第三十話 「傲慢」
※本作はオリジナル作品です。
※BLゲーム世界が舞台ですが、女性主人公視点で進みます。
※次回も三日以内に更新予定です。
「か、勘違い……」
雅ちゃんは目を丸くし、考え込む。
「そうよ」
「それでも……
勘違いだとしても……
彼があなたを好きなのは、紛れもない事実ですわ」
「え……」
「それに……
たとえ勘違いをしていなくとも、彼は……」
「……いえ、なんでもありませんわ」
そう言って雅ちゃんは、悲しげに微笑み、私に背を向けた。
「ありがとうございます。
ですが、もう大丈夫ですわ」
「私のことは私自身でなんとかしてみせます。
ですから、西園寺 鈴乃。
あなたもどうか、ご自身のことだけを考えてくださいまし」
正直——舐めていた。
当事者でもない私が、
たかだか会って間もない彼女を救えるだなんて——烏滸がましいにも程がある。
そう思わされるほどに、
彼女の後ろ姿は格好良かった。
彼女は確かに、“今”を生きていた。
私はそれと同時に、
尊大だった自分を、恥じた。
「………」
私は、言葉を紡ぐことができないまま——
彼女の後ろ姿を、見送ることしかできなかった。
頭が真っ白になり、しばらくその場で立ち尽くしていた。
けれど、すぐに我に返り、一度、白水たちの元へ戻る。
すると、なぜか野くんだけが気まずそうにしていた。
何があったのだろう、と疑問には思ったが、
どこかで聞いてはいけない気がして、口をつぐんだ。
そしてお茶会はそのままお開きとなった。
私もおとなしく帰路につくことにした。
家に帰って、考えをまとめたかったというのもある。
自室のベッドに寝転び、ぼーっと天井を眺めていると……
メイドの奈々が話しかけてきた。
「鈴乃お嬢様……どこかで良くないものでも食べましたか?」
どうやら、私は拾い食いをするような子供だと思われているらしい。
「………」
奈々はじっと私を見つめている。
「それでお嬢様、何があったんです?」
……やっぱり、お見通しらしい。
奈々は昔から私に悪態はつくものの、
私のことをよく理解してくれている、唯一の人だと思っている。
「その……実は……」
気づけば、全てを熱く語ってしまっていた。
何回かは微妙な顔をしていたので、恐らくオタクは出てしまっていただろうが。
この際、それは仕方ない。
奈々は私の話を真剣に聞いてくれた。
それだけで、十分に心が楽になる。
やはり、持つべき者はメイドだ。
そんな風に噛み締めていると——
珍しく、奈々が優しい口調で話し始めた。
「鈴乃お嬢様……
貴方様がそうやって誰かを思いやることに意味があるのですよ」
「誰かを救いたいだなんて、たとえそれが傲慢だとしても。
“そう思ってくれている人がいる”——
それだけで、案外十分だったりするんですよ」
「それが、その……雅ちゃん?という方に伝わったかは分かりません。
ですが、少なくとも——あれだけわがままだったお嬢様が、ここまで誰かを思いやれるように……なるなんて……」
途中までは、確かにいいことを言ってくれていたはず……なんだけど。
……なんだろう、この気持ち。
奈々は感動しているのか、馬鹿にしているのか、まったくもって分からない。
……涙、出てないし。
恐らく、後者の可能性が高い。
でも、奈々の言葉は——
私の心に響くには、十分すぎるほど、優しく心地のいいものだった。
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世の中伝わらない事の方が遥かに多いように思いますが、人を思う気持ちは尊く貴重な宝物だと思います☺︎




