出会いの日 5-A
一通り家の案内を終え、少しだけ僕の話をした。まさか転生してきたとは言えないから、その辺は誤魔化して、言える範囲で……
僕の耳も見せておいた。僕の頭から生える、犬みたいな耳。
僕の見た目がほとんど決定したときに、“声”がなんだかテンションが上がっちゃって、
「お前さんケモ耳絶対に似合うからっ! ケモ耳付けてみてっ! おお、さ、最高…… よしそれつけるのは強制じゃ。心配するでない、オプションで完全収納可能にしとくからの、獣人差別がある世界でも問題なし! ただし収納中はケモ耳の聴力はゼロになるからの、ヒトの耳も外さんでおくぞ」
うん、よく覚えてる。まあ実際犬耳はすごい聴力で、4つの耳から音が聞こえてくるのもすぐに慣れた。けどやっぱり目立つからね…… しばらくしたら、ほとんどずっと収納しっぱなしになっちゃった。
僕は使っていない寝室の一つに、お掃除用の魔導機構を走らせておいた。これも僕がクラフトしたんだよ。僕が元いた世界にあった、床を掃除する小さいロボットに似せて…… 掃除はほとんどしてなかったけど、入ることも全然なかったからそこまで汚れているわけでもない。とりあえず今日のところは床だけで大丈夫だろう。
夜になって、ここをユキの部屋にしていいと言うと、案の定ユキは驚いていた。
「私にこんな立派な部屋を……!? ここは家人のための寝室ではないか……」
「部屋ならいっぱい余ってるから、気にしないで。もし他の部屋が良ければそっちでも」
「いや、いや、私はどこでもいいんだ。奴隷にこんな部屋を与えてくれるなんて、感謝しかないよ……」
「そ、そう……? じゃ、じゃあ後は好きにしていいから…… また明日……だね……」
ちょっと大げさだったけど、感謝するなんて初めてユキから聞いて、なんだか落ち着かない。僕はさっさと部屋から立ち去ろうとした。
「……?」
「じゃあおやすみ」「ま、待て……!」ユキに呼び止められた。
「お前、その…… 私を抱かないのか……!?」「えっ!?」
僕は思わず変な声が出てしまった。抱くって…… いや、確かにそれは少し…… いや大いに考えていた。だって奴隷を買おうと思ったのは、本当はそういうことがしたくてしたくてたまらなくて、けれどそんなこと出来る相手はいなかったから…… 思いついたのが奴隷だった。けど実際にユキを目の前にしてみると無理やりする気にはなれなくて、意識しないようにして……
「そんなことしないよ!」思わず僕は言ってしまった。嘘だ。本当はしたい。
「アルト…… ありがとう。私は幸せ者だな……」
ユキは泣きそうな顔で、僕はびっくりして、いたたまれなくなって、今度こそおやすみを告げて、ロボットを回収して逃げるように部屋から出た。
自分の部屋に向かう。僕は……むらむらしていた。




