エピローグ
「真崎様、大和様、馬原様の帰還です!」
軍服に身を包んだ白人の兵隊が日本語で歓迎する。
大和、馬原は今作戦の失敗を受け止めきれず、苦虫を潰したような顔をして入る。
反対に希華は、黒いコートをなびかせながら、奥に進んでいく。
ここは、ロシアの魔法科対策本部。多くの魔法事件がロシアでも発生したことがきっかけで作られた政府の機関だ。基本的に男性は大和くらいしかいない。ほとんどが女性だ。
希華は奥にいる女と対峙した。
「ダメだったようね希華」
親しげに話す彼女は、ロシアで実戦を積み、多くの魔法事件を解決し、最近では一国をも滅ぼしたと噂されている魔法少女だ。見た目的には、少女というほど若くもない。
この組織の長をしている彼女に、希華は頭を深く下げた。
「すまない。私では息子を相手にするのは無理があった」
「仕方がないさ。それはあたしもわかってたから。息子や娘を相手にしたら、さすがに難しいもの」
希華を咎めない彼女。それは当然旧知の中でもあるからだが、彼女にも子供がいるからか、希華の気持ちは理解したらしい。
次に大和、馬原が頭を下げた。
「すいません。俺がついていながら母さんを守ることができなかった」
「私も、すいませんでした」
「いいさ、君達は重要なデータを持ってきてくれた。これで、アレの完成まで秒読みとなった。じきに、我らの夢が叶うのだ……」
彼女は遠くを見つめる。
「我らの悲願。それはなんだ?」
彼女の問いに、大和が答えた。
「俺達が聖遺物を生み出し、その力で世界各国の魔法文化のレベルの低さを再認識させ、魔法学園島を乗っ取り、新たな魔法文化を気付くことです」
「よく言ってくれた。さすが希華の息子だ」
組織の名は、旧ソ連魔法軍。軍事力ではアメリカが一位になってしまったが、ロシアもまだ諦めていない。
魔法で世界を支配しようとしていた。
そして、その第一拠点として、彼女らは魔法学園島を乗っ取ろうとしているのだ。
◆
「お兄様! 少しじっとしていただけませんか?」
「……桜子。じっとしていられるのならしたい。だけど、それはないんじゃないかな」
色々な疑惑が晴れ、海斗は男性にして魔法学園島の生徒となった。
のだが、その為にはまず聖剣エクスカリバーをどうにかしなければならなかったのだ。これを戻すのには、どうやら局部に突き刺すしかないとかなんたら。
色々自分で試すこともできなかったので、桜子に頼んだのだ。
「さて、お兄様。ずぶりと行きますね!」
「嫌だ! 普通に嫌だぞ!」
「まぁ、安心してください。雪那もお姉様も今は不在ですから」
「僕は二人がいるときにお願いした筈なんだけど」
「いいんです。それより覚悟を決めてください。お兄様」
桜子の部屋で横たわる海斗に馬乗りになる桜子。両手には聖剣エクスカリバーが握られている。当然戻すんだろうけど、どう考えても突き刺されることしか脳にはなかった。
頬から汗が垂れる。海斗は思わず目を閉じた。
「……そんなに私が怖いですか」
か細い声で問われる。
「私じゃ不安ですか」
「いや、そういうわけじゃ……」
「でしたら、おとなしくしててください」
「……わかった」
海斗はようやく覚悟を決めた。だが、桜子から気になる一言を投げられる。
「あ、言い忘れてましたけど、先生の話だと聖遺物を体内に入れると、尋常じゃない性欲がこみ上げるそうなので注意してください」
「それってどういう――――――――うぐっ!?」
「もう刺しましたよー」
「それって、刺す前に刺しますよーって言うんじゃないの!?」
「あ、私としたことが! 刺されますの間違いでしたかね?」
「もういい!」
