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セフィリア魔法学園補講① 魔法の基礎


 模擬戦を数日後へ控えたある日。


 午後の訓練時間。


 Uクラスの教室。


 ミレイアは教卓へ分厚い資料を置いた。


「今日は訓練中止」


 その一言で。


 カレンが露骨に嫌そうな顔をした。


「は?」


「模擬戦前よ?」


「今さら座学?」


「今だからよ」


 ミレイアは肩を竦める。


「君達、自分達が何をやっているか説明できる?」


 ルーク達は顔を見合わせた。


 否定できない。


 魔法は使う。


 共鳴も使う。


 でも理屈まで説明しろと言われると怪しい。


 ミレイアは満足そうに頷いた。


「だから補講」


「模擬戦前に整理しておきましょう」


 そう言って資料を配り始める。


 表紙には大きくこう書かれていた。



セフィリア魔法学園補講資料①


魔法の基礎



【魔力】


魔力とは、

生物が持つ生命エネルギーの一種である。


全ての魔法は、

この魔力を利用して発動される。



【魔力器官】


魔力は心臓付近に存在する

「魔力器官」へ蓄えられている。


魔力器官は、


* 魔力生成

* 魔力蓄積

* 魔力循環


を担う特殊器官である。



【魔力循環】


魔力は魔力器官から全身へ流れている。


流れは血液循環に近く、

全身を巡った後、

再び魔力器官へ戻る。



【魔法】


魔法とは、

自身の魔力を操作する技術である。


術式を構築し、

魔力を流し込むことで発動する。



【魔法発動の流れ】


魔法は以下の順番で成立する。



①術式構築



②魔力出力



③魔力制御



④魔力転換



⑤発動



術式構築


魔法の設計図を作る工程。


属性魔法において最も重要な土台。


一般的には魔法陣を構築することで行われる。



術式構築中は、

半透明の魔力によって術式が形作られる。


一般的な属性魔法では、

発動前の魔法陣が薄く可視化される。


この段階でも属性色は存在するが淡く、

輪郭だけが浮かび上がるように見える。



魔力出力


術式へ魔力を流し込む工程。


魔力量が多いほど出力上限は高くなる。



魔力出力が始まると、

魔法士固有の属性色を持つ魔力が術式へ流れ込む。


魔法陣は徐々に満たされ、

発光を強めていく。


発動前に見える魔法陣の輝きは、

この工程によるもの。



魔力制御


流し込んだ魔力を安定させる工程。


制御が乱れると、


* 術式崩壊

* 発動失敗

* 暴発


などが発生する。



魔力転換


魔力へ属性を付与する工程。


火・水・風・土などの属性魔法は、

この工程を必要とする。



発動


術式が完成し、

魔法として現象化する段階。


発動までにはラグが存在する。


強力な魔法や広範囲魔法ほど、

発動ラグは大きくなる傾向がある。



【詠唱】


詠唱は魔法を強化するためのものではない。


主な役割は術式構築補助である。



効果


* 術式構築補助

* 構築安定化

* 発動補助



術式構築が苦手な者ほど恩恵が大きい。



【短縮詠唱】


発動速度向上を目的とした技術。



術式構築そのものではなく、


発動時のラグ短縮に用いられる。



高火力魔法や実戦向け魔法士が多用する。



【術式簡略化】


術式構造を簡単にする技術。



利点


* 構築負荷軽減

* 習得難易度低下

* 安定性向上



欠点


発動時のラグが増加する。



簡単な術式ほど扱いやすいが、

必ずしも高速ではない。



【無詠唱】


術式構築補助を必要としない状態。



高度な術式理解と構築能力を要求される。



上級魔法士や一部の天才のみが扱う。



無詠唱だから強いのではない。



術式構築を補助無しで行えるため、

結果として高速発動が可能になる。



【Uクラス補足】


カレン


短縮詠唱を用いることで、

高火力魔法の発動速度を向上させている。



フィア


感知系魔法の安定化補助として詠唱を使用する。



シエル


術式構築補助を必要としないため、

基本的に無詠唱。



 資料を読み終えたカレンが呟いた。


「つまり」


「シエルがおかしいってこと?」


「普通」


 シエルが即答する。


「普通ではないわよ……」


 フィアが苦笑した。


 ミレイアは満足そうに頷く。


「ここまでは一般論」


「教科書にも載っている内容ね」


 そして。


 一枚だけ残された資料へ視線を落とした。


「でも」


「Uクラスには教科書に載っていない子がいる」


 ルークが視線を逸らした。


「逃げない」


「今日はちゃんと整理するわよ」



【補足資料】


無属性魔法


ルークが扱う無属性魔法は、

一般的な属性魔法とは異なる特殊体系である。



発動の流れ


①形状術式構築



②魔力出力



③魔力制御



④性質転換



⑤完成



形状術式


属性魔法が魔法陣を構築するのに対し、


ルークは


* 剣

* 障壁

* 足場


などの形そのものを術式として構築する。


これらは発動前の魔法陣ではなく、

術式そのものが実体化した状態である。



性質転換


ルークは属性転換を行えない。


代わりに、

無属性魔力そのものへ性質変化を与える。


現時点で確認されているのは、


固体化


のみ。


これによって、


* 障壁

* 魔力剣


などを形成している。



特徴


既存魔法体系には存在しない。


一般魔法士には再現不可能な特殊技術である。



 ルークは資料を見つめた。


「こうして書かれると」


「本当に変なんだな……」


「変」


 シエルが即答する。


「そこは否定しなさいよ」


 カレンが呆れたように言った。


「今日はここまで」


「次は魔力について整理するわよ」


 こうして。


 模擬戦前最後の補講が始まった。



次回


セフィリア魔法学園補講②


魔力と戦闘

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