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たびゆめ ~何度でも追い求め続けよう~  作者: 幸明沙夜
NEVER EVER GIVE UP
16/60

16 想起

 懐かしい…。


 車を降りて、路地裏の住宅街を歩きながら思い出す。

 辺りは、もう暗くなっているが昔に通った幼稚園の帰り道だ。

 小学校も中学校も今も方向が違うから、この道を通ることは殆どなかった。

 公園には、遥大(はる)遥絆(はな)がいるから、よく行っているがこっちの道は使うことがなかった。


 遥大と遥絆は、俺がお迎え係で行けるように保育園に行っている。

 未来(みくる)もお迎えに付き合ってくれていた。

 そのせいで、保育園のお母様達からは、若夫婦と呼ばれることもあった。

 思春期の子供をからかわないで欲しい…。




「ココが二件目の被害者が魔女に会った現場だ」

 桜雅(おうが)さんがそう言って立っている場所のアスファルトは、黒くなっていた。

 広範囲の跡に事件の凄惨さが窺える。

「そろそろね。 天祥(てんしょう)ちゃんと結城(ゆうき)君は前に出ないで! 桜雅お願いね」

 寿さんの戦闘態勢は、若い姿なのだろう。

 また10代位へと若返っている。


「へいへい」

 桜雅さんのバリアは、見えないが寿さんとの会話で俺達を包囲してくれているのだと悟る。

「聴取した時の話だと、魔女さんは一瞬で移動が出来るんですぅ~」

 サンタを抱きしめ……。

 …握りつぶしそうな勢いの(なご)みんからサンタを救出する…。


くぅ~んっ

 泣きつくサンタを抱きしめて、公園へ入っていく。


 俺の後ろから、ぴったりくっついて離れない和みん。

 そんなに怖いのなら、車で待っていればいいのに…。

 …車で一人の方が怖いとか言いそうだなと、思っていた。


くんっくんっくんっくんっ

 サンタが急に匂いの方向を気にし始める。



「魔女や!? (れい)!! 奥からくるで!」



ガキィーンッ

 大鎌が上から振り下ろされ、見えない壁にぶつかる。

 反動で黒いローブに身を包んでいる人が後方に退く。


 公園の整備された道なりの奥に左へ曲がる橋が見える。

 その橋の欄干の上に黒いローブ姿の魔女は、浮き上がるかのように優雅に着地する。


「うわーっ! 何ですか!? あの大鎌! 想像していた大鎌よりも大鎌過ぎます!!」

 和みんの素直な反応に桜雅さんがすかさず突っ込みを入れる。

「そこかよ!? どんな大鎌でもいいわっ!」


「良くありません!! あんなデカいと思わないじゃないですか!? あんなの食らったら瞬殺じゃないですか! もっとビビりましょうよ」

「ビビってる間に足持ってかれるぜ!」


「ひぃっ!!」

 桜雅さんの一言でしゃがみ込む和みん。

「ちなみにどんな大鎌を想像したんですか?」


「げっ! 聞かなくて良いぜ? 暁澄(あきと)!」

 魔女から視線をそらさずに桜雅さんが想像がつくと言わんばかりの呆れた横顔をしていた。

「カマキリさんの鎌です」

 自信満々のドヤ顔で和みんが答え、思わず俺も突っ込みを入れる。

「小さっ!?」

「アホやねん」

 サンタもいつものことだと言わんばかりの和みんボケに穏やかに頷く。


「なっ? しょうもないだろ?」

「鎌なんて見たことないですもん!」

 桜雅さんに貶され、和みんが反論する。


「そこのトリオ! 魔女が来るわよ!」

 臨戦態勢で油断できない寿さんが注意してくれる。

「ワイも入れてや! カルテットやで!!」

 サンタが上手い突っ込みを入れるのを聞いて、人のようだと感じる。



キィンッ

 魔女が見えないスピードで大鎌を振り下ろして弾かれたのが音で分かる。

ガキィンッ

 魔女が二度目を振り下ろし、再度弾かれた音でバリアは破れないと確信した。


 ほっと胸をなでおろす。

「今日は桜雅様様です。感謝します」

 和みんも金属音に耳を塞ぎながら、この強靭なバリアに安堵しているようだ。


「それで結城君。 あの魔女消えないの?」

 寿さんに肝心な事を尋ねられる。


「…はい」

 海水を消した時も洋服を変えた時も強く念じただけだ。


 何が違うんだ!?


 あの魔女は、俺の無意識化で実現されたもの。

 今までと何が違うか?


 考えろ。

 考えろ。



 どこからだ?



