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慰霊師  作者: 皇南輝
第3章 心霊配信すると事故るトンネル
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3-6 幽霊の声が聞こえるアプリ

 深夜の女井戸トンネル入口。

 心霊配信者レイレイが懐中電灯で照らすトンネル周辺は無造作に生い茂る草木が微かに揺れ、トンネルの奥は真っ暗闇で先が見通せない。

 結羽は、レイレイが映し出しているトンネル内をスマホ画面を通して見つめていた。


(誰もいないみたい)


 結羽は、トンネル入口には霊がいない、と分かると安堵した。

 タケハルが女井戸トンネルでの心霊配信中に現れた若い女性の霊。彼女は白いブラウスに水色のロングスカートを履いていた。その女性の霊は、トンネルを訪れたタケハルに付き添うように移動していた。


『トンネルの中は懐中電灯で照らしても先がよくわからないねー』


 レイレイは、女性であるのにもかかわらず独りで心霊スポットを訪れ動画配信を行う。女井戸トンネルで心霊配信をするレイレイは、霊に対する恐怖心が薄いのか、陽気な口調で実況していた。


『では、ここで、GHOSTVOICEを使ってみましょう!』


 レイレイは撮影に使用しているスマホとは別のスマホを手にすると、アプリを起動させた。それは『GHOSTVOICE』という“霊の言葉”を検知するアプリで、霊が発する磁気エネルギーをアプリに内蔵された単語や文章に変換して言葉を発する。心霊マニアには知られたアプリではあるが、科学的根拠が不明なためその真偽も定かではない。


 レイレイは、スマホを取り付けたジンバルを左手に、GHOSTVOICEを起動させたスマホを右手に持ちながら撮影を続けている。そのときだった。


『奇妙な』


 突然、GHOSTVOICEを起動させているスマホから音声が発せられた。すぐにレイレイが反応する。


『奇妙な? これだけじゃ意味がわからないね。私が奇妙だってことかなー』


 レイレイはそう言うと陽気に笑った。


『幽霊が喋った!』

『近くに霊がいる』

『GHOSTVOICEは、意味不明なこと言うよね』


 GHOSTVOICEからの音声に反応した視聴者たちが騒ぎ始め、ライブチャットの流れが速くなった。

 それを見た結羽は、やれやれ、と思いため息をついた。


(GHOSTVOICE、私も知ってるけど、あれってデタラメな言葉を発することがよくあるんだよね)


 心霊配信中にGHOSTVOICEが音声を発すると、すぐに「霊がいる!」と断定して騒ぎ始める視聴者に対して、結羽は普段から呆れていた。


 レイレイが視聴者たちのコメントに対応している間、結羽はトンネル入口付近の映像を注視していた。


「いないね······」


 トンネル入口付近に、霊はいない。


『墓地』


 GHOSTVOICEが音声を発した。すぐにレイレイも反応する。


『出た! GHOSTVOICEって、よくこの言葉を発するんだよねー』


 レイレイの言葉に、結羽は、うんうん、と頷いた。


『そういえば、タケハルさんがここで心霊配信をしてるとき、視聴者のひとりに霊が見える方がいたんだよね。その方、私の配信を見てるのかなー?』


 レイレイの言葉に、結羽は両肩をピクリと動かした。


「あ、それ、私だ」


 タケハルによる女井戸トンネルでの心霊配信中、「霊がいる」とコメントで伝えたのは結羽だった。


 結羽は、名乗り出ようか迷った。


 もし名乗り出れば『慰霊師·ゆうは』のアカウントが視聴者たちに注目される。しかし、結羽は“まだ”名乗り出ないことにした。


『確か、今日の心霊配信を見てる視聴者さんの中に、霊が見える女性がいましたよね? まだいるかな?』


 結羽は、レイレイの言葉にどう反応すべきか決断を迫られた。


(さっきレイレイさんに挨拶コメントを送ったとき、私のアカウント名を知られたんだっけ。だったら、スルーするわけにはいかないな)


『はい。まだ見てます』


 結羽は黙っていることに気が引けたため、素早くコメントを入力して送信した。


『あ、そうそう!慰霊師ゆうはさんだ! もしかしてタケハルさんの心霊配信を見てましたか? 』


 スマホ画面から聞こえてくるレイレイからの問いかけを耳にした結羽は、すぐにコメントで応じた。


『私も見てました』


『じゃあ、ちょうど私がいるここで、タケハルさんに霊がいると伝えた視聴者は、ゆうはさんだったんですか?』


 レイレイからのあからさまな質問に観念した結羽は、名乗り出るしかなかった。


『そうです。あのとき、タケハルさんの近くに若い女性の霊がいたんです』


『ああ、そうなんだ! あのときの方が私の心霊配信も見てくれていて嬉しい!』


 レイレイは喜んだが、それはタケハルの心霊配信が休止していたから、という理由をコメントで送るわけにはいかない。


『さっそくですけど、ゆうはさん。今、近くに霊はいますか?』


 レイレイに尋ねられた結羽は、トンネル入口付近を映し出しているスマホ画面を注視した。

 トンネル入口付近には誰もいない。ただ、トンネルの奥からは気配を感じた。


『近くにはいないです』


 結羽はコメントを送信してレイレイに伝えた。


『女性の霊は、私が女だから迎えに来てくれないのかなー』


 レイレイが結羽のコメントに反応して笑い声をあげた。

 そのときだった。

 結羽は、トンネルの奥で何かが動いたことに気がついた。






(つづく)

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