ついに起動だ自立行動人形《オートマ〇》!笑わないと病ませるぞ!くらいな勢いで無表情なお人形が仲間入り
感想、評価をいただきありがとうございます(*´∇`)
読んでくださる全ての方々へ感謝の祈りを捧げながら、本編第89-2話を投稿させていただきますー!
前後半に分ける形式の後ろ半分の投稿です!
続きは遅くとも火曜日までにあげますと言っておきながらなんと今日は日曜日!2日早いと見せかけて、5日遅いとはこのことですごめんなさい・・・・m(_ _)m
これからも皆様に楽しんでいただけると幸いです(*´∨`*)
テトにゃんとの仲良しにゃんやん激しい運動・・・もとい練習によって動悸、息切れ、気付けを起こしながらも続いてニコの杖術練習に付き合った。まずはカナデさん主導で型の練習とかをやってから俺に向かって打ち込む練習が高効率とのこと。
一緒になってやった型の練習は勉強になったからいいとして、打ち込み練習にて背丈を合わせてしゃがんで受け続けたが幼女の容赦なき打撃は思った以上に重かった。そして激しかった。ガッツンガッツン振り下ろされる杖って結構怖いんすね。ニコって基本無表情だし幼女に見下ろされるのってゾクゾ・・・なんでもないですすみません。
それと、これはまだニコには早いかなー?って思ったけど魔力が多いし才能があるならとちょこっとだけ魔力操作の練習をしてみた。これはアンナベルも一緒だ。そしたらテトにゃんも仲間外れはイヤだと合流。結局家族総出で練習することになったが、そもそも練習って言ってもみんなはまだ魔力を上手に動かせないから俺が動かすんだよねー知ってたーあははー。
人数増えると魔力消費量が増えるんだけどまぁそこは頑張りましたとも。そんなことを理由に仲間外れ、いくない。そして俺氏ミイラ化の安定フロー。結果にコミットしまくりすぎて骨川筋衛門になる日はそう遠くはないだろう。
「・・・晩御飯できたぞー。」
体力、気力、精神力にそれから魔力と根性。あらゆる面で残機0状態でクタクタになりつつもしっかりご飯は用意する俺。主婦男の鏡じゃんとか思うかもしれないがそれは間違いだと言わざるを得ない。
なんせ思いっきり手を抜いてるからこんなんで料理ちゃんとやってるなんて言ったら世の主婦や主婦男の方々に申し訳ないし怒られそうだもん。
「んん~~~っ!おいっしーのー!」
「んっ。んっ。んっ。」
それでもテトにゃんは素晴らしいリアクションと笑顔で美味しいと言ってくれるし、ニコも黙々と召し上がってくださっているというかその量食べててお腹のどの辺に収まるの?別腹異次元気分は四次元理論なの?という疑問はさておき本当にいい娘たちで可愛くて素敵でお持ち帰りしたいと思ったらもうしてたわごめんごめんご。テヘペロんぬ。
「ママぁっ!ベル's like this!Surprisingly delicious!!」
どうやらアンナベルにも好評なようだ。こいつに至っては味覚が壊滅してる疑惑がユラユラと浮上してるからお世辞かそうじゃないか全くわからんけどなっ。
「こんなにおいしいの、いつ作ったのーっ?」
食レポ芸人や食レポ女子アナを突き放す勢いの輝く笑顔で嬉しい質問をしてくれるテトにゃん。下手なレポートなんざいらん。その最高の笑顔と感じのいいコメントがあれば十分なんです。
なにより空気が読めて気が使えて気立てがよくて声が可愛くて猫耳ピコピコ尻尾がピンピン。もう言うことなんてない程に素敵すぎてお兄ちゃんうっかり間違って信仰しちゃいそうだよー猫天使ハスハス教だよー。
「美味しく食べてくれるのは嬉しいけど、そんなに手の込んだものじゃないんだよ。誰にでもできる簡単手抜き料理だから、材料さえ揃えばいつでも作れるよ。」
と、実はそんなにすごい料理じゃないってことをちゃんと前置きしてから料理の説明をしていく。これは諸々の練習中に合間を見つつクタクタになるまで鶏肉を煮込んで出汁を取って作っただけの水炊きモドキだ。
