12 昔のこと
12 昔のこと
宇宙怪獣は、そこで昔を思い返す遠い眼差しをする。
「そこは、オレさまにとって最初のパラダイスだった。が、そこにはオレさま以外、だれもいなかったのだ! たったひとり。広い惑星に、たったひとりきりだ。……もちろん、その惑星は、さすがにオレさまの生まれ故郷だけあって、おいしい食べ物が豊富にあった。当時、オレさまが大好きだった火山の溶岩だとか、コバルトの岩石などが豊富だったのだ。……だがひとりは、やっぱり淋しい。そこで、オレさまは旅に出ることに決めた。オレさまにできるのは、何も、ただ喰い意地をはり、ガラクタをハラにつめ込むことばかりではない。オレさまは、また芸術家でもあるのだ。ああ、おまえたちに、オレさまの造った溶岩の彫刻やレリーフを見せてやれたらなぁ……。だが世間の風は冷たかった。怪獣とは、しょせん怖がられ、恐ろしがられる宿命を背負った生きものだからだ。オレさまが最初に訪れた星の住民は、オレさまを見て怖がったよ。今考えてみれば当たり前だが、当時、若かったオレさまは非常にショックを受けた。……それ以来、オレさまは自分の生きがいを喰うことのみに限定したのだ。とにかくオレさまはいつでもハラをへらしている。そして喰うことが大好きなのだ。……さて、よく聞け、坊主たち。オレさまにとって、それが人生というものなのだ!」
そして、なんでもたべちゃゴンは心の中ですばやく続ける。
(あのとき――たしか、リゲルKS星とかいったな――あの星の科学者がオレさまを退治しようとまっ黒い何かを、このオレさまに投げつけた。さいわい、すばやくそれを飲み込んだオレさまには、これといった害は出なかったが、それ以来、前にもましてハラがへるようになったんだっけな)
「でも、だからといって他の星の文明を破壊していいってことにはならないでしょう?」
小さな男の子が質問する。けれども男の子のその言葉は失意の宇宙大怪獣=なんでもたべちゃうゴンの悲しげな目の色の前に虚しく消えるだけだ。
「うるさい! とにかく人生とはそういうものなのだ。それにオレさまは、もう最初の生活に戻りたくはない。さまざまな星の住民のオレさまに対する反応が、たとえただの畏れであったにせよ、それでもひとりぼっちよりはずっといい! ……以上、説明終わり!」
そのとき遥か上空から紫色のビームが音もなく大怪獣めがけて飛んでくる。
なんでもたべちゃうゴンはすばやく上空を向くと、カメレオンのように長くてしなやかな舌をキラリと輝かせ、ついで舌の先端についた受光性の吸盤でビームを吸いとり、一瞬のうちに、それを向かってきた方向に投げ返す。約○・一秒後、そのレーザービームを照射した地球周回軌道四万キロを巡っていたアルシア国の無人軍事衛星が木端微塵に吹き飛ばされる。その耕那、衛星が破壊されたオレンジの炎が小さな点となり、空の向こうでピカリと光る。
「おしゃべりは終わりだ。おまえたち子供がオレさまのことをどう思うかは知らないが、大人たちは、やはりオレさまのことが怖いようだ。だから、さっさと帰れ! これから、もっと危なくなるぞ!」
なんでもたべちゃうゴンは最後にそういい残すと、男の子たちに背を向け、ズシンズシンと歩み去る。




