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たびゆめ ~何度でも追い求め続けよう~  作者: 幸明沙夜
OUTSIDE WORLD
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14 離苦と邂逅

 東京。

 警視庁へ向かって疾走する一筋の光があった。


『おじさん!! お願い!』

「理沙ちゃん久しぶりだね」


『そんな事より、(れい)を助けて!!』

「何があったんだい?」



『酷い事…。 あと初めての能力は危険な事もあるって言ってたでしょ!?』

「発現者なんだね。 場所を教えておくれ。 澤田(さわだ)! 手を貸して欲しい!!」

「はい! (つつみ)部長どこ行くんですか?」


 零係に配属されたばかりの新人であるが便利な能力で助かっている。

 理沙から聞いた地図を頼りに住所を伝える。



「理沙は、もう身体に戻りなさい。 あまり長すぎる昼寝では皆に心配をかけるよ」

『分かってるもん! 必ず澪を連れて来て!』



「任せておきなさい」


 愛くるしい天使のような姿の理沙に微笑み、飛び立つ姿を見送る。




「堤部長! 準備できました。 僕も行きます」

「いや…。 状況を確認してからにしよう。 澤田は近くの警察署へ連絡を頼む」


「では、何時でも連絡して下さい!」

「ああ! ありがとう」


 澤田が腕にしていた黒いブレスレットを放り投げる。

開け円(ひらけえん)!!」



 すると澤田の放った黒いブレスレットは大きな円を描いた。



ザァァァァァァーッ


「相変わらず、良い掛け声だね」

 そう言って、若い子を羨ましく微笑む堤。

「言わないで下さいよ! 能力コントロールがこうしないと出来なかったんですから…。 中二病みたいで本当に恥ずかしいです!」


「そういう意味では無かったんだが、悪かったね。 気を付けるよ」

 微笑みながら、鉄のような輝きの円の中へ入っていく堤。






ミーンミンミンミンミン…


「ここか…」

 冷房の効いた室内から、一気に暑くなる。

 夕暮れ時のお蔭でまだマシだ。


 堤が到着した先は、寿と表札の掛かった家の前だった。



パァーンッ



 窓の方から、光が漏れていた。



「…あ…ぅうぅぅ…」

 玄関の方から、うめき声がしていた。


 玄関を開け放つ。

 廊下で仰向けに這いずりながら、耐え動く少年がいた。


「君! 大丈夫かい?」

 近寄り、腕を見て衝撃を受ける。


「!?」

 この腕は、この少年の腕なのか?


 身体とは、余りにも似つかわしくない腕をしている。

 肘の関節は、両腕ともに折れてるな。

 這っている所を見ると、手を使って起き上がろうとしたのだろう。

 両手も酷い事になって腫れ上がっている。


「無理をするんじゃない」


「ぅ…俺に触るなぁぁぁぁぁ!!」


ゴキンッ


「あぁぁぁぁ!!」


 大声とともに腕に力が入ったのだろう。

 またどこかが折れた。



 両腕を切断する方が楽になれそうだ…。



 こんな能力を使った子がここにいるのか。


パァンッ


 先程から何度も光っている方へと向かう。

 近づく程に異臭がしてくる。



 開いたドアの中は、まるで花畑のように色とりどりの透き通る花が敷き詰められていた。



「…枕花」



べちゃ…

 一歩踏み入れるだけで不快な音がした。


 こんな酷い場所に冷静に淡々と何度も能力を使い続けている女性が一人。



パァンッ


 何度も触れたのだろう。

 手を血まみれにさせている。



「君が澪ちゃんかい?」


パァンッ


「もう止めなさい」


パァンッ


「君がしたい事は、よく分かる。 だが、君の能力では叶わない事もあるんだ」


パァンッ


「能力に拒否されていることは、君が一番分かっている筈だ」


パァンッ


「綺麗にして、眠らせてあげよう」


「……」

 女性が静かに私を見てくれた。


 とても美しい凛とした子だった。

 無言でまた視線を遺体へと戻された。



パァァァーッ



 次にその女性がした事は、私の目を疑った。


 部屋全体に飛び散った色んな身体の部位が一人一人の身体へと戻っていった。



「……澪ちゃん」

 こんなことまで出来るのか!?


 鑑識が入るまで待って欲しかった!

 玄関にいた犯人であろう少年が起こした事件の証拠…。



 あー…。

 私の失態ですね。


 目の前の女性は、そんな事もお構いなしだ。

 リビングに接した和室に布団を敷き、一人で軽々、遺体を丁寧に寝かせていた。


 事件現場であるが、能力発現したばかりの被害者だ。

 能力暴走の危険もあるので彼女を興奮させない事が最善の選択ですね。


 手伝おうと遺体に触れようとした。


パシンッ


「……」

 女性に睨まれた。




 4人を和室に寝かせて、彼女は真ん中で静かに見つめ始めた。

 声を出すことなく、ひたすら涙だけを零しながら、見つめ続ける姿が彼女の美しさを際立たせた。


 透明な花枕も本当に美しかった。


 これを見える人がごく少数だなんて、残念で堪らない。




 理沙ちゃんの姿が見える条件に最近気付いた。


 心を許せる人や必要な人ではないだろうか。

 それならば、自由に人目を気にせず、飛び回りたい彼女の気持ちにも沿うのだ。


 だから、私は本当に都合よく出会った必要な人だ。

 きっと、出会っていたのが私でない零係の職員でも良かったのだ。






 遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。



 おっと。

 救急車を呼ぶのを忘れていた。




「澪ちゃん?」


「……」


「理沙ちゃんから、頼まれてきたんだが…。 そろそろ事件の現場を調べさせて貰っても良いかな?」

「…いいわ」

 彼女は、後ろ姿のまま顔を向けてはくれないが、涙を拭い始めた。


「事件のお話も聞くことになるんだけど大丈夫かい?」

「ええ」


「ありがとう。 君は澪ちゃんで合っているかな?」

「ええ」

 振り返り視線を合わせてくれた女性が名乗る。



「寿澪。 10歳よ」

「10歳!?」


「…ああ。 忘れていたわ」


パァァァァッ


 澪の姿が大人の魅力ある姿から、子供の姿へと変わっていく。

「10歳よ」


「…ああ。 なるほど!」

 自由自在か。

 少し私の能力に近いが彼女の能力の方が出来る事が多そうだ。

 羨ましいな。




 玄関のドアを出た瞬間に胸に痛みが走る。


パシュンッ


「堤部長!? 血が!!」

 白いシャツの胸元に血が滲み出す。


「大丈夫だ。 気にするな。 それより、あの山の方に検問しけるか? グレーの作業着と黒のボストンバック」

「見えるのですか?」


「勿論だよ」

「澪ちゃんも出来るんじゃないかい?」


 後ろにいた少女が顔を出す。

「………。 サングラスに茶色の髪の人のこと?」


「そうだよ! 凄いね! やっぱり能力のコントロールが上手い!」

「おじさんの方が凄いわ。 どうなっているの。 その身体…」






「私は不老不死なんだよ」




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