一応基本の基の字くらいは押さえて鶏ガラを砕いて入れたりお肉は骨ごとぶつ切りにしてみたり、ネギっぽいのやショウガっぽいのを探してきて臭み消しとしてどうにかこうにか使ってみたりしたがしたことと言えばホントにその程度だ。
本来ならキャベツないしは白菜が入ってないと認められなかったり、人によってはポン酢がないと納得いかない!って人もいるらしいがそこのところはお許し願いたい。ここにはキャベツもなければ白菜もない。ポン酢なんか当たり前ながらにあるハズがないんだもん。
しかも灰汁取りとかしてる時間がなかったから初めの内に少しだけ沸騰させてサクッとやってあとはほとんど省略しちゃったんだけど、味や舌ざわりにさほど影響してなかったみたいでよかったと安堵の息を漏らしたのは秘密だ。この鳥は野鳥のくせしてあんまり灰汁が出ないのかな?流石異世界不思議なもんだ。
それとも本当はもっと美味しいお肉だったのかもしれないという可能性も無きにしも非ずと頭を捻るが、これ以上時間をかけられなかったのだから今更言っても仕方がない。料理下手で手を抜いてばかりの俺が調理担当で鶏肉さんには申し訳ない気分だが、他に料理をできる人がいないんだからしょうがなかったと諦めておくれ。あと時間との兼ね合いもあるしと言い訳を連ねてみる。
「てわけなんだけ」
「おかわりなの!」「んっ!」「ママぁ~、haveanother servingしてもいいかしらぁ?」
「・・・うん、調理の云々なんかよりまずは腹ごしらえだな。あるだけ食べようお椀をお出し!」
お話しを聞いてもらえないことは少しだけ悲しいが、美味しく食べてくれてるならば本望だ。ただ、俺の分が残るかどうか・・・それだけが問題だ。キリッ!
その後家族団らん楽しいお食事の時間が過ぎ、カナデさんコールで就寝時間になりましたとさ。
――――――――結局ほとんど残りませんでした――――――――
それからややあって、カナデさん時報によってヒモジイヒモジイ一夜が明けた。昨晩はお腹がちょっとばかし空いてたもんだからちょっとだけ辛かったが、荷物と背嚢型ダンジョンをひとまとめにして抱えて寝たから少しはマシだった。昔お腹が空いた時に枕を押し当ててたら気が紛れた経験がこんなところで活きるとは思わなんだ。(注:貧乏が原因じゃないので涙しないように!)
予備の食糧もあるにはあるが、これは非常時用にとっておいたものなので手は出せない。育ち盛りの愛妹たちのために少しくらいは我慢もするってもんさ!謎ぃ黒しっぽに顔をペシペシされたけど猫と寝てるみたいでむしろ癒されたのは想定外だったが。はぁ、こんなことなら間食用のお菓子くらい用意しておくんだったと後悔先に立たず。
次は自作のカロリーをメイトする的なアイテムやかったいカンパンでも用意しておこうと思うが多分思うだけで終わる気もしないでもない。だっていざとなれば干し肉やらなんやらも買ってあるし。備蓄だから手を出さないだけなんですよ?けして・・・けっして硬くてマズそうだなーなんて思っちゃいませんとも。えぇ、思ってませんとも。
「マスター、他のメンバーのために節制するお気持ちはわかりますが、出汁を取り終わった鶏ガラをかじるのはやめてください。あまりにもみじめです。」
「・・・・・あんまり大きな声で言わないの。他の娘たちに聞こえるでしょ。」ぼそぼそぼそ
ま、まぁ、多少のアクシデントはあったものの、概ね予定は消化できてるからスケジュール的には良好だ。体調だって悪くないし、魔力もしっかり回復してる。俺の身体とスキルなら、鶏ガラにこびりついたお肉でも回復できるってことが証明されたゾ!ぐすん
ちなみに今朝の朝食はみんなで同じ物を食べましたのでご安心ください。昨日の夕飯分がちょっと計算外だっただけなんです。サバイバルでは備蓄のコントロールが最重要課題なのだ!!でももう鶏ガラに噛り付くのはやめようと思う。心がみじめになるから・・・。ホロリ
「ソウー!片付け終わったのー!」
「ありがとう、テト。」
「ん。」
