⁑それぞれの高揚の夜に
「じゃあ、おやすみなさい…」
「おー、おやすみカジミア〜」
カジミアに送られて、自分の工房に戻ったキーファーは、とりあえず水をガブガブと飲んでから…ドサッとベッドに倒れ込んだ。
「ふうー」
そんな彼の胸元で…青い炎が、少し心配そうに、ユラユラと燃えていた。
「大丈夫だよ…テディ…」
キーファーは、呟きながら、その炎に手を翳した。
(全然大丈夫じゃない大丈夫じゃん…)
テディはそう思っていたに違いなかった。
「愛してるよ…」
(……っ)
(全く…酔っ払いのオッサンはしょうがないなー)
と、恐らく思っているであろう青い炎は、ユラユラと大きく燃え広がり…キーファーの身体を優しく包み込んだ。
「…ん…」
青い炎に覆われた彼の身体は…また自身からも、ユラユラと陽炎のように、白い湯気のような光を湧き出させていった。
「…テディ…」
キーファーが、強く思うほどに…青い炎が、だんだんとひとつの形になっていった。
それはまるで、妖精のように美しく透き通った…テディの姿に他ならなかった。
2人の放つ青と白の光が…グルグルと混ざり合い…それは大きな輝きとなって、暗い部屋を明るく照らしていた。
目を閉じたままのキーファーは、テディがそんな風に、形を成している事に…残念ながら気付いていなかった。
ただ、自分を包み込む…テディの温かくて柔らかなコアの感触に…彼はいつまでも溺れ、浸っていた。
(……)
こんな風に、幾度もコアを溶け合わせるうちに…
もしかしたら、また…本来の姿形を、取り戻せる日が来るのかもしれない…
いや…そんな高望みをしてはいけない
こうして、再びキーファーと触れ合う事が出来るようになっただけでも、十分感謝しなくちゃ…
そんな風に思いながら…青い炎は、キーファーが眠ってしまったのを確認すると…スーッと小さくなって、再び彼の胸元に吸い込まれるように消えていくのだった。
「今日は…楽しかったね」
「うん」
一方で…ジョシュアは、レオの部屋のベッドにいた。
2人は、手を繋いで並んで横になっていた。
「あのお酒…美味しかったなあー」
「もうー飲み過ぎだよレオ…また傷口が開いたらどうしよう…」
繋いだ手に力を込めながら…ジョシュアは心配そうに、レオの方を向いて言った。
「大丈夫…」
レオもジョシュアの方を見た。
「開いたとしても…またジョシュアが治してくれるんでしょ」
「…っ」
レオは、繋いだジョシュアの手を自分の口元に持っていくと…そっと口付けた。
「……!」
ジョシュアは、顔を真っ赤にして…目を伏せた。
「このケガのおかげで…ジョシュアとこんな風になれたんだもんな…」
「…」
「ケガに感謝だよ…」
「…そこまで言うか」
照れ臭そうに、少し言い辛そうに…
ジョシュアは続けた。
「…なあ、レオ…俺たちも…強くなれるのかな?」
「…?」
「カイトとリューイ…みたいにさ…」
「それって…」
レオは、言いながら…グイッとジョシュアに擦り寄ると、彼に顔を近付けながら、囁くように言った。
「コアを…交流させてみる?」
「……ん」
更に真っ赤になりながら、小さく頷くジョシュアに…レオは、ゆっくり…そっと口付けた。
「…っ」
「…んんっ…」
2人のコアが…くちびるを伝って、それぞれの身体へと流れ込んでいった。
ほどなく、2人の身体は…
陽炎のような、淡い光に包まれていくのだった。
そんな風に…皆それぞれが、その日の宴を思い返しながら、穏やかに眠りについたであろう夜のことだった。
ふと気付くと…
僕は、また暗闇の中にいた。
えっ?
…あれっ?
それは…以前にも体験した感覚だった。
目も開けられず、指先ひとつも動かせない…あの、身体だったのだ。
えっ…何で…?
僕は、必死に身体中に力を込めてみた。
でも、それは…全くの無駄な努力に終わった。
どういう事?
また、地球に戻っちゃったの!?
それとも…夢なのかな…
夢なら早く醒めなければ…
そう思うものの、寝るとか起きるとか…そういう感覚さえも曖昧なほどに、身体が動かないのだ。
何で、どうして!?
何が起こったんだ?
また誰かに、身体を乗っ取られちゃったのか?
僕は、その…全く動けない身体のまま…
暗闇の中で、色々な思い巡らせた。
一体、いつまで…このままなんだろう…
もう、あっちの世界には戻れないんだろうか…
すっかり、果てしない気持ちになったとき…
「氷威…おはよう…」
聞き覚えのある声が聞こえた。
そして、誰かの手が…僕の顔に触れた。
ヒロだ!
すぐにわかった。
ほどなく…彼は、僕の手を握った。
「聞こえる?…」
聞こえるよー!!
僕は力の限りに念じてみたが…それを、彼に伝える手段が、ひとつも無かったのだ。
「もしかして…戻ってきてる?」
!!!
知ってるんだ…ヒロは。
そうだ、だって…あっちの世界を創ってるのは、ヒロなんだもの…
って事は…
ヒロの采配次第で、僕の運命は決まるって事だよな…
あっちの世界に戻るか…
このまま、この身体で地球に居残るか…
僕は再び、力の限りに念じた。
戻ってきちゃったよー
ヒロ…お願いだから、早く帰してー!!
もちろん残念ながら…
これっぽっちも、伝わりはしなかったのだが…




