Opposite side fate~正反対に走る~
アナザーストーリーNo2
これでこの章はおしまいになります。
次章で終わりにする予定。
でも終わりたくないだろうからガクンと投稿頻度落ちるだろうなぁ~(笑)
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正邪へ
どうも、猫辰です。
この手紙は君の手に届いているのかな?
まあこの手紙が届くかどうかは慧音さん次第だろうけどね。
単刀直入に言うのは余り幻想郷風に言うなら「雅じゃない」だろうから少し遠回りして話題に切り込んでみようかな。
幻想入りしているかは分からないけど夏目漱石って人の「夢十夜」っていう小説を知ってるかな?
そこの物語の1つに「第一夜」があるんだ。
もしこの本を読んでいるのなら言いたいことはもう分かるかもね。
概要を紹介するなら「100年待っていてください」っていう女の人が出てくるんだ。
正邪、君なら100年待つことができるかな?
俺の体に異変が起こっている。
別に迷惑が掛かるような異変って訳じゃない。
いや、ある意味幻想郷に迷惑を掛けかねない異変かな。
幻想郷の裏仕事をしている方々にね。
無論、こちらとしてもタダでやられるつもりは毛頭ない。
考えた結果地底に引き籠ることにしたんだ。
この体の異変に決着をつけるのに大体100年くらいかかる。
場合によっては150年、200年と伸びていく可能性も増えてくる。
俺としても地上に戻りたい気持ちはある。
(出立前に書いているからひょっとしたら留まりたいの方が正しいのかな?)
本音を言えばまだ地上にいたい。
正邪や慧音先生、妹紅さんと仲良くしていたい気持ちもある。
それでもこの異変ばっかりはどうにもならないんだ。
改めて訊こうか、正邪。
君は100年待つことが出来る?
伝え忘れたけど竜人戦争で俺を助けてくれてありがとう。
直接言えないのがすごく心残りだ。
いつでも機会があったのにね。
君がいてくれたから俺は今生きていることが出来ている。
100年後会ったら一緒にお酒でも呑もうか。
それじゃあね。
猫辰
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こんなふざけた手紙をもらってからどのくらい経ったのか。
変わらずあちこちをぶらぶらしているうちにあいつがいた寺子屋に立ち寄っていた。
『…猫辰は私が再起不能にしちまった。後100年は地上に出てこれないだろうな。』
不意にそんな声が聞こえた。
あの声は確か…死にぞこないの蓬莱人だったか。
あいつが猫辰に危害を加えたから猫辰は200年も…
どうもむかっ腹が立ってきた。
さて、どう殴り込んでやろうか…
そう考えていると何かが私に待ったをかける。
あの蓬莱人は自分が100年の間再起不能にしたといった。
だが、手紙で100年といっているのはただの偶然か?
そもそも猫辰の事だから能力を応用して外傷的な傷ならすぐに治すことが出来る。
つまり…あの蓬莱人は猫辰と会い打ち合わせをした。
そう考えると多少は納得がいく。
不思議だな。
前なら他の奴の事なんて気にも留めなかったのに今ではあいつの事ばかりを心配している。
私が付喪神の異変を起こした時でもそこまで針妙丸を気にした事はなかった。
なのにあいつの事ばかりは忘れようとしても忘れられない。
私の事をあそこまで気遣ってくれたのもあいつだけだ。
何かがおかしいのか、これが普通なのか。
私はその場を離れてまたぶらぶらと歩き出した。
「おや、お尋ね者がこんな所で何の用かな?」
ふと後ろから声を掛けられた。
「あぁ?」
振り返ると鳳凰が私を見下ろしていた。
ハルヴィアとかいう鳳凰か。
「別に何でもねぇよ。」
「何でもないなら街になんて入らないだろう。」
「まあそうかもな。」
「猫辰の事だろう?」
「――ッ!」
ったく、こっちの考えていることは全部お見通しってか?
私はハルヴィアを睨みつける。
ハルヴィアの目は面白がっている様に見えた。
「かもな。」
「好きだったのか?」
「どうだか。あんなろくでなし誰が好きになるもんか。」
「それもそうか。」
そういってハルヴィアは体を震わせる。
多分笑っているのだろうが鳳凰本来の姿をしているため砂浴びをしているようにしか思えない。
羽毛が私の頭に降りかかった。
「何処までもお人好しだもんな。」
「碌に愛着もない見ず知らずの人間に手を差し伸べる程度にはな。」
「そんなことを言えばお前も大概だな、正邪。」
「はぁ?」
私は思わず訊き返した。
「だってそうだろう。過去一度しかあったことのない奴の為に戦場に駆け付けるんだからな。お熱い恋人でもなかなか出来る事じゃないと思うけどねぇ…」
「なッ! うるせぇ! 私は借りた恩を返しただけだ。」
「それこそ天邪鬼らしくないじゃないか、えぇ? 天邪鬼なんて恩を仇で返すのが常套手段だろう?」
「それは――」
「いい加減自覚しな。あんたは――」
「わぁってるよ!!」
そういうと私は走って逃げだした。
結局私の周りには何もないのか?
逃げて逃げられて…
だったら…いつか追ってみるのも悪くないかもしれない。
地底に行こう。
そしてアイツに会ったら言ってやるんだ。
「――この馬鹿野郎が、愛してやるよ。」