ニコが差し出してくるのは昨日同様背嚢型ダンジョンwith黒しっぽである。こいつに飯を与えろと、そういうことですねわかります。
「・・・う、うん。わかってる。わかってるけどちょっと待って?今日は先に試さないといけないことがあるからそっち優先でね?」
「・・・・ん。」
なんとか引き下がってくれたか。なんでか知らんがニコは黒しっぽの肩?を持とうとする。よくわからんけど相性的な何かが良い感じなのかな?同じ無口キャラ的な?いや、ニコは別に無口キャラじゃないか。そこそこ喋るし。
「てことでアンナベルー。実験してみよーぜー。」
「Experimentー?ママぁー、なに will you do?」
「おい、字面がおかしなことになってんぞ。」
意味は通じそうだが変わらずおかしなヤツだな。こいつの頭の中どうなってんだ?エセルー語もここまできたら新たな言語と言っても過言ではないかもしれない。
「ほら、昨日やってた『人型同期』だよ。ここまで見た目似せてあるから消費する魔力は微々たるもんだろ。多分。」
カナデさんがとても器用に調整してくれたお陰で、写真で見たら見分けがつかないレベルってくらい似てる人形を指さす。改めて見るとマジ似過ぎててどっちがどっちかわからんくなるな。
服とかの違いで判断する他なさそうだが、なんと服の形もほぼ一緒という拘りっぷりに脱帽せざるを得ない。違うのは色くらいなのでキャラクター選択時のカスタム程度の違いである。
「うえ~?Mustなのー?」
声音だけで判断するなら、物凄くイヤそうに聞こえる。これを脳内変換させれば眉間に皺を寄せたアンナベルが見えてくることだろう。美人さんが顔をしかめるとすっごくイヤそうに見えるのが不思議(脳内世界にて)。現実は能面だけども。
「そりゃそうだよ。これはお前のためでもあるんだからマストなの。have to なの。」
「む~~~っ。」
ぶーたれてほっぺでも膨らませてそうな声を出すアンナベル。声に限っていえばかなり感情表現が豊かになってきたっぽい。ついこの間まで対人能力皆無に近かった気がするんですけど学習能力高すぎない?俺なんて19年生きてきて未だにこんなだよ?
「昨日存在が消えそうになったのがそんなにイヤだったのか?特にそんなこと言ってなかったからわからんかったけども。」
「・・・a little。」
「ふむん?まぁ、怖いというのをムリにやらせるのは本意じゃないから説明くらいはしておくか。」
アンナベルにお人形さんの身体がどうして必要なのかを改めて説明してみた。要するに、アンナベルの魔力許容量が少なすぎることと、存在の安定性が低すぎることが原因で行動やらなんやらが大幅に制限されてるっぽいのでそれをどうにかするタメだとざっくり。
細かい話しをするととても長くなりそうなので概略だけにとどめておく。体感時間にしてホンの数分ほどだったと思うがここでテトにゃんがダウン。頭からケムリが吹き出そうになっていたので体育のお時間に時間割を変更。するとニコも一緒にテトにゃんと運動したいと杖を振り回しにいかれた。どうやら気に入っているようだ。
これでもすっごく短く伝えてるんだけどなぁ?そんなに飽きる内容だったんだろうか。でもほらだってカナデさんとの脳内会議の内容とか、数々の仮説とかを言ったらキリがないし。下手な論文数冊分くらいの容量になんねん。それを数分にぎゅぎゅっと凝縮したって逆にすごくない?
「ってことなんだけど、わかる?」
「アーハン?Did ベル understand it? Yes and No.」(わかったような、わからないような?)
「んー、全部をちゃんと理解できなくてもいんだよ。要はちゃんと人形の身体を使えるようになればより自由度が上がるってことだけわかれば。」
「ベル guess!」
んむ~?わかってるって意味で取っていいんだろうか?なんか微妙なニュアンスの言葉だった気がする・・・けど、Noじゃないからいっか。いいよね?やっちゃえやっちゃえー!
