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たびゆめ ~何度でも追い求め続けよう~  作者: 幸明沙夜
NEVER EVER GIVE UP
10/60

10 天気

―ピッ…ピッ…


 昨日と変わらない妹の病室。

 退院前に遥絆(はな)の顔を見ておきたかった。



 あの後、医師の説明があったが本当に普通の経過を辿って完治したというような説明ぶりであった。慌てふためいた感じの様子も垣間見られなくなっていた。


 きっと零係のあの人達が何かしていったのだろう。


 機密情報取扱説明書類?とやらにもサインさせられた。


 口外厳禁とか…。

 情報漏洩厳禁、写真・撮影厳禁など。

 書かなくても分かってますと言うようなことを細かく記載されていた。


 怖かったのは、禁止事項に触れた場合、指名手配となるそうだ。



 こんな書類があって、細かいとなると…。


 人知れず、自分の身の回りの範囲内で秩序を乱さない程度の能力を使っている人がいるのだろう。

 今まで気付かなかったが、能力者は、普通に生活して歩いているのだ。


 現実が…。


 更に現実離れしていく。




 妹は、目が覚めた時の俺と同じように色んなものが繋がれている。

 股間の管は、排泄量管理だそうだ。

 何度思い出しても恥ずかしい…。


 先生からの説明では、運ばれた時は、高熱で肺炎も起こしていたが、無事に落ち着いて、食事も普通に取れていたと…。


 それなのに昨日の朝から、丸一日まだ目を覚ましておらず、今は、ただ眠っているとしか言いようのない状態だそうだ。


 遥絆が寝返りをする姿を見つめる。


 同じ顔の遥大(はる)を思い出す。




 あの時、確かに遥大も一緒だった。


「弟さんも行方不明だと、警察と救急隊から伺っているよ。 ご両親の事も残念だったね」

 昨日、妹の病状を聞いた時に弟の事を確認したら、そう言われた。


「退院の調整も必要でね。 明日の午前中退院でいいかな? 退院の手続きは、警視庁の方が済ませているから大丈夫だよ。 迎えもお願いしてあるからね。 退院と言っても君は未成年だから、今後、未成年後見人が必要になってくるんだけどー…。」


 その後の話は、うろ覚えでよく聞いていない。




 遥大。



 あの時、息があったことを確認した。


 絶対に生きている。




「はる…」


「!?」

 一瞬、遥大がいるのかと思った。


 遥絆も起きたのかと…。




 寝言か…。



 遥絆と遥大。

 いつも、いつでも、なんでも、一緒だったな…。





「あ~!」

「はなちゃん? どうしたの?」


「アメおちちゃったのぅ…」

「ぼくも同じのもらったから、あげる」


「いいの?」

「うん」


「んー…」

 何やら悩み始めた遥絆。

 考え事も態度に出るとか可愛い妹だ。


 二人の様子をベンチに座って見ていた。


 すると遥絆が俺の方へ駆け寄ってくる。

「あーにぃ!」


「はいはーいっ! つっかまーえたっ」

 遥絆を抱き上げながら、くるくる回転させる。


「きゃー! きゃはははは」

 いつも楽しんで喜んでくれる。

 俺も笑い声と一緒に楽しくなって、回転を増し増しにする。


 立ち止まると、抱きかかえて視線が上にある遥絆が飴を見つめて、クルクル両手で回しながら話し始める。

「あのね…」

「うん」


「あーにぃにね…」

「うん」


「このアメさん、あげる」

「ん?」


 予想外過ぎて、驚いてしまう。


 もの凄く、食べたいのではないだろうか?

 今までずっと、飴を見つめていた。


「遥大から貰ったんじゃないの?」

「…うん」


 まだクルクル飴を回して、見つめている遥絆。

「でもね。 はるが食べれないから…」



「はなもたべない!」



「そうか! 遥絆は優しいな~」

 可愛すぎる!!


 優しい遥絆の頭を思いっきり撫でて褒めまわす。

 また遥絆を抱えて、くるくる回転させた。


「そんな優しい遥絆にご褒美です」

「ほんとっ!? なぁに?」

 小首を傾げる遥絆。


 なんだ。その仕草は…。

 反則だ。


 可愛すぎて反則だ。


「ジャジャンッ」

 ポケットの中から、飴を取り出す。


 さっき公園に集まっていたママさん達から、俺も同じ飴を貰っていた。


「うわぁ!!」

「お兄ちゃんは、アメさん卒業したから、どうぞ!!」


「あーにぃ。ありがとう」

 満面の笑みで抱きしめられる。


 遥絆のお兄ちゃんで良かったと喜びを噛みしめる。


「はるー! 一緒に食べよう!!」


 笑顔で飴を頬張る二人を見つめる。


 なんだか見ているこっちまで嬉しくなる。





 懐かしいなぁ…。


 思い出に浸りながら窓の外を見やると目を疑う光景があった。




『続いて、今日の天気予報です』


『はい。 今日は、曇り時々、飴になります。 飴傘を忘れると痛いので気を付けてくださいね。 甘い1日を楽しんで下さいね~』




 窓の外は、本当にアメが降っている。

 そう…。

 雨ではなく。


 飴だ。


 甘い飴。





「寿しゅにーん。 外見ました?」

「えっ!? 外? この忙しいのに背を向けているのが見えないの?」


「だから、言ってんですよ」

「外が何だって……!!?」



「桜雅! 天気予報、調べて!」

「色んなの見てきたけど、オレこんなの初めて見ましたよ」


「桜雅の驚きのテンションにも驚くわ。 どこまで省エネなの?」

「どこまででも~。 出ました。 世界全域の飴予報ですね…」


「!?」

「窓に張り付いてるのは、この零係だけ見たいっすね~」


「何よ。 これ…。 各地で飴が降ることが普通にあることになってるじゃない。こんな能力範囲・容量(キャパシティ)。…異常よ」


「やっべ~。 化け物…」



「サンタ!!」

「わんっ」


「この飴能力の匂い忘れないで覚えておいて!! 同じ匂いの人物がいたら、すぐに教えなさい」



「わんっわんっ!!」




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