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最終章:事件解決

ピンポーン…。

事務所のインターフォンがなされる音が聞こえる。

その音に目を覚まして、近場の時計に目を向ける…事務所を開ける時間よりも大分前だな…。

まぁ、個人業に、そういう時間感覚は必要ないかな?

ついで、ドアを開ける音が聞こえてくる…鍵を閉め忘れたのかな?

「『明日来い』って言っていた割りに、まだ寝ているなんて…自由な仕事なんだね…やっぱり」

そう言って、事務所に入ってきたのは、昨日まで仕事を請けていた依頼者の女性だった。



…『翔』頼むからそれを身近な人を使ってやるのはやめてくれないか?

「あら?…もう、僕だってばれちゃった?…色々ということを考えていたんだけどなぁ…」

昨日の、アレを見聞きしていないからな…お前は…はぁ。

「『昨日の?』…あんたが、事務所に帰った時にでも何かあったのかい?」

…何かって言うもんじゃないな…マスターの言っていたこと覚えているか?

「えっと…『険悪ってわけじゃないけど沈黙している』ってやつ?」

それ…それなんだけどさ…マスター状況言わなかっただろ?…事務所に付いたら驚かされた。

「…何があったんだい?」


翔を見送った後、俺は、事務所へと向かった。

結局、二人を引き合わせた時点で、依頼者からの依頼はこなしたことになるんだよな…。

まぁ、依頼対象の『山上さん』にはちょっと悪いことをした形になってしまったけど。


「あなた…あんな短いメールだけで、姿を消すなんて何を考えているのよ!?」

…事務所のドアに近づいたときに聞こえてきたのは、依頼人である、『智子さん』の声だった。

あのマスターの話だと、確か、沈黙していたって言っていたはずだけど…?

事務所のドアを開け、中に入るとそこに繰り広げられていたのは…荒らされた事務所…強盗でも入ったのか!?

それも大変なことだったのだが、智子さんが仁王立ちで、手には何も活けられていない事務所の花瓶。

そして、その足元で、土下座の形で頭を下げている山上さん…とりあえず、強盗犯は、すぐに判明したのは良かったが…。

その状況を呆然と眺めることになってしまっていた俺に気づいた智子さんは、大慌てで花瓶を事務所の机において頭を下げる。


「す、すみません!」

その言葉でわれに返った俺は、とりあえず、事務所内の惨状を改めて確認してから、再び二人の様子を見てから、

「…とりあえず、何があったのかを片付けを手伝ってもらいながらでも、聞かせて頂いて良いですか?」

元々、片付いていたわけでもないから、徹底的に散らかった状況に陥って、やっと片付ける気力が出たことは感謝しておこう…そう考えよう…。


この状況に至った経緯をかいつまんで行くと、事務所に近づいた時に聞こえてきた声に集約されるらしい。

『前オーナー』効果で、やや錯乱気味だった山上さんが、まずは部屋を荒らした…実行犯は二人だったということか…原因作ったのは俺か?

そして、智子さんが事務所に着いた時点では、まだ落ち着いていなかった為、一発ひっぱたいたらしい。

…良く見ると、山上さんの頬が赤くなっている…叩かれたのか…。

落ち着いた後、山上さんに失踪の真相を聞きだしにかかったものの、いまいち歯切れが悪い答えしか出てこないのに苛立った智子さんは、

近場にあった書類を投げつけながら、事件から今までの不満をぶつけたらしい…うちのものでやるのはやめてほしかったね…。

で、その言葉の最後に出たのが、事務所の外で聞いた声だったと…花瓶を投げつける前にたどり着いてよかった…。

流石に、殺人事件がおきたような事務所だけは長く使いたくないしね。


「…話はわかりました、事務所についてはきれいに片付きましたし、幸い、必要なものに被害はありませんでしたし…」

「本当に、すみません!…あなたは…しばらく、そのままでいいわよね?」

そういいながら、山上さんに視線を向ける。

「…はい…すみません」

…あれ?ビルに行った時と、ちょっと態度が違う…?

「実は…この人が、行方をくらますこと自体は、珍しいことではないんです…ただ、今回だけは、ちょっと別の事情がありまして…」

…別の事情…?

「その…別の事情って言うもの…差し支えがなければ教えていただけますか?」



…で、お前は、その事情って言うのも知っていたというわけだな?

「え?僕??」

あぁ…依頼人の女性が、実は妊娠していて、それを伝えようと思った矢先の行方不明事件。

いつもなら、気にも留めないような、婚約者の行方不明でも今回は特別だった…と。

「う〜ん…確かに、行方不明になったって言う事件について持ってきたのは僕だけど、妊娠については昨日知ったんだよ?」

昨日…?でも、彼女は、自分から妊娠していることを告げたわけではないって…。

「まぁ…一言で言えば…僕だからわかったって言うことかな?…まぁ、なんとなくわかるって言うレベルでだけど」

なるほどな…なんか、そういわれると、そうだとしか言いようがないもんな…おまえ自身が。

「人聞きの悪い…で、結局、依頼者の人はなんて言ったの?」

まぁ、こういうときは女性の方が強いんだろうな。

子供が出来たこと自体は不安がなかったわけでもないらしいんだけど、『新居』が用意されはじめていることを聞いて喜んでいたくらいだ。

…山上さんは、結婚まで黙っておきたかったみたいだけど…まぁ、どっちにしても…、

「そんな長い期間はだませないだろうね」

そういうことだな。

「…で、依頼料の方は取れたのかい?」

状況も状況だったからな…正規料金にちょっと割り増しくらいもらえたよ…ほら。

「領収書…ね…おぉ、結構な稼ぎになっているだね〜…人件費あんまりかかっていない割りに」

…おまえなぁ…マスターのところの『伝言』って、案外高いんだぞ…お前は知らないだろうけど…。

「まぁ、僕にとっては、お金自体は何の意味も持っていないからね」

そうか…まぁ、それもそうだな。

「何にせよ…コレで、事件は解決って言うことでいいのかな?」

まぁな…山上さんが、『ビルの屋内改装してマンションにしようとしている』って言うのが伝わったわけだし…それも本人の口から。

「…色々と仕込があったけどね」

その辺も込みで、お前のおかげだな?

「ほめても何にもでないよ?」

それもそうだな…じゃあ、どこか食事にでも行きますか、お嬢さん?

「…あんたが言うと、気持ち悪いよ?」

気にするな…俺も、そう思っている。

「…自覚症状はあったんだ…まぁ、食事かぁ…そういえば、ちょうど、また面白い話があるんだけど…?」

その面白い話っていうのは…。

「…もちろん、僕がいちばん面白くなる話さ!」

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