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白の魔法騎士。4

 夜闇を照らす街頭が揺れる。

 第八学区無人の校舎を駆けながら桜子は隣にいる安良里に目線を配った。


「敵はあと何人いますか?」

「あと、六人くらいだ」

「わかりました」


 桜子は瞳を閉じて耳を澄ます。そこから、安良里、杉沢以外の足音を探知する。安良里の情報は間違っていない。

 安良里はレベル五の教師だ。彼女の場合、戦闘センスは悪くないし、身体能力も高い方である。しかし、レベル五という魔法少女として平均的なのには理由があった。

 それは彼女の使える魔法が、あまりに特殊過ぎて戦闘には使えないのだ。安良里は属性を持たない。つまり、無属性なのだ。だが、彼女は感覚を強く働かせる魔法を使えるのだ。その能力は敵の位置や呼吸などを耳や嗅覚といった感覚を強める魔法で探知することができる。

 安良里は次々と指示を下し、桜子と共に走った。


「いましたね」

「私を疑っていたのか?」

「まぁ、敵は教師でしたし疑わずにはいられませんよね」

「好きに言ってろ」


 桜子は正面に見えた男達に、片手を掲げる。


風塵(エアリアル)乱破(ブレイズ)


 桜子の掌から風が、バケツに入った水を溢すかのように吹き荒れた。

 男達はすぐに迎撃態勢を取ろうとしたが、荒れ狂う風に吹き飛ばされ頭部を壁に激突させる。

 六人もの迷彩服を着た男達は、強く頭を打ったことにより気絶した。

 桜子達は走るのを止め、窓の外に目線を移す。


「安良里先生、これで全員ですか」

「ああ、これで桜子の頼まれた区間は全て終えたと思うが」

「わかりました」


 桜子は窓を開き、飛び降りようとした。


「桜子さん! どこに行くんですか!」


 すると、杉沢が何か言いたそうな顔で桜子を見つめる。

 どこに行くのか、そんなの決まっていて兄の海斗の元へと駆けつけようとしていたのだ。

 桜子は一分一秒が惜しいと思っていたが、言いたかった事を杉沢に問うことにした。


「……前々から思っていましたが、あなた、お兄様のことが好きなんですか?」

「ギクッ」

「私がどこに行こうが勝手だと思いますけど。それにお兄様の所に行くと知って聞いてますよね?」

「ギクッ」

「言っておきますが、連れてなんか行きませんよ。あなたが来たところで足手まといなんですから」

「…………しゅん」


 杉沢は肩を跳ね上げたり、落ち込んだりと忙しい様子だ。

 そんな杉沢を見て桜子は溜息を吐いた。


「別にいじめたいわけじゃありませんが、お兄様は私のお兄様です。ですので、あなたには一切関係ないですよね」


 すると、杉沢は頬を膨らませて、今度は怒り始める。


「わ、私にだって関係ありますです! 海斗さんは……私を守ってくれたです。だから、今度は私がが守ってあげたいんです。す、すすす、好きとかは全く関係ないですっ!」

「そうですか。ま、否定するのなら別にいいですが。ただ、ここから先、精霊と戦闘になっても杉沢さんの命までは保証できません。それを覚悟の上でなら来てもいいですよ」

「もちろんです」


 杉沢は強く、真っ直ぐ桜子を見つめた。その顔、表情が桜子や雪那や紅葉が知っている人物に似ていて、とても不快な気持ちになる。


 ――――――全く、どうしてこう私達の前には壁みたいな人間が現れるんでしょうか。


 内心で溜息を吐きながらも、桜子は杉沢の意思を尊重することにした。


「……わかりました。ただ、本当に足を引っ張らないでくださいね。杉沢さん」

「わかりましたですっ! 海斗さんは私が守りますっ!」


 裏表のない笑顔を見せられ、桜子は苛立つ。


「私、じゃなくて、私達です。お兄様を守るのは、私達です。いいですか? いいところを見せようとしないでくださいね」

「はいです!」

「はぁ……」


 桜子の溜息は途切れなかった。


 安良里も来るかと尋ねたが、教師としてこの顛末を片付ける為に動くと言って、各学部を周るようだ。

 桜子の魔法で空を移動する杉沢。桜子は風を自由自在に操れることで、レベル認定をしてもらった九だ。もちろん、その他でも魔法少女としては天才的とまで言われている。だが、紅葉には届いていない。