「ならよし!じゃ、早速やんべ。サポートは俺とカナデさん、それからダンジョ」
「『人型同期』!!」
「ちょっおまっ!!」
俺が説明しきる前に勝手に実験を始めてしまったアンナベル。おいこらお前まだ設定値とかの入力が済んでないんだぞっ!!
「カナデさんデータの収集と魔力の調整よろ俺はダンジョンの権能設定値の入力急ぐから」
「かしこまりました一時的にマスターの魔力回路を借用しますただいまの時刻よりアンナベルの状態変移に関する詳細情報の取得を開始しますなお作業に伴い周辺観測の精度を落としますのであらかじめご注意ください」
「それでおkそれじゃこっちはこっちで・・・アンナベルとお人形さんの相違点における魔力消費量拡大費用を概算で算出しようまず天辺からな頭髪:材質が大きく違うパッチを3追加魔力を2と設定―眼球:材質が・・・・・・・」
アンナベルが事前準備の時間をくれなかったのでカナデさんと大慌てで様々な調整を後追いで進めていく。いくら俺の思考速度が上がっていてもメニュー操作はこのお手てでやらにゃならんのでぶっちゃけ相当キッツい指つりそう!!あと腕5本は欲しいんですけどっ!
1回目のデータがあるからまだマシだけど、アンナベル自身の消費魔力を限りなく0にしたいことと、存在濃度の増減も起こさせないよう細心の注意を払うと俺の指が悲鳴を上げるがそこはムシ。音声入力機能を並行して使えればと思う今日この頃。
ほぼほぼ最大値までキープしてある俺の魔力とダンジョンコアに貯めてある一晩分の魔力を使ってどうにかこうにかできるか?できればいいなぁーちょっと頑張ろうそうしよう。
「マスター!緊急事態発生!緊急事態発生!想定していた以上の差異を発見!早期対処を願います!対象は・・・胸部!」
「はい?!胸部はサイズも形も拘って拘り抜いてかなり精巧に作った部分の1つだよ?なんでそんなに差異が出るn」
「詳細データを回します本実験における最大差異と認定作業における影響度を4に設定」
「なん・・・だと?そこまでの重大障害だというのか!どれどれ詳細はーっと・・・わっふお???!」
なんだこれなんぞこれ?!どうしてこんなに数値が跳ね上がってるんだ?作りこみは完璧だったハズだろ!むしろ関節部分の方が動きが滑らかになるよう球体関節仕込んだりしたから見た目の差が激しいハズなのに必要とされる差額魔力が推定7倍??!どうなってこうなった?どうしてそうなるの?!
チラっとメニュー画面から視線を外してアンナベルを見る。それからお人形さんを見る。うん、服の上からだけど問題ない。完璧に形をトレースできてる。
―――――ここまで作業開始から約2秒
その時、人形の背後に浮いていたアンナベルがスキルの効果により重なるようにしてお人形の中へと入って・・・んんっ?
「いまアンナベルが動いた時に違和感が・・・?」
急いで脳内再生を繰り返しながら違和感の原因を探す。頭髪の揺らぎや質感、はもう考慮してあるし胸部とは関係ない。腕や脚の向きや関節部・・・うん、想定の範囲内だ。服か?服の皺が原因か?いや違うなブラも含めて正常値だ。
―――――たゆん
「・・・・っっっっっっ!!!!??」
な、なんたることか!なぜにこの違いに気づかなかったのか?!俺は自分が信じられない!信じたくないし認めたくない!
―――――更に2秒経過
だがしかし、これ以外の差異は補正済みだし他に選択肢はなさそうだ・・・。
「くぅっ!俺は・・・俺はなんてことを・・・っ!」
「マスター、原因がわかった以上早急の対処を。」
「・・・・・・・・わかった。そうせねばならないだろう、な。」
ここまで気付くことのなかった自身の愚かしさを嘆く暇はもはやない。アンナベルの『人型同期』による同期もそろそろ最終フェーズへと差し掛かろうとしている。猶予はあってあと2~3秒ってところだろう。
故に、いまからメニューを使って設定値を更新しても間に合わないだろう。致し方がない。仕方ないんや。ここは俺の魔力コントロールで直にやるしかなさそうだ。そう決断し、徐に手を伸ばす。
「胸部へ接触。修正パッチを18追加。追加魔力・・・14で修正&再稼働!」
今回の最大の失態であるアンナベルの胸部装甲に関する問題管理を速攻で解決する為の緊急措置としてマニュアル作業でレッツトライ!これで穴は全て塞いだハズ!
