に地図情報が表示されてきた。
半透明の地図は視界の左上部分に浮いており、G○○gle先生みたいに直感的操作が可能なようだ。
早速縮尺とか表示位置とかをコネコネチョコチョコいじってみるといまいる草原から少しずれた所に街道のようなものが続いていて、その道を北に少し行った場所にそこそこの規模の街があるようだ。
「まずはこの街にいってみるか。名前はー・・・メタリカーナの街か。」
《はい、マスター。マスターの現在地から平均速度5Km/h程度で進むとおよそ4時間前後で着きます。》
「20キロ程度なら、まぁそこまで遠くないか。若干ダルさを感じるが・・・。」
その程度なら終電逃した時とかたまに歩いてたし、ゆっくりいけば問題ないはず。休憩をはさみながらいけば6時間程度で着けるだろう。問題は水とか食料とか?
地図によると途中に小川があるっぽいし、街道の外れに森もあるから木の実とか取れるかもしれん。
「ま、なんとかなるだろう。」
言い放ち、俺は一路メタリカーナへ向けて歩き始めた。まずは街道へと向かって北西に進む。
暫く草原を進んだら踏み固められたような道が見えてきた。あれが街道だろうと思われる。
舗装は全然されていない。多分人の足と馬車的なもので固められただけの道なんだろう。
なんかのTV番組で見たローマの街道のような感じは全然しない。
ローマ街道は確か水はけ良くするために道の中心辺りを高くして、流れを作ってたりしてたような気がする。けれども全然違ったかもしれない。そもそもTVで見た知識じゃなかったかもしれない。自分が信じられない。まぁ、適当に見てた適当な記憶なんだろう。
もしかしたら神が埋め込んだ知識の中にあったのかもしれないし、考えてもわからんから放置だ放置。
俺は再び思考を投げ捨てて道を進む。前後には人影がなく特に動物もいないようだ。俺がいま歩いてきた東側はかなり遠方まで草原が続いていて、西側は少し道を外れると森が広がっている。
魔の森とかそういう類じゃないといいな。モンスターとか出てきてもどうしようもないぞ?
「カナデ、あの森ってモンスター沢山いたりするの?」
《はい、マスター。いま見えている森は、ここメタリカ領内でも中規模程度の森で、魔物の類がそれなりに生息しています。
しかしながら、この街道沿いは定期的に冒険者や騎士団が討伐を行っているため、比較的安全だと言われているようです。》
「お、早速出てきたな。冒険者!やっぱりあるよな。ファンタジーの定番だもんな!」
《はい、マスター。この世界における冒険者は、概ねマスターのイメージ通りの職業です。
魔物と戦ったり、採取等で様々な素材を集めたり、商隊を護衛したりといった依頼をこなし、報酬を得る人々です。》
「おぉ~。完全にイメージ通りだな。ちなみにそういうのを統括してるのってやっぱりギルドとかあるの?」
《はい、マスター。マスターのイメージ通りの、冒険者ギルドが存在します。
冒険者ギルドは国の垣根を越えた団体で、対魔物・対魔族における人族最大の防壁でもあります。》
「人族最大の防壁!なんか格好いいな!イメージより若干格好いい!」
転生モノによってはギルドは国ごとに分かれていたり、町ごとの限定的なものだったりとマチマチだったりしたがどうやらこの世界の冒険者ギルドはかなり大きく、影響力のありそうな団体のようだ。
当面の生活費はギルドに加入して依頼をこなしながら稼ぐのがいいかな?いかにも転生モノっぽくて滾るなぁもう!
でもその為には登録料とか色々必要になるのかな?ていうかいま街に向かってるけど、俺入れるの?通行料とかとられるの?
「そういえばカナデ。俺、街に入れるの?冒険者ギルドに登録ってできるの?」
《はい、マスター。メタリカーナの街へは比較的簡単に入れると思われます。
入場用の検問で、簡易鑑定を受けることにより犯罪歴を調べられますが、マスターは該当しません。
また入場料も徴収されますが、現物での支払いも認められているため、到着までに薬草類か、魔物の素材などを持ち込めば問題なく通ることが可能です。》
「初耳なんですけど・・・入場料あるのかよ。じゃあなんか採ってかないとまずいじゃん!モンスターとの戦闘とか無理よ俺?」
《はい、マスター。保有するデータの中に薬草類に関する物もありますので、その点は問題ありません。
また、冒険者ギルドの登録料も同様で、登録者以外でも窓口で素材の買い取りを行っているので薬草類を提示すれば問題はないでしょう。》
「そうなのか。なら大丈夫そうだな。よかったよかった。あとは薬草類の採取と、日暮れ前に街に辿り着ければ平気そうだな。ちなみにその薬草類ってどの辺りで採ればいいんだ?できれば安全な所がいいんだが・・・。」
《はい、マスター。このまま街道に沿って進んでいけば3時間前後で比較的安全性の高い薬草の群生地帯近くを通ります。その際に少し森へ入り、薬草を採取するのがいいでしょう。》
「マジか!マジで助かる!ありがとうカナデ!それなら俺にもどうにかなりそうだなー。あとはのんびりこの道歩いていけばいいってことか。なんかやる気出てきたな!」
そういうことならなんとかなりそうだな。薬草持って街に行って、冒険者登録して依頼を軽く探して、良いのがあればやっちゃって、夕飯食って宿に泊まるコースかな?なんかいけそうな気がしてきた!
カナデの情報サポートのお蔭で幸先の良いスタートを切れそうだ。上がったテンションを頼りに、俺はルンルン気分で街道を進む。
メタリカーナの街の情報もカナデに確認してみる。
・メタリカ領、領主のお膝下の街で、領内で1番活気がある。
・特産はフルーツと魔物素材。なんでもこのメタリカ領は魔物が他の領より多い傾向にある。
・大きな街なので冒険者への依頼はかなりの量・種類があって、駆け出しでも十分生活していけるくらいの依頼がある。
・領主お抱えの騎士団もこの街に拠点を持っている。
・街の近くにダンジョンがある。
・下水の整備が進んでいて比較的キレイ。
などなど。明るい情報が多くて気分が良い。特に下水の整備が進んでいるのが良い。何せこちとら現在っ子の日本人。水洗トイレ以外使ったことがないどころか見たこともない。
中世ヨーロッパは窓から汚物を解き放っていたらしいし、そんな世界じゃ生きてけないからホント非常に助かる情報である。もし中世ヨーロッパ方式であったなら、引き返して他の街へ突撃していたかもしれない。
ちなみに領主は子爵家。ピンとこないがお貴族様。できればあまり関わりたくない系の人物だ。ラノベだとまず貴族はヤバい。傲慢で俺様で身勝手で意地汚く性格が悪い最高で最低な嫌われ者だ。
まぁ、メタリカさんがどうかは知らないが、どちらにしても一般冒険者として生活をスタートさせたい俺とは無縁の存在だろう。
その内ダンジョンマスターとして敵対するかもしれないし、いまは放置で!
まだまだメタリカーナの街は遠い。
俺はカナデと雑談しつつ、スキル一覧などを見ながら歩き続けた。
お読みいただき、ありがとうございます。
色々あって若干テンション高めのマスターですね。
次回予告。
マスター、焦る。
犬ってなんだっけ?