 空を鳥のように飛ぶ二人の視線の先には魔法科大学。そこに海斗は向ったのだ。


「あの……桜子さん」


 無言が辛かったのか、杉沢は恐る恐る桜子に問いかけた。

 桜子は目線を変えずに口を開く。


「なんですか」

「……もし、もしですよ。海斗さんが桜子さん以外の人と恋人になったら、どうしますかですか?」

「…………」


 不意の質問に動揺せず、表情も変えずに答えた。


「そうなった場合は、私がその人を殺します。ですが、万が一私よりも強かった場合は認めるしかありません」

「……認められるのには、桜子さんよりも……」


 俯く杉沢を見て桜子は溜息を吐く。先ほど海斗の事を好きではないと言っておきながら、やはり好きなのだ。そういう嘘が桜子は一番嫌いだし、一番イライラする。

 ウジウジと悩む杉沢を視界に入れると、海斗の一大事ではあるが、決着をつけるべきだと判断した。


「杉沢さん、あなたに本当に聞きます。お兄様のことがお好きなのでしょ?」

「…………」


 杉沢は黙り込み、桜子を見つめる。

 移動するのを一時止め、桜子は杉沢の答えを待った。


「……私は、本当の両親がいないのです」

「はい?」


 突然のカミングアウトに桜子の怒りは増す。

 しかし、杉沢は続けた。


「……私は桜子さんや紅葉さんには劣りますが、魔法少女としてそれなりに有望視されていますです。そんな私は孤児で、身寄りのない子供達ばかりが集まった孤児院で生活していきましたです。しかし、運が良い事に私は今の夫婦に引き取られ、幸せに暮らしていましたです」

「…………」


 何が言いたいのか。桜子はそう思いながらも黙って聞くことにした。


「私がいた孤児院は早くて私が大人になる頃には借金の返済が困難な為に潰れてしまうです。そうならない為にも、私は魔法少女を目指し、少しでも恩返しができればと思ってここにいるです」

「それがお兄様とどう関係あるんですか?」

「だから、私は色恋よりも自分自身の目標を果たしたいのです。魔法少女として、多くの人を救って、お給料を寄付する、それが私の一番大切なことなのです。だから、恋愛は……」


 煮え切らない杉沢に桜子は、言葉をかけるのをやめる。これ以上つまらない話をして、時間を作るのは嫌だし何よりも覚悟がない者ほど相手にしていてつまらないものはない。

 桜子は眼光を鋭くしながら言った。


「杉沢さん。中途半端な覚悟でお兄様には近づかないでください」

「え……」

「あなたの目標は尊敬に値します。ですが、自分自身の人生です。あなたは大丈夫と思っているかもしれませんが、もしあなたに何かあったときは誰が助けるのですか?」

「それは……」

「考えてください。人生のパートナーを見つけることは目標を実行することの次に大切なことです。もし、そのパートナーを一生見つけずに頑張るおつもりでしたら、これ以上お兄様には纏わり付かないでください。私以外にも多くの人がお兄様を、お兄様の夢を支えたいと願っているのです。ですから、無闇に近づかないでください。これは注意勧告ではなく警告です」


