こんな鬼でもついてくる奴がいるならそいつは修羅だ。
なんだろう…
最近小説の質が悪い…
質より量になりつつある今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
「猫辰、起きろ!」
その日の朝、俺は予期せぬ起床をすることとなった。
「…んあ?」
慧音さんが俺の肩をグイグイと揺さぶっている。
東方キャラの誰かに一度起こされてみたいと思ったことはあったが、まさか現実になるとは正直俺も驚きだ。
しかし、慧音さんの様子を見るに平和的な用件で起こしに来たわけではなさそうだ。
「どうしたんですか?」
「幻想郷が、侵略される。」
「…はっ?」
俺は何とも情けない声を上げた。
寝起きで動かせる最速のスピードで頭を回転させる。
思い出せ、俺の小説ではどうなった…
構想だけでもいい、早く思い出せ…
その時、俺は腕にかつてないほどの鳥肌が立った。
キトラの侵略。
それがもう始まったっていうのか。
俺はまだ寝たいと駄々をこねる体に鞭打つと布団から起き上がる。
「それで、里の人たちはどうしてるんですか?」
俺は慌てて聞く。
「里長のもとに尼僧の聖 白蓮が来たんだ。そして『幻想郷が侵略される。』と。里長は緊急会議で全員を呼び出す。お前も来てくれ。」
「分かりました。取り合えず着替えたいので少し外に出ていてもらえますか? その間に荷物をまとめるとかなんとか…」
慧音さんは頷くと部屋を出て行った。
なんちゅう急展開。
正直この展開を作った過去の自分を呪いたい。
しかしそんなことをしている暇すらないのが今の現状。
俺はさっさと着替えを済ますとPCを最近にとりに作ってもらった「万能ちゃんリュックサック」に放り込む。
何でも隙間妖怪の能力を何とか再現できないものかと試行錯誤して作ったものらしい。
少ない要領だがそれでも普通のリュックの倍は入るとか…
ありがたい限りだ。
あのシンクタンクを背負って集会に出向く気にはなれない。
あらかた荷物を詰めると俺は部屋を出た。
「猫辰、急ごう。」
「はい!」
本当はコーヒー飲んだりとか小説書いたりとかしたかったけど命には代えられない。
俺はリュックを背負って集会場へ向かった。
そこはに大勢の人間が集まっていた。
「そもそもどうして集会場に行くんですか? 防御性の高い建材で作られているとか?」
「いや、残念ながらそんなことはない。逃げるか戦うかという選択だ。一部のものだけ逃げたら残ったものが全滅した場合そいつらは卑怯者になってしまうから。里長の許可をもらった方が肩身の狭い思いをしなくて済むんだ。」
あほらしいと思ってしまうのは俺がずっと1人で何かしらの活動をしてきたからだろうか…
会場の中ではすでに大論戦が繰り広げられていた。
「ですから! ここは我々の大事な土地ではないですか! この土地があったからこそ私たちは豊かな作物に恵まれ今まで一度も飢饉に見舞われることなく過ごせたのです!」
「そうだそうだ!」
「だからこそだ! ここで我々が逃げて命をつなぎ、他の妖怪などに奪還してもらえば我々は命を失わずして土地を得られる!」
「いいぞいいぞ!」
「しかし、それで妖怪どもがその土地を自分たちの土地といって占領したらどうなるんですか!」
そんな不毛すぎる議論がこの会場で行われていた。
里長はそんな2勢力の間に立ってじっとお互いの耳を澄ませている。
そばにはその娘、そらもいた。
こちらに気づきそっと微笑む。
俺は軽く会釈を返して議論の様子を見守る。
そんな時間はないだろうに。
なんでそんなことも気づかないのか。
ぶっちゃけ各々で判断して逃げればいいと思うし、仮にここが滅びたなら別の里の者として名乗ればいいと思う。
世の中は意外とそんな感じで渡っていけるんじゃないかと俺は思っている。
実際は口で言うより難しいかもしれないけど。
俺が来てからかれこれ5分経った。
その間にも里の連中がたくさん来ている。
流石に俺はいらいらしてきた。
決して里長のことを間抜けだとか要領が悪いとかいうつもりはない。
里長自体はかなり優秀なんだと思う。
ただ、周りの連中が不毛な議論をしている所為で進まないだけで里長に任せれば一瞬で決まるというのに里長はあえて民意を大切にしている。
立派といえば立派だ。
ただそれを議会にまで持ち込むべきかっていうと、ねぇ…
ちらりと慧音さんを見ると同じ結論に達した様だ。
俺の頭をなでて無言で意思を伝えてくる。
「気持ちは分かるが私たちの出る幕じゃない。」
そう、仮にも妖怪に化けられる俺と、ワーハクタクの慧音さんだ。
本来なら不気味がられてどんな状況に陥れられてもおかしくはない。
慧音さんはおめでたい白澤だからいいものの俺はどうなっていたか…
正直考えたくもない。
しかし…
俺はその時気づいた。
あれ、これ俺も考えがループする感じ?
