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樹海の獣

 車に揺られ数時間が経つと富士山の麓が見えてくる。ゆっくりと麓に入ると急に林へ突っ込み停車した。

「うわぁぁああ!?」

「大声出してどうした?」

「どうしたじゃないです! 何でこんな所に突っ込んでるんですか!?」

「こっちに停めた方が近いんだからそうするのが普通だろ? とりあえず降りるぞ」

 常識から外れた答えに辟易しながら寝ていた真浦を起こし車から降りる。外は凍てつく風が吹き、その寒さに思わず身を震わせる。

「思ったより寒いですね」

「まぁこの時期だから仕方ないな」

 森の奥へ進んでいくと何処からか何かが這い回る音が聞こえ、次第にそれが近づいてくる。

「おっと、早速お客さん来たみたいだぜ?」

「アラアラ、コレハナカナカカワイイボウヤジャナイ?」

 四足で動く異形の存在は朔玖を視界に捉えると目を輝かせて物凄い勢いでこちらに近づいてくる。その顔はけばけばしく蜘蛛のような複眼が見られる。

「言葉を発した? 理性があるって感じじゃないが特異個体か? これなら割と近くにあるかもな」

「なんだコイツは? 気持ちの悪い姿をしやがって……男を辞めるようなやつは生かしておけない! こいつは俺様がやるから朔玖と律は刃核(アルマアニマ)を探しにいけ!」

「そうか? お前と大して変わらねぇ気がするけどな」

「任せました……」

 心做しか朔玖の顔は青くなっているが、ホモとオカマから狙われていたらそうなるのも無理はない。

「ナァニ……コノムサイオトコハ! ジャマヲスルナ!」

「俺様にそんな小さなブツじゃ締まりが悪いぞ!これでも喰らえ!」

 四足歩行のオカマが隠されていた腕で真浦に鋭い一撃を放つ。それを平然と受け止めると筋肉を肥大化させてお返しとばかりに正拳突きを繰り出すが少しカスった程度で直撃はしない。

「ソンナキタナラシイモノデワタシニフレルナ!」

 腹部についた腕を真浦の身体を撫でるようにオカマが動かすと真浦の身体に赤い線が入り血が飛び散る。

「ほぅ、オカマにしては今のは良かったぞ? その調子でどんどんこい!」

「ハヤクソコヲドケ!」

 挑発した瞬間に飛び込んできたオカマの牙が真浦に突き刺さる。

「はぁはぁ、こいつはいい感じだな……もっと俺様を熱くさせてくれ」

「やっぱりこいつを連れていくのは間違いだろ……? 朔玖もそう思うよな?」

「そうですね……気持ち悪いですし……」

「とりあえず見ていても仕方ないし先にいくか」

「わかりました」

「アァ、ワタシノオウジサマガイッテシマウ……アンタホントニジャマナノヨ!」

「そんなつれないこと言うなよ? もっと俺様と楽しもうじゃないか!」

 律と共に先へ向かい辺りを探すがそれらしきものの影すら見当たらない。そうしている間にも後ろからは轟音が鳴り響いて背後が気掛かりになり何度も確認してしまう。

「真浦が気になるのか? あんな変態でもうちではかなり強い方だからな」

「違いますけど……でも、相手も強いんじゃ?」

「あんなもん雑魚だよ雑魚。それにしても結構奥まで来たが、この辺りには何も感じないしこっちでは無さそうだな」

 そこに先程の化け物が凄まじい速度で吹き飛んでくる。化け物の身体は傷だらけで最早虫の息に等しい。

「コノワタシノウツクシイカラダガ……」

「俺様のブツはイイだろう? ほらほら、もっとお前の身体で受け止めてみろ!」

何度も真浦に突きを浴びせられ、遂にはオカマの身体を大きく穿つと目の輝きは失われ果てたように力尽きた。

「おい、この筋肉バカ……ッ! こんな雑魚に無駄に力を使い込んで任務の事は忘れてないだろうな?」

「俺様とした事が気持ち良すぎてすっかり忘れていた……少し身体の火照りを冷まさないとな」

「ちっ……本当に使えねぇな! 朔玖はこんな風になんねぇようにしろよ?」

「いや、なりようがないです……」

「そういえば、あっち側でヤリあってる最中に何かを感じたんだが、もしかして刃核(アルマアニマ)じゃないか?」

「もしかしても何もそれだろうがッ! 脳味噌筋肉で出来てんのかてめぇ! おい、急いで向かうぞ!」

 真浦の言った所に三人で向かうと僅かに何かを感じるような気がする。

「確かに気配を感じるな……朔玖と真浦もどっち側が反応が強いか確認してくれ!」

「こっちじゃなさそうですね」

「うーむ……この辺りだろうか……おぉ!? キタキタキタァァァアアア! こっちでビンビンに感じるぞ!」

 真浦の方に寄ろうとした時にふと探知機に目がいく。レーダーには近くに赤い点が三つあり、そこへ無数の赤い点が近づいてきている。

「律さん、レーダーに反応がッ!」

「数はどのくらいだ?」

「えっと、わからないくらいたくさん!」

「団体様にしてもちっとばかし多すぎやしねぇか? 朔玖、はしゃぎ過ぎて死ぬなよ?」

「死ぬつもりはないですよ!」

「雑魚でもこの量ならいい運動になりそうだな!」

 やけにいかつい化け物の群れが木々の隙間から続々と姿を現す。

「ホルホルホォオオオオオオ」

 群れの中でも一際大きい者が雄たけびをあげて朔玖に向かってくる。それを朔玖は横に軽く避けて顔を思い切り蹴飛ばした。すると、呆気なく地面に倒れぴくりとも動かない。

「おぉ、雑魚とはいえ一撃で倒すとはなりたての割にやるじゃないか朔玖! むっ、その程度の数で俺様に挑むとは竿竹(さおだけ)で穴を突くほど無謀な事だぞ!」

 朔玖の戦いを見ていた真浦をいつの間にか二桁に近い数の化け物が取り囲み襲い掛かるが、それに対して真浦が腕を振り回すだけでその半数は吹き飛び動かなくなる。残ったものが警戒しながら死角からの攻撃を試みるも真浦に効いてはいないようだ。

 更に律が攻めてこないものを逆に襲い、思うがままに暴れるとほとんどが物言わぬ屍と化した。それを見て朔玖も負けじと化け物を次々と仕留めていく。

「やっと終わったか。それじゃ目的のもんを探すとするか」

 戦闘が終わり一息つくと一同は強く共鳴した方角へと歩みを進めた。

Data

Unknown 終人

Age Unknown

Blood AB

Capa 420

Speed 500

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