第十五章 嵐の前
ライメイはテキパキと仲間に指示を与え、ライメイと一緒にきたメグと言う人がレキの様子を見ていた・・・・。
しばらく車で走り、着いた先は以前は町だった場所のようで畑の跡、あっちこっちに建物の残骸がある。
「シン、こっちだ」
崩れた部屋の壁を退けると地下に続く扉・・しばらく細い階段を行くといくつか部屋があった。
一つの部屋にレキを寝かせ、メグはしばらくレキの様子を見ていたが・・レキの呼吸が安定すると後ろで黙っていた自分に声をかける。
「シンだっけ?そんなに深刻な顔しなくても、大丈夫よ・・前の傷は開いてるけど、レキの事だし支障は無いわ・・・じゃ、何かあったら呼んでね」
メグが部屋から出て行と、シンはレキの腕を見る。前に傷を負った腕は、まだふさぎきってない・・そっとレキに触れてみる・・。
「何で無茶ばっかするんだよ・・・・」
安定したとは言え、触れた腕はまだ熱っぽく短く呼吸を刻むレキに文句を言いたくなる・・・。
でももう一つ、前に聞こえた声が気になっていた。
「聞こえない・・・・やっぱり空耳だったのかな・・」
「何が、空耳だって?」
「レキ!大丈夫なのか!?」
いつの間にか起きていたようでゆっくりと瞳を開け、傍にいるシンを見つめる。
「・・・・ココは?」
「ロウスの近くの町・・レキ、何か覚えてる?」
「・・・いや・・」
「そっか・・・でもレキ起きてくれて良かったよ、ほんと驚いたんだからな・・」
レキは謝罪の言葉は発しなかったが、クシャっとシンの髪をなでる。
色々聞きたいことはたくさんあったが、具合の悪いレキにあれこれ聞くのはっとためらっているといつもの調子でライメイが顔を出す。
「お取り込み中悪いが、レキちょっと来てくれ」
しかたなくレキについてライメイの方へ移動するとメグや他の人たちも集まっていた。
「これだ・・シンがいた所の書類と、今の新政府の勢力図だ」
新政府の役人の半数以上は前の政府上がり・・特に、複数のガーディアルはその指揮下に置かれている状態。
「これじゃあ、悪事もやりほうだいってわけだな」
おもしろおかしく言うライメイに、メグは少し溜息を付いてからレキを見る。
「案外落ちぶれるのは早いわね・・・・」
新しいものもいつかは、古いものとなる・・そして