 桜子はそれっきり言葉を話さずに前へと視線を向ける。

 内心で、桜子はまたいらぬ敵を作ってしまったかのように思えたのだが、正直に言うと覚悟がないのに海斗に近づくのは許し難かった。

 それだけ桜子や紅葉、雪那は海斗の事を大切に思っている。海斗の夢も、希望も、将来も、その隣を必ず自分が歩いているようにと考えるのに必死なのだ。その覚悟がない者に海斗を持って行かれたのでは、死んでも死にきれない。

 すると、杉沢は決意の眼差しを向けた。


「……わかりました。正直に言いますです。私は、小石川 海斗さんが好きです」

「……いい顔になりましたね」


 桜子が微笑むと、杉沢も笑顔を溢す。

 敵を増やすばかりだが、海斗は必ず自分のものになると桜子は思っている。中途半端な気持ちでは、海斗に近づいてほしくない。だが、しっかりと覚悟を決めたのなら、それこそ邪魔のしようがあるのだ。

 二人は改めて魔法科大学に羽ばたこうとした。


「え!?」


 その瞬間、金色の光が屋上からチラつく。それは金の魔力以外ありえない。

 しかし、姉の金の魔力はあそこまで凄まじくはないし、大量に生産することはできないのだ。

 であれば、第三者か? 精霊魔法を発動したのではない、もしや――――――――。

 桜子の背筋が凍る。相手はもしかしたら、精霊魔法などと優しいものではなく、聖剣を扱う者かもしれなかった。


「杉沢さん!」

「あれって……」

「急ぎましょう、あれは金の魔力――――聖剣の一つ、レーヴァテインに眠る魔力です」


 杉沢は顔を強張らせる。


「さ、桜子さん……」

「ですから急ぎましょう!」

「あ、あの……」


 恐る恐る人差し指を桜子に向けた杉沢。その表情は凍りついている。

 桜子は魔法科大学に何かしらの異常が発生したなのかと思い、背後に視線を向けた。


「やっと追いついたわ」


 桜子もその人物を見て、表情が凍りつく。

 そこにいたのは、馬原 秀歌だった。

 二人、いや安良里や多くの人間は屋上で戦っているのは海斗と馬原だとばかり思っていたのだ。だが、馬原は今目の前にいる。


「うふふふ。わけがわからない。そういう顔をしてるわよ」

「……杉沢さん、あなた高速移動で魔法科大学まで急いでください」

「え」


 桜子は静かに杉沢に指示をした。


「……私も全力を出しますが、お兄様の身に何かあったら……」

「わかりましたですっ!」


 杉沢は桜子が口にしようとした言葉を先に理解したのか、首を縦に振って地面に着地してすぐに魔法科大学に走り始める。

 目の前にいる馬原は杉沢を止めようとはせずに笑っているばかりだ。


「うふふ。レベル八一人行ったって敵じゃないわ」

「もしかして、杉沢さんをバカにしているのですか?」

「どうかしら」


 馬原は片手を掲げた。馬原の細い腕を魔法陣が囲む。


「私はあなた、小石川桜子ただ一人殺せれば文句はないわ」

「恨みを買うようなことをした覚えはありませんが」


 ニッコリと微笑んだ馬原は言った。


「やっぱりそうよね? 入学式のときも、ランク戦のときも、あなたはいつも私を踏み台にして行ったものね」

「踏み台? 何人踏んだかわかりませんが」


 馬原が纏う空気が凍りつく。笑顔なのに怒りを抑えきれなくなったかのようだった。

 しかし、桜子は気にせず魔力を解放する。


「お前が……お前がそういう態度を取るから、今回のような事件になったことを知らないのかッ! 桜子ぉぉぉぉっ!」


 馬原の腕から放たれる魔力。それは膨大な量だ。桜子は彼女が得意としている精霊魔法を扱うことを予想していた。

