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045 北の都と魔法少女。

馬車の着地なんて当然考えてなかったので、悲惨な状態になっていた。

なので、徒歩で北の都ケアレンを目指し歩いた。

それほど遠くはなかったのか、段々と外壁が大きく見えてくる。


「ま、壁があるのは水の都と一緒だね。でもあれは……?」


なんだろう……壁とは別に、何か膜のようなもので覆われている。


「北の都は別名魔法都市って呼ばれてるぐらいだからねー、多分結界っしょ」


「ふーん、相変わらずくわしいね華蓮」


まぁ三大都市っていうぐらいだし、調べればすぐわかることなのかな。


「この分だと、ボクが上空から観察するのはやめておいたほうがいいのかな」


「グリ公は即魔物扱いだろうね」


「そっか……ボクも一応グリフォンだもんね」


まだいうかこのフクロウは。




門の前に到着し、全員冒険者カードを提示した。


「冒険者か……みんな若く見えるが、ランクに差があるな。同じパーティではないのか?」


門番はこちらを観察している。

BとDなんて似たようなもんじゃん。

なんかほら……口に出したらどっちかわかりにくいし。


「んー、臨時で組んでるみたいな感じっしょ」


「ふむ、まぁいいだろう。問題は起こすなよ。今は都市内もピリピリしているからな」


門番から通行の許可が出た。

ピリついている理由は言わずもがなである。



「おー、都会感あるかも」


都市内部は背の高い建物が多かった。

それでいて、箒に跨って移動する人の姿がチラホラと見える。


「北の都すげー……」

「あれ、空飛んでる?」

「ホントだ、魔法かな?」

「飛行魔法……だと箒いらないよね」

「別名魔法都市ってこういうことだったんだ」

「でも魔法少女ルージュなら同じことできるんじゃない?」


6人の期待に満ちた視線が紅葉に向いた。


「できないけど?」


「そ、そう……」


勝手に期待されて、勝手にガッカリされた。

あんな棒切れに跨って飛ぶとか色々大変でしょ。

むかつくから今度ゴールドに会ったら一発叩いておこう。


「で、これからどうすんの? 皆あのことを知りたいんだよね?」


6人はコクリと頷いた。

そうか……やっぱり気になるよね。


私はそっとグリ公をみんなの前に差し出した。


「このぬいぐるみのフリをしてるのはグリ公で、魔法少女のお供的なあれだよ。よく情報収集とかいって空でサボってる」


「ボクのことそんな風に思ってたんだ?」


へぇ……、とみんな素直に受け入れていた。

うんうん、これでみんなの心のつかえが一つ取れたね。


「って、そうじゃないよ。今僕たちが知りたいのは、王国の宣戦布告についてだよ」


まこっち君の声に、周囲の視線が集まる。

どうやらデリケートな問題らしい。


「ここじゃ目立つっぽいね。どこか場所変えたほうがいいんでない?」


華蓮は都市内マップを広げた。

いつの間にそんな物手に入れたんだろう。


「た、たしかに……ごめん、せっかく赤嶺さんが和ませてくれたのに……」


「え? ……そ、そうだよー、ここで話すような内容じゃないからねー」


まぁ……グリ公のこともここで話すような内容じゃないけどね。


………………


…………


……


3部屋宿をとり、みんな紅葉と華蓮の部屋へと集まった。


「情報が集まる場所ってどこだろうね」

「こういう世界だと酒場とかだよな」

「でも魔法的な要素を利用した情報となると……」


都市内マップを広げて会議が始まった。

なぜ自然とこの部屋に集まったんだろう。

私のベッドに座るのはやめてほしい。

そういうの、気にしちゃうタイプなんだよね。


(お、あのお城けっこうでかいね)


窓から外を見ると、高台に一際大きなお城が見える。

水の都にはお城らしきものはなかった。

都市を覆う結界がなければ、グリ公に見てきてもらうのにな。


「この情報局ってのが、あーし的には気になるけどねー」


華蓮が指差したのは、都市内マップの中央だった。


「……たしかにそれっぽいけど」

「こういうところって、俺たちでも入れるのか?」


情報局……この世界のマスコミかな?

私はあんまり良いイメージないな。

無下に扱うとすぐ批判的な記事ばかり書かれるし。


「でも、情報を得るならここしかないよね」

「うん、それに桜田さんたちの冒険者カードなら、それなりに優遇とかしてもらえそう」


「じゃ、明日はここに決まりね。くれたんもそれでいい?」


紅葉は、返事の前に都市内マップを眺めた。


「……ごめん、私はちょっと別行動かな」


ケアレン城か……私は今ここがすごく気になる。

うん、そういうことにしよう。


「なんか気になることでもあったん?」


「……ちょっとね」


何か含みがある感じの返答になってしまった。

でも私のことは気にしないでほしい。

ただただマスコミ関係者に関わりたくないだけなんだ。



◇   ◇   ◇   ◇



翌朝、健吾たちは華蓮と共に情報局へとやってきた。

いきなり全員で押しかけるのもどうかと思うので、銀の冒険者カードを持つ華蓮が先に中で交渉している。


「大きな建物だな……」


これが元の世界であったなら驚くようなものでもないが、この世界では随分と規模の大きい施設だった。


「うぃー、とりまみんな中入っていいよー」


桜田さん、一体どんな交渉をしたんだろうな。



中へ入ると、最上階の一室へと通される。

ホントにどんな交渉をすればここまでスムーズに事が進むんだ。


「ねぇ健吾くん、ここ応接室というよりは、まるで会議室みたいだね」


「あ、あぁ……言われてみたらそうだな」


俺は少し緊張してるってのに、誠はすごく落ち着いている。

ただ……最近誠を直視できていない。

髪型一つで女ってやつはこうも印象が……


(――って誠は男だろうがッ!)


なぜ急に髪型を変えたんだ。

恐ろしいぐらいに似合ってて困る!


一人苦悩する健吾を、恵は満足そうに観察していた。


(ふふふっ、効いてる効いてる)


………………


…………


……


健吾たちが部屋に通されて、15分ほどが経過していた。

その間に部屋に入ってきた人間はまだいない。


「けっこう待たされるな」


隼人は椅子に座っているものの、そろそろ落ち着きがなくなってきている。

一番落ち着いているのは、誠か桜田さんだろうか。


「桜田さんもこっちに座ったら?」


「ありがと若菜っち、でもあーしはここでいいよ」


華蓮はずっと窓から外を眺めていた。

その先には、大きなお城が建っている。


「それに、ここの局長さんはちょっと意地悪っぽいし」


「どういうこと……?」


皆、華蓮の言っている意味がわからなかった。

しかし、若菜はその言葉にハッとする。


「……部屋にもう一人いる!?」


若菜の声に、健吾は即座に周囲を警戒した。

それほど彼女の空間把握能力は高いのだ。


(……別に誰も……いや、微かに気配がある)


健吾はいつでも剣を抜ける構えで、一つの椅子に向かって殺気を飛ばす。


「そこにいるのは誰だ……!」


誰も座っていないはずの椅子だったが、ギシッと椅子の軋む音がすると、一人の男が姿を現した。


「もう見破られたか。いやはや、異世界の英傑というのも中々侮れんな」


まるで最初からそこにいたように、大柄な男は足を組んで座っていた。


「ま、そこのお嬢さんは最初から気づいていたようだが」


「まーね」


華蓮以外の6人はまったく気づけなかった。

いつ入ってきたのか、それとも最初からいたのか……。


「自己紹介しよう。私が、ケアレン情報局本部局長のカイザーだ」


男は姿勢を変えず、ニッと笑みを浮かべた……。

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