第三十四話 「不穏な予感」
※本作はオリジナル作品です。
※BLゲーム世界が舞台ですが、女性主人公視点で進みます。
※新作準備のため次回の更新は未定になります。
翌日。
結局、昨日はあのまま雅ちゃんと不穏な空気のまま別れてしまったきりだった。
せっかくのお出かけを、台無しにされた感覚は否めない。
——平穏とは、長く続かないものである。
教室へ入ろうとした、その時だった。
開けようとした扉が、外側からぴたりと押さえられる。
嫌な予感がした。
ゆっくり視線を上げると……
そこには、できれば見たくなかった男が立っていた。
「おはようさん、鈴乃はん」
(……なんでいるのよ!?)
「お、おはようございます……」
昨日あんなことがあったばかりだ。
私は恐る恐る挨拶を返す。
「そない警戒せんでもええやろ」
「……」
「何も、取って食うたりなんぞせぇへんよ。
人をなんや思てはるん」
悪いけれど、本当に信用できない。
そんな態度が伝わったのか、彼はにやにやと笑い始めた。
そして彼は、この学校の生徒会長だ。
それは、つまり——
その姿を見つけた女子生徒たちが、
たちまちざわつき始める。
さすがは、攻略対象というべきか。
……性格はさておき。
「そういうわけでは……
人も集まってきたことですし……」
私がやんわり距離を取ろうとすると、
彼は肩をすくめた。
「そやな。
なら、単刀直入に言わしてもらいますわ」
彼は、値踏みするように私を見つめた。
「……“生徒会”、入らへんか?」
「え」
「ほな、考えといて」
にやり、と笑う。
「どうせそのうち、入ることになるやろし」
そう言い残し、ひらりと手を振ってその場を去っていった。
私は、行き場を失った手を宙にさまよわせたまま、しばらくその場から動けなかった。
……生徒会に入ることになる。
あの男は、確かにそう言った。
どういう意味だろう。
生徒会には、白水もいる。
そこへ自ら飛び込む行為は、まるで飛んで火に入る夏の虫である。
万が一を考えれば、入らないのが賢明である。
それなのに——妙に胸騒ぎがする。
私は小さく頭を抱えた。
すると、その時だった。
ふわり、と。
どこか甘く、心地のよい優しい香りが鼻先をかすめる。
次の瞬間、聞き慣れた声が降ってきた。
「鈴乃、お久しぶりです」
顔を上げる。
そこには——うゆくんがいた。
(……え?)
あまりにも自然に現れたせいで、
一瞬、私の願望が生み出した幻覚かと思ってしまった。
うゆくんはここしばらく、お父様と忙しそうにしていて学校を休んでいたのだ。
(今日来るなら、朝に言ってくれれば一緒に登校できたのに……!)
心の中で盛大に悔しがる。
「顔色が悪いですよ?」
少し心配そうに、こちらを覗き込んでくる。
久しぶりの癒しの天才である。
「だ、大丈夫よ」
そう答えながらも、視線を合わせるだけで心拍数が上がる。
すると、うゆくんは少しだけ言いづらそうに視線を揺らし——
「あと……」
小さく、続けた。
「さっきの人が言っていた、生徒会なんですけど……」
「ええ」
「鈴乃が入ってくれたら、嬉しいなって思ってます」
「……え?」
思ってもみなかった言葉に、私は固まった。
生徒会に?私が?
しかも——うゆくんが、それを望んでいる?
「うゆくん、それってどういう——…」
問いかけようとした、その瞬間。
キーンコーンカーンコーン。
無情にも、予鈴が鳴り響いた。
うゆくんは困ったように笑って、教室の方へ視線を向ける。
「……続きは、またあとで」
唇に人差し指を当て、にこりと微笑む姿は反則級だったが。
そう言って去っていく背中を、私は呆然と見送るしかなかった。
……気になるに決まっている。
私の平穏は、今日も訪れないまま。
朝から完全に、振り回されていた。
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自分は地味に瀬屑くん推しです☺︎
方言って憧れます。