 最初は、泳ぐという事が俺のイメージで怪力水泳を実現させている。

 助けたい気持ちで一心不乱だった。

 能力を知ってから考えると、もっと非現実的なイメージが持てたら、もっと簡単に泳げていただろう…。



 それから、右足だ。

 これも無意識だった。

 確かに、怪我をしていなければと考えた。

 その気持ちが無意識に実現している。

 これは、もう解除するつもりはない。

 あれだけの怪我だ。きっと解除すると、痛みとお付き合いし続けていかなければ、ならないだろう。



 そして、飴も無意識化で実現している。

 落とした飴から始まった、ただの思い出だ。

 まさか降るとは…。

 二人一緒に食べている姿が嬉しかった。

 嬉しい気持ちが反映されてしまったのだろうか。


 なんだか…。


 俺の気持ちが無意識で実現されてしまっている。

 さっきの海水も無意識化で俺の気持ちが反映されて実現されたもの。




 俺の気持ち?






 次の瞬間。

 大鎌が地面から現れる!?


「ぅわぁぁぁ!!」

 慌てふためいて尻もちをついているうちに大鎌が向かってくる。

「きゃぁぁぁぁぁーっ」

 後ろでサンタと和みんもパニックっている。


 ヤバイ!

 終わった…。




キィィィィィィンッ




 寿さんが硬い腕で受け止めている。

「結城君。 こいつ何とかできそう?」

「は、はい! もう少し時間を…」


「任せて!!」

「桜雅も! この子達、頼むわよ」


「…うっす」

 そう言って、バリアを再構成させているようだ。


 寿さんがそれを見て、大鎌を弾く。

 再び、大鎌が振り下ろされるが寿さんは、見事に避けて大鎌の上に着地している。

 体にフィットしている黒いパンツスーツとヒールで華麗に空中を舞って着地する姿は、違和感があるせいか、妖艶さと驚異的な身体能力を際立たせる。




「うわぁぁぁぁーんっ!! 桜雅のバカーーー! 怖かったよぉぉぉ…」

「あぁ…。 もう悪かったって! まさか下からも来れるとか思ってないじゃん?」

「…ごめんなさい」

 俺の能力のせいだ。

 サンタが足元をスリスリして慰めてくれる。


 独り歩きしている能力の柔軟さが嫌になってくる。


 ん?


 柔軟さ…。

 そうか!



「危険な目に合わせてしまって、本当にすみません」

「お! イケそうか?」

 俺の表情を見て、桜雅さんが気づく。



「はい!」






ズザーーーーーーーッ

 寿さんが弾き飛ばされた反動で地面を滑るように着地する。


キィン キィンッ

 寿さんの強化された固い腕と鎌が激突する。

ガンッ



「もう! せっかくのオニューなのにボロボロよ!」

 寿がボヤキながら交戦していると、また大鎌が振り下ろされてくる。


すっっ

 そこに割って入った指先が大鎌をキャッチしていた。


 見上げると結城暁澄がいた。




「遅くなって、すみません。 お詫びに後で直しますね」

 そう言って、結城暁澄は軽く大鎌を押していく。

 魔女がたじろぎながらも、もう一度、大鎌を振り下ろしてきた。



ブンッ



 横から振り下ろされた大鎌は、結城の脇腹から右肩へ抜けていった。

「きゃぁぁぁぁぁぁ」

 その光景を見ていた和みんの叫び声が聞こえた。


 俺は、無傷だ。


 魔女が左右から、また大鎌を振るってくる。

ブンッ シュッ シュッ

 全て無傷である。

 攻撃は俺を通過するだけで受けていないのだ。

 魔女がたじろぎ、後ずさりを始める。



 良かった。

 上手くできた。

 実現されている魔女の能力は、無意識化の暴走魔女のせいか、どうにもならなかったが新たな実現能力を使ってみた。



 魔女の攻撃は無効。



 何故気付かなかったのかと、思ってしまう。

 俺以外の皆にも有効では、ないだろうか。




 橋の上で水のせせらぎが聞こえる。

 ちょうど風の通り抜ける場所で未来(みくる)との思い出の場所だ。


 強い風と共に黒いローブのフードがはためく。



 ずっと魔女と聞いた時から思い当たる言葉があった。

〟私は魔女の娘のように強いんだから〝

 未来(みくる)がそう言っていた。



 逃げなくなった魔女の大鎌が無数の蛍の灯火のように瞬きながら消える。


 ずっと。


 ずっと。


 気になっていた黒フードをめくる。




 …やっぱり。


 そこにいたのは…。


 ずっと。


 ずっと。




 会いたかった人の姿形をしていた。






未来(みくる)



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