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たびゆめ ~何度でも追い求め続けよう~  作者: 幸明沙夜
OUTSIDE WORLD
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15 救済と許容外

(れい)ちゃん。 私は弾丸を取って貰ってくるから、それまで待っていて欲しい病室があるんだ」

「……」


 この笑顔の紳士なおじさんは、若そうに見えて定年が近いと言っていたわ。

 不死身に年齢なんて関係なさそうなのに…。


 そんな事よりもこのおじさんは、私を褒めた。

 決して、褒められるような事ではないわ!

 アイツから逃げ切った私を褒めた。


 アイツの腕を粉々にしたのに!!



「よく耐えたね。 澪ちゃんは、頑張った! 偉いよ」



 私は、家族の事を治したかった。

 私の能力では、亡くなった人の細胞を元に戻す事しか出来なかった。


 治癒なんて能力はない。


 あっても手遅れなのは頭では分かっているわ!

 分かっているけど…。



 会いたかったの!!



 耐えてなんかいない。

 私の身体は、治ったから。


 耐えてなんかいない。

 私の能力で復讐したから。


 この能力を使って、アイツと同じような事を私はした。

 虫でも踏みつぶすように簡単に捻り潰したわ。


 全然、偉くなんてない!




 アイツもこの病院に運ばれている。



「ああ! そうだ。 澪ちゃん。 犯人の腕を治す事が君には出来るだろう?」

「…?」


「澪ちゃんが彼を治す事! これは、能力を持った澪ちゃんにとって大切な事なんだ」


 どうして戻さなくてはならないの!?


 アイツと同じにはなりたくないのに…。

 どうしても元に戻したくない!


 私の失ったものは戻らないのに!


 どうしてアイツだけ…。






「ここの病室だよ」

トントントン


「はーい!」

 聞き覚えのある声が部屋の奥から聞こえてきた。



ガラガラガラ

 病室のドアが開いた先には、帽子を深く被った女の子が座っていた。

 長い髪がなくても大きい瞳で分かる。


「理沙!」



「澪! はやっ…」

 能力の使い方がまだ分からなくて、尋常ではない速さで理沙の元へ駆け寄る。



 抱きしめた理沙は、温かかった。

 温かくて安心した。


 生きている人の温もりで思い出す。


 パパとママ。

 おじいちゃんとおばあちゃん。


 動かなくて。

 冷たくなって。

 笑わない。

 穏やかな皆。


 忘れないように。

 もっと傍にいたかった。


 もう抱きしめてくれる家族は誰もいない。



「澪が生きていて良かったぁ…」

 理沙が満面の笑みで強く抱きしめてくれた。




「ぅわああぁぁぁぁぁぁー…」




ぱたんっ

 病室の扉を閉めて安堵する京志郎(きょうしろう)

 

「いやぁ…。 本当に10歳かと思っていたけど、どうやら警戒されていたようだね」

「そのようですね。 ははは。 我々が付いていますので(つつみ)部長も早く胸の弾丸を取られて来て下さい」

 

 警護中の警官に満面の笑みを向けていく。

「宜しく頼むよ」



     … … … … … … … … … … 



「この小学校もう廃校になるのでしょう? 当時のまま残っているのかしら?」

(とき)さんの事だから、澪ちゃんの事を思って、この事件の近所に住んでいた人が占いに訪れていた場合は、過去を見ていたのかもしれないね」


「あぁ…。 しそうだわ…」

「だよね。 鶏小屋の資料は、最初の捜査の物だけだったからね」



「思い出したのは、ここで作業服を着た男に会っていた事よ」

「あのスナイパーと同じ作業着かい?」


「そうよ。 私は主犯に会っていた」

「あの時、一緒に見ていて良かった」


「そうね。 あのスナイパーを見ていなかったら、思い出さなかったかもしれないわ」


「あ! 澪ちゃんあるよ! 鶏小屋!!」



 それと、もう一つ。

 小屋の中に捜査資料には、ないものがあった気がしたのよね。

「やっぱり!」


「何だい? 小屋の天井?」



 そこには、大きな花丸と Good job !! の文字が書かれていた。



「これを鶏の惨殺事件後に書いているとしたら、他にも書かれている場所があるかもしれないね」

「25年前の1件の犯行だけではないってこと?」


「もしかすると…ね」


「帰ったら、全国の動物虐待と惨殺の資料をまとめてみるわ」

「無理しちゃダメだよ!」


「分かっているわ」

「この犯人の目的が未だに分からない。 澪ちゃんが狙いではなく半田久了(はんだ ながのり)だったし…」


「能力者でもないのに大胆な男よね」

 

 武器は遠距離射撃が行えるライフル。

 変装して、捜査網を抜けていく。

 事故物件で廃屋と化した家と学校にサンタを連れて行ったが能力者の匂いは、私と理沙以外になかった。




     … … … … … … … … … … 

25年前:病院



「決心がついたかい?」

 京志郎が澪の顔を見て優しく問いかける。


「私は寿澪よ! パパとママの娘でいたいから、助けられる人になるの! でも絶対に許したりはしない!!」



ガラガラガラ


 病室のドアを開けると白衣を着た医師が出て来た。

 京志郎と澪が医師とすれ違う。

 夏に嗅いだことのある独特な香りがした。


「俺は終わってない。仕事は、まだまだある。 殺せ! 魂の献上を! 殺せぇぇ!!」

 ベッドの上で犯人の久了が興奮し、発狂していた。


 今まで抜け殻のようになっていた男が血気盛んに生気を取り戻していた。

「さっきの匂い! 今の医師を連れて来い! 何を話していたんだ?」

 堤が病室の外に警備していた警察官へ伝える。

「はい!」



 久了が澪の存在に気付くが上半身を動かせないため、顔と脚を必死にバタつかせる。

「ヒィッ!! 来るな! 怪物!!」

 久了が恐怖で顔を歪める。


 澪も嫌悪感で顔を歪める。


「私も来たくなかったわ!」


パァァァァァー…

 澪が触れた久了の両腕が白く光り輝き始める。


 両腕は、見違えるほどに若々しい肉体を取り戻していった。



     … … … … … … … … … … … 



「未成年だから、アイツの死刑はないと思っていたの」

「ああ。無期懲役になるとは予想外だったね」


「もし少年院から出てくることがあるなら、事件になる前に何度でも逮捕してやるつもりでいたのよ」

「相変わらず男前だね」


「褒められている気がしないわ」

「あはは。 これは失礼しました。 お嬢さん」


「着いたわよ! 車降りて! (きょう)さん。 今日は帰れないわよ!」

「ご老体に何を言っているのかね?」


ピンポーン


「不死身が何を言っているのよ! 今日こそ、本当の年齢を吐いて貰うわよ」

「あれ? ばれてました?」


「私が誰と生活していたと思っているの?」

(とき)さんかぁ…」


ガチャ


「はいはーい♪ 澪! (きょう)おじさん!! いらっしゃい」


「理沙―!! この前はありがとう!」

「テレビで見た心霊スポットに一人肝試しをしに行ってただけよ。 何これ! 日本酒♪ 嬉しい! 京おじさんも飲むでしょ?」

「勿論。 頂きますよ」


「チビ二人いるけど気にしないでね。 今日は、パパが寝かしつけてくれるから!」

「そう言えば、澪ちゃん。 東条(とうじょう)君とは上手くやってるかい?」

「何で東条なのよ?」


「それ! 私も気になる!!」

「だから何でよ!」

「今度は、東条君も連れて来ようね」


「大歓迎!」

「だから何でなのよーっ!?」



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