 精霊を召喚されてしまえば、桜子とて時間はかかる。ここは早期解決が妥当だと考え、内ポケットから扇子を取り出した。


「私はあなたのような人間になんと言われようと、私は私の信念を貫きます」

「だからそれが問題だと何度も言ってるだろうがッ!」


 豹変した馬原。魔力が漲り精霊魔法をいよいよ発動させるようだ。


「ここがお前の墓場だ! 桜子ぉぉぉぉっ!土魔神(ゴーレム)ゥゥゥゥゥゥッ!」


 馬原が浮いているのは、聖遺物の効果だ。ランクCの鷹の腕輪は、使う者に空を移動する権利を得る。

 そして、馬原の魔法詠唱により地面から這い上がるように聳え立つ土のレンガが幾つも重なって、魔法科大学と同じような大きさを持つゴーレムが誕生日した。

 第一学区の精霊魔法の実技授業では目にすることのなかった巨大なゴーレム。それこそ、馬原が入念に魔法を練ってこのサイズにまで設定したのだろう。


『ゴゴゴゴゴゴ』


 桜子を虫けらのように見つめるゴーレム。

 通常授業では、精霊魔法がどれだけ強いかを確かめるべく、わざと勝てないくらいの強さの精霊を召喚する。

 桜子一人ですら、時間がかかったのだ。規格外のサイズを持つ今回のゴーレムを倒すのは、時間的に足りない。普段ならば。

 桜子は小さな笑みを溢し、馬原を見つめた。


「……これで私を倒そうと言うのですか?」

「強がりですかね? うふふふ授業じゃ時間はかかったようですけど、このサイズなら――――――――」


 桜子は扇子を広げ、口元を隠して言う。


「笑止」

「強がりはよしなッ! 潰せ! ゴーレムゥゥゥゥゥゥッ!」

『ゴゴゴゴゴゴ』


 ゴーレムの一軒家かと思うほどの太く重い拳が持ち上がる。

 砂埃が舞い、桜子の視界を埋め尽くす。

 ゴーレムは奇声を上げ、重い拳を桜子に放つ。


「喰らいやがれ! 桜子ぉぉぉぉっ! 土魔神(ゴーレム)()剛拳(ドストレート)ッ!」


 ゴーレムが重く、太い拳を桜子のいる砂埃に向かって走らせた。

 桜子にヒットしたのか、まるで巨大なハンマーで木々を薙ぎ倒すかのような轟音が響く。


「あーはっはっはっはっ! これで私がレベル九に――――――――ッ!?」


 高笑いしようとした馬原。桜子はゴーレムの拳によって肉塊となったのだと思っていた。

 だが、馬原の頬に切り傷が入る。タレ流れる鮮血に、表情を変えた。


「……誰がレベル九ですって?」


 砂埃から現れた桜子。扇子を馬原に向けて笑っていた。その周囲には、高濃度の風が身を守るべく徘徊している。傷はない。

 馬原が気がついた時には、ゴーレムは音を上げて地面に返っていく。まるで土に還る生物のようだ。


「バカなッ! あれだけのゴーレムをッ!」

「バカはあなたですよ、馬原先生。私が自分のことなんかで本気を出すわけがないでしょう? 私が本気を出すのは、お兄様が関わった場合のみ。よって、今の私は怒っていて尚且つ本気です」

「糞ったれがぁぁぁぁぁぁっ! この前まで中坊だったガキのくせにぃィィィィィッ!」


 馬原は発狂しながら、桜子に突撃してきた。腰から黒光りした拳銃を取り出す。

 リロードしたのか、チャカッという音が響き桜子に向けた。

 本物の銃だ。


「死ねぇぇぇぇぇぇッ!」


 発砲音が響く。

 桜子は再び、口元を扇子で隠す。

 その瞬間、放たれた弾丸は桜子の目前で止まり、ポロポロと大地に落ち行く。


「ば、バカなッ!?」

「旧式の軍隊の道具を使うなんて、そうとう頭が弱いんですね。それとも世代が古いからですかね。ふふ」


 バカにする桜子。旧式のオートマチック拳銃では、現代の魔法少女には勝てないと知らないのか、それとも混乱しているのか。後者だと桜子はかんがえていたが、既に勝敗は決していた。