「さぁ、結果はどうだ!!」
完全にアンナベルのアストラル体がお人形さんの中へと入った。見た目的には成功だが・・・。
「『人型同期』の正常終了を確認。続いてアンナベルの状態確認を行います。」
―――同期率・・・82.8% 正常
―――損耗魔力・・・0.96% 正常
―――存在濃度・・・4.4% 正常
―――常消魔力・・・0.77 正常
システムのチェックを行います・・・。・・・。・・・。・・・check ok。
「全ての検査項目でグリーン表示を確認。実験は成功です、マスター。」
「マジか!やったぞ成功だアンナベル!!」
「・・・・・・・・。」
「んん?どうしたアンナベル?成功したの嬉しくないのか?」
「・・・・・・・・・・・・・。」
返事がない。ただのお人形さんになってしまったようだ?
「いやそんなバカな。ちゃんと魔力的な部分も含めて問題ないハズだろ!?どうして何も言わないんだ!おいっ!アンナベル!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
頑なに返事をしようとしない。眼は合ってるのに返事がないと不安になるんだが・・・。
「マスター、そういえばアンナベルを人形の身体へと移しましたが、こちらの身体では声帯を用意しておりませんでしたね。」
「・・・・・はいっ?」
「アストラル体状態のアンナベルと普通に会話が成立していたので失念しておりましたが、そういえばアンナベルは思念に近い形態で会話をしていたのでした。」
「えっ?あ、うん。そういえばそうだな。空気を振動させて声出してたわけじゃないから聞こえる人と聞こえない人がいたんだもんね。」
「はい。ですが、現在人形の身体で定着してしまっているのでもしかしたら思念での会話ができない状態になってしまっているのではないでしょうか?」
「えーっと、思念が使えないから喋ろうとしてるけど失敗してるってこと?」
コクコクと頷くアンナベル等身大フィギュア1/1スケール。
「はぁ~~~・・なんだよお前そういうことならせめて動けよ!ジェスチャーなりなんなり伝える努力をしてくれればいいのに!」
コテンっと首を傾げてからコクコクと頷くお人形アンナベル。なんかコミカルでちょっと可愛いじゃないか。そういう動きをどこで覚えてくるんだか・・・ってうちの愛妹たちか?可愛いわけだぜセニョリータ。
「あれ?でも前回やった時は『人型同期』した後もなんか喋ってたよね?」
「それは同期しきれていなかったせいで人形体からアストラル体が漏れていたのでしょう。」
「ふむふむ。じゃ、あれはハミてただけってことね。おkおk。」
なんとも紛らわしい限りである。でもどうしよう?このままじゃ表情変わらない、お話しもできない、だけどもなんか動くっていう完全ホラー仕様のお人形さんとして完成してしまう。それだけは避けなければ人前に出すことなんてできないよ?
「どうにかして今の状態でも思念を出せるようにするか、もしくはなんらかの方法で声帯を再現するかだけど・・・あ、その前に動作確認するか。アンナベル、動いてみて?」
コクンと頷いたあとにゆっくりと立ち上がるアンナベル。おおっ!立った!ちゃんと立った!アンナベルが立った!