俺はひそかに苦笑する。
結局俺も、あそこの連中と何ら変わりはなかった訳だ。
でも俺はそれに気づけた。
「慧音さん慧音さん。」
俺はクイクイと慧音さんの服を引っ張る。
「どうした?」
「妹紅さんと連絡はついてるの?」
慧音さんは眉を寄せた。
その様子だとまだらしい。
「妹紅さんに伝えてきて『幻想郷が侵略される』って。他の里を守るように伝えて。」
「構わないがお前はどうするつもりだ?」
「世話になってる以上少しばかり貢献しないとね?」
慧音さんは俺が何をしようとしているのか分かったようだ。
「やめろ、お前は外の世界にいたんだろう? なら武器のことも、その危険さも知ってるはずだ。」
「じゃあ、このいつまでも不毛な議論を敵は待ってくれるのかい?」
「でも、お前には死んでほしくない。うれしかったんだぞ。ずっと私独りだった寺子屋にお前が来てくれたのは。」
そういうと慧音さんは涙を流した。
「そんな大げさな。なら弾幕の打てる生徒を戦線に出すのか?」
慧音さんは首を横に振る。
当たり前だろう。
「慧音さんは子供たちの未来を補助する義務がある。助教師なんていくらでも替えがある。」
その時俺は慧音さんに思わぬことをされた。
目いっぱいに抱き着かれたのだ。
「この…大馬鹿者…」
「もともと慧音さんが思っているような頭は持ってないよ。」
そういうと俺は慧音さんの頭を軽くたたき引きはがす。
「1人でも人間を生き残らせることが大切だ。そのためには力を持った者が人間を守っていくことが大切なんだ。幻想郷は人間だけでもやっていける。皮肉なことだけど…人間と妖怪が共存する幻想郷を守るためには人外が滅ぶ覚悟で行くしかない。」
「どうしてもか?」
「少なくとも俺なりに考えてみたんだ。そしたらあそこの連中と大して変わらないことに気づいたんだ。ずっとぐるぐる同じところを考えている。だったらさっさとケリをつけようじゃないかって思って。」
慧音さんはまだ涙を流したまま頷いた。
「分かった。帰ってきてくれ。」
「それは保証できないかな。でも先生は生徒を守ってて。俺も教師の端くれなりに守るから。」
その言葉に慧音さんは涙を拭きながらその場を去った。
「ありがとう、慧音先生。」
俺は論戦の方に視線を向けた。
まだ議論は続いている。
もううんざりだ。
何度も何度も同じところをぐるぐると話し合いやがって。
俺は力任せに畳をかかとで叩いた。
がんッ!
凄まじい音が響き渡る。
その音に周りが静まり返り俺の方に向いた。
相変わらずそういったたくさんの視線には慣れない。
思わず逃げそうになる。
逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい。
そう叫ぶ心を押し殺し俺は声を発する。
「ひとつ、案がある!」
「なんだと!」
「ガキはすっこんでろ!」
「里の命運が決まるときに口を挟むんじゃねえ!」
周りから怒鳴り声が聞こえる。
悪役?
なってやろうじゃねえか。
残念ながら嫌われることにはもう慣れている。
「うるせぇ! 黙ってろ!」
俺は力の限りに咆哮する。
その声で周りはピタッと静まり返った。
「最初に言わせてもらおう。俺は外の世界から来た猫辰ってもんだ。俺を利用してみないか?」
周りがにわかに騒がしくなった。
「俺には能力がある。『化ける程度の能力』だ。それで敵を倒せる奴に化ける。どうだ? 俺は外の世界から来たから正直この里には愛着はない。あんたらも俺のことを知らねえ奴が多いから俺が死んでも誰も悲しまない。乗ってみないか? 逃げたい奴は逃げればいい。そこにいる里長が先導すればいいだろう。この里を守るために戦いたい奴は俺のところに来い。ただし、武器は持参だ。」
今の俺を見たら慧音さんはびっくりするだろう。
こんな荒い口調を俺は滅多に使わない。
その時、誰かが笑いだした。
里長だ。
抑えるように笑う。
「ふっふっふっふっ…これは失礼、猫辰殿。しかし妖怪なんぞに化けられるあなたについて行くものなぞ誰もおりませんぞ。」
「それでもいいと思うぜ。」
そういうと俺は鬼に化けた。
「こんな鬼でもついてくる奴がいるならそいつは修羅だ。」
俺は低い声で言う。
その瞬間そらが笑い出した。
ころころと朗らかに笑う。
「どうした、そら? あの妖怪に何をされた?」
里長が慌てたようにそらを見る。
周りの連中も俺に完全に敵意をむき出す。
「いえいえ。たしかにされましたね。私を救うことを。」
そらは笑いながら言う。
「救う? 何を言っているんだ?」
「お父様、私が少し前に言ったことを覚えていますか? 路地裏に連れ込まれたと。」
「そのときに鬼に救われたと…まさか!?」
そらはそれ以上は言わずにただただ笑い続けた。
「鬼でもなんでもいい。来たい奴は来い。その場で命を散らす覚悟があればな。」
そういうと俺は力任せに集会場の扉を殴って破壊する。
木片が外にいた群衆にかすり傷を負わせる。
「どけっ!」
俺は走って逃げた。
途中で白狼天狗になると屋根に飛び乗る。
里を守る砦までくると俺は飛び乗り体を大きく伸ばす。
後ろを見ると目を光らせて追ってくる奴も里を守るためにやってくる奴もいなかった。
まあ、当然だろう。
護ると言っておきながらもさっそく集会場の扉をぶっ壊し、外にいた人間を傷つけたんだから。
そんなことを考えながら別の里の出入り口を白狼天狗の目で見る。
里長が砦の前まで誘導しているのが見えた。
凄まじいな白狼天狗の目。
それにしても無報酬でこれをやっちまう俺も本当にお人好しなのかね?
そんなことを考えながら俺は砦の中を漁る。
出てきたのは槍が35本、刀が23振り、弓が4つに矢が200本だった。
割と重装備。
それだけ妖怪なんかが襲撃しやすい場所なんだろう。
俺はそれらを使って作業を始めた。
「1人でこの里なんか守れねえよ。せめてトラップで足止めぐらいはしてやらねえと。」
こうして夜通し、とまではいかないが夜遅くまで罠を作り続けた。
すこし、感動を含みました。
感動したかどうかは別として。
あれ~、あまり悪役っぽくない…