ズボンをちゃんと履いてるけど、どういう原理なのか、聖剣エクスカリバーはまっすぐ収まって行く。
剣が光に変わり、海斗の局部に入る。
感覚は、熱い何かがこみ上げてくるようでもあった。
頭がぼーっとして、熱くなる何かが何なのかを海斗はしばらく考えている。
「ふぅ」
桜子は終わったと合図をするかのように一息吐いた。
桜子のベットの上で、海斗は植物人間のように固まっている。
「お兄様? ――――きゃっ」
だが、海斗は突然動きだし、今度は桜子をベットに押し倒した。跳ね返るマットレスに桜子が驚く。
海斗は息が荒かった。
「お兄様? もしかして、成功しました?」
「ん、もうなんでもいいけど、とりあえず――――――――」
海斗はまともな思考ができなくなっている。
「桜子を食べたい」
「え、それは新手の告白ですか」
「……わからない。桜子のことが好きなのかな」
すると、桜子はゆっくりと海斗の頬に手を添えて微笑んだ。
「私はいつでもお兄様のこと、好きですよ。だから、今、もし性欲を抑えきれなくて、食べたいと言うのなら、喜んで食べられます」
「桜子……」
いつもに増して魅力的な桜子を前に、海斗はもう何も考えず、瞳を閉じて唇を近づけて行く。
桜子も瞳を閉じて、海斗とのキスを待った。
高鳴る心臓。
海斗は先日、キスされたが、それはノーカウントだろう。ということは、これが本当のファーストキスなのかな。と考えている。
それ以前に股間も疼くしで、海斗は桜子を突き破ることしか考えていなかった。
「お兄様……」
「桜子……」
互いの唇が重なろうとした時。
バンッと扉を強く開いた音がする。
すぐに桜子と海斗は音のする方へと視線を向けると、そこには紅葉、雪那を始め、杉沢に緑川、安良里までいた。
海斗の中で弾けそうになっていた何かが、一瞬で冷えた瞬間だ。
「熱いね、お二人さん」
安良里が笑う。
「怪我人には、少し目の毒なんですけど」
緑川が不機嫌に睨む。
「正面からかかってきなさいとか言っておいて、それはズルいです桜子さん! です!」
杉沢が涙目で頬を膨らませる。
「桜子お姉様。抜け駆けは許さないと言いましたわよね?」
雪那が部屋全体の気温を下げた。
「あとで説教だ、桜子」
紅葉がニヤリと笑うが、全然笑っていないのがわかる。
その後、桜子は皆に土下座するハメになった。
魔法学園島第三学区警備魔法科、始業式。夏休みが明け、多くの生徒が揃う全校集会で、海斗はマイクの前で自己紹介を済ませた。
「はじめまして。小石川 海斗です。この度、特例で第三学区に所属することになりました。よろしくお願いします」
多くの歓声に包まれる中、海斗はこれから始まろうとしいる普通ではない学園生活に胸を弾ませる。
教師陣が話進ませ、各教室に生徒達が戻っていく。
「第三学区所属なんですね、海斗さん」
「ああ、よろしく杉沢さん」
「こ、これからよろしくですっ!」
杉沢と他愛ない会話をしながら、教室に戻ろうとする海斗。
その途中、突然背後から誰かに抱きつかれた。
「え?」
あまりにも突然で驚いたので、素っ頓狂な声をあげた海斗。振り返ると、そこには綺麗な紫色の髪をした女の子がいた。
とても整っていて、見るもの全てを魅了する女の子だ。
「久しぶり! 海ちゃん!」
「え、もしかして、美花っ!?」
そこには海斗の幼馴染がいた。
杉沢はむーっとした表情をしながら二人を睨みつける。
「これからよろしくね!」
「え、何をよろしくなの?」
「ふふ、海ちゃん。今日から私と寮生活だよ」
「はぁ!?」
海斗と杉沢は目を見開く。
美花は薄く笑う。
海斗の魔法学園人生は幕を開けた。
魔法少女が僕の聖剣エクスカリバーを求めるのは間違ってる。