続いて右手、左手と動かし、ゆっくりと首を左に回す。左に回す。左に・・・正面におかえりなさい。
「っておいこら!なんで首を360度回すんだよ!普通にこえーよ!人間の首は左右に90度までしか回らないの!それ以上は回しちゃダメなの!!」
コテンッと小首を傾げられる。イラッとしたストレスを感じる。
「わかんねぇみたいなツラしてんなっつの!お前いままで俺たちの誰かの首がそんなにくるくる回ってるのとか見たことあるか?てか人間以外でもそんな風に回るヤツとかみたことないだろ?」
先ほど左に傾げた首が右側にコテンッとなった。イラって気持ちは積み重なった。
「アンナベルほどのぼっちレベルを誇る個体には理解が難しいのでしょう。」
「そういう問題じゃっ・・・って俺らがどうこう言ってても仕方ないか。育ってきた環境が違うからセロリなんだよね。」
「マスター、あまりにも投げやりすぎるコメントで意味が推測しづらくなってます。」
「いいのいいの。あんまり細かく描写したら監査に引っかかるから。」
ちょっとイラオコなのと精神的な疲労を隠し切れずに適当な感じになってしまっても仕方がないと思うの。だってホントに心配したし色々頑張ったのにってさーあーもーーーーっ。
そんなヤサグレ気味な心をムリヤリ押し込みながら気持ちを整理して、アンナベルの稼働確認を続けていく。歩いてみてもらう、ハグする、後ろ歩きをしてみてもらう、ハグする、くるっと回ってハグする、ジャンプしながらハグする。るんるん。
「うん、これくらいの動作はできるんだな。ていうか自分の脚で立って歩くのだって初めての割にうまいな?」
「・・・・・。」
やはし返事はない。んむ~、どうにか出来ないだろうか?カナデさんと同じように魔法でどうこうっていうのはアンナベルにはちょっとムリっぽいし。
かと言って思念を再現するのはちょっと俺の手持ちの技能や道具じゃ不可能ときたもんだ。こいつに関しては悩みが多すぎて困りもんだなー。
「ところでマスター。いつまでアンナベルの胸部装甲に触れているのですか?」
「えっ?あーれー?まだ触ってた?いやー、硬くて胸部装甲だとキヅカナカッタナーゴメンな~?」(棒読み)
「言ってることもやってることも酷く低俗です、マスター。」
どさくさ紛れにおぱってたらかなり冷たく言われてしまった。しぶしぶ離すと夢のアンドロイド(偽)アンナベルが勢いよく再ハグしてこようとジャンピング。俺に向かって突っ込んできた。
「なんだなんだ?俺と離れるのがイヤになったの」
ゴッッ!!!
「いであっ??!」
おめめを瞑って優しい気持ちで受け入れようと待ち構えてたら頭と頭がゴッツンコ。いや待てそんな可愛いもんじゃないって!
「こらバカアンナベル!お前ハグする時は頭の位置ずらさないとぶつかるだろ!!しかもお前の頭かったいんだからな?!めっちゃいったいんだからな??!」
比喩的な意味の石頭じゃなくてリアルに石頭なヤツと正面衝突。しかも見てなかったから一切の抵抗も予備動作もなしとくれば当然ヒドく痛いわけで・・・orz。
《ソーリーママぁ!!まだbodyのmoveのし方が?difficultなのよぅ~!》
「・・・ファッ?」
なんかアンナベルのエセルー語が聞こえてきた気がしないでもない。
「えっと、空耳かなぁ?」
《ママぁ?What's wrongしたのぉ~?》
「・・・・・カナデさん、なんか幻聴が聞こえるぽい。もうダメぽ?」
「いいえ、マスター。幻聴ではなくアンナベルからの信号受信を確認しました。思念波のようです。」
「えー?だってそれさっきできないって言ってなかった?」
「・・・そうなのですが、先ほどのヘッドバッドが原因かどうかは定かではありませんが、マスターとアンナベルの間に思念用の新たなチャネルが接続されているようです。」
「なにそれヤダ怖い。」
マンガみたいな驚きの展開。小説より奇なとんでも現象を前に思考が考えることをボイコットしようとしていらっしゃる。待って?俺を置いてかないで?