 桜子は扇子を閉じ、その先端を馬原に向ける。


「私の可愛い子ちゃん達の攻撃を浴びるといいわ」

「くっ! どこまでもバカにして! 桜子! 許さない許さない許さない許さない許さない許さないィィィィィィィィッ!」


 何度も発砲する馬原。その全てを風が受け止める。

 桜子は叫んだ。


「終わりですよ! さぁ、風達よ踊りなさいッ! 鎌鼬(かまいたち)ッ!」


 瞬間、強風が馬原を襲う。

 強風に吹き飛ばされそうになった馬原。

 スパスパという衣服を切り裂く音が響く。

 気がつけば、馬原は一糸纏わぬ姿に変わり果てていた。


「なっ!?」


 突然丸裸になった馬原は身を隠す。


「悪戯っ子ですね、皆さんは」

「誰に向かって話しかけ―――――――」


 その瞬間、馬原の身を縄で拘束されたかのように固まる。

 晒された身を隠すことすらできなくなった馬原は、目を見開き青白く染まった。


「こ、こんな姿で――――」

「いいじゃないですか。全校生徒に丸裸で謝罪。お兄様には目の毒ですが、あなたのような罪人にはお似合いですよ」

「どこまでもふざけやがってぇぇぇぇぇぇぇっ!」


 スパッという肌を切る音が響いた。

 気がつけば、馬原の首元は切られている。


「私の奥義、鎌鼬は扇子で指示することもできますが、基本的には命を与えられた子供です。あまり風の母である私に歯向かうと、命を落とすことになりますよ」

「くっ…………そぉぉぉぉ!」


 さらに切り傷が入る。

 桜子は溜息を吐き、扇子を広げて馬原に微笑む。


「さぁ、子供達よ。頸動脈を切ってあげなさい」

「なっ!?」


 桜子の指示が下り、風が馬原に吹かれる。

 全身を小さい切り傷が生まれた。このままだと死ぬ。そう思ったのだろう、馬原は青ざめた顔で涙を溢し始めた。


「ご、ごめんなさいっ! ゆ、許してくださいっ……………。命だけは……」

「今度は命乞いですか。醜いですね」


 桜子は微笑み、一度俯く。

 そして、顔を上げ眼光を鋭くさせて怪しく笑った。


「……お兄様を虐めた罪。その身で償いなさい、馬原 秀歌ァァァッ!」


 台風のような嵐が吹く。

 次々と切り傷が入る。

 鮮血が夜空に舞い、馬原は叫ぶ。


「イヤァァァァァァァァァァァァァッ!」


 やがて、風が吹き終える。

 その身を血だらけに染めた馬原は、意識を失い大地に落ちていく。

 桜子は、ふぅと安堵の溜息を吐いた。


「いけない、私としたことが本気で殺しそうになってしまいましたね。これでは、レベル九として失格ですね」


 桜子は風に指示し、馬原の身を受け止める。そのまま、鎌鼬に身を拘束するよう命令し、魔法科大学に目線を配った。




 ◆




「さて、役者は揃ったか。だが、奴らの目的は既に消えた。あとはどんな表情を見せてくれるのかが楽しみだな」


 黒コートを羽織った仮面の女は、コートを翻し、魔法科大学から月を覗く。

 次に向かうのは第一学区だ。

 くるりと背後に振り向くと、そこには心臓の動きを止めた青年が横たわっていた。


「小石川 海斗。聖剣エクスカリバーの主としてもう少し楽しめるとは思ったが……筋違いだったな」


 女は第一学区に向かい始める。

 魔法科大学の屋上の床には、血液が水溜りの如く広がっていた。

 そこには青髪の青年――――海斗が息を止め、鼓動を静め、瞳を閉じている。

 海斗は負けて死んでいた。


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