「えーっと、つまりは問題解決ってことでいいのかな?いんだよね?」
「そのようです。これで人形に同期した状態でも意思の疎通が可能となりましたね、マスター。」
「う、うん?なんか頭悩ませてたのがバカらしくなる展開だけど、これでいいのかなぁ?」
ついさっきまで解決策がないか手札を思い浮かべてあーでもないこーでもないと思索していたのがムダになったようだ。降って湧いたようなご都合主義的展開に驚きを隠せない。
「ま、まぁ、俺の異世界人生でご都合主義は数少ないからいっか。もうどうにでもなぁーれ?」
抱え込みたくなるほど痛むオデコのせいか、はたまた急展開に頭がついていかないのか。とにもかくにも思考が進まずまとまらない。
こんな状態で考え込んでも仕方がないからアンナベルの胸部装甲をふわふわのぷよぷよにする方法でも考えるか。そもそもなんで人形から派生したモンスターのくせしてこいつのアストラル体は柔らかいんだっつーの。
ぶちぶちと文句を垂れながら外套のポッケから小枝を取り出す。地面をノート代わりにするのによく使ってる最近のお気にである。ちなみに初代から数えて7代目だったりするのは秘密だ。先代までの彼らは実によく働いてくれた。
ジャリン
「ん?なんか落としたな。」
《What's this?It なぁに~?》
ひょいと素早くアンナベルが拾い上げたのは先日エニクス(笑)少年と共にいたパチェちゃんから貰った支度金が入った小袋だった。あーそういえば中身いくら入ってるか確認もしてなかったな。
なんて思ってたらアンナベルはなんの遠慮もなく手早く袋を開けて中を確認し始めた。非常識にもほどがあるがそもそもコイツに常識を教える役目は自分にあったことを思い出す。教育不行き届きは俺自身の責任か。
《んー?coin & paper?》
はっ?神?思わずh踏むために落としちゃったか?いやいや紙か。なんで紙なんか入ってるん?目録つきなのん?
「ちょっとその紙くれ。」
「Yes ベル's マム。」
呼ばれ方には不服があるがいまはそれよりこの紙を確認確認ーっと・・・・ひぐっ!?
「テト!ニコ!それからアンナベル!大急ぎでお出かけの準備だ!40秒で支度しなー!!」
「えっと、もうアンナベルちゃんの身体で色々するの、終わったのー?」
「テトさん?その言い方だとふわっとしすぎててちょっと語弊が生まれそうだよ?」
「んー。あな・・・る、もう、へーき?」
ちょっと離れた位置からだったからか、ニコさんのお声がちょっと遠かったようだ。なんか変な風に聞こえてきてとてつもなく焦る。
「実験はもう終わったからすぐ帰るよ!あと、アンナベルの名前ちょっと長いからベルにしよう!いいよな?ベル?」
《うぇ~?ベルはアナr》「はいマテちょっとモチツコウカアンナベル!それ以上は言っちゃあいけないよ!?」
時間がないのに余計なことをっ!誰だ!誰の陰謀だ!!?
「ベルがイヤならベルルでどうだ!これならより愛称っぽいだろ??」
《Yes!It いい!ベル is ベルル!》
「よっしわかった!テト、ニコ、アンナベルがベルルがいいってさ!これからベルルって呼んでやって!」
「ベルルなの?わかったのー!ベルル、よろしくなの!」
《Me to ラリア!》
「え?そこ使うの?テトラリアのラリア?なんで?」
「ん。ベル、ル。よろ。」
《Me to シロ子!》
「・・・こいつのセンスが壊滅的ってことはわかったな。訳す必要ナッシングだ。」
ポカンとした可愛い愛妹たちをめっさ急かしてムダに慌てさせてマッハでお片付け&メタリカーナの街へ向けて出発進行!
ホントはまだまだやりたいことあったのに・・・と思いながら握りしめた紙切れをただただ睨む俺でした・・・と。
どうにかしてアンナベルにセクハラをしないと気が済まないソウ君はそろそろ氏ねばいいと密かに思っておりますが、なかなかしぶとそうなのでまだまだ生き延びることでしょう。非常に残念です。
※この小説はセクハラと思われるシーンが度々登場しておりますが、セクハラを推奨しているわけでは決してございません。
むしろ撲滅というか撲っとしてコロっとしたいくらいです。
次回からは薄暗い洞窟を抜け出し、青空の元で元気よく健康的な冒険へと移ります。
他人の眼もあるので彼のセクハラ行為も少しは減るでしょう。というか減ってくださいお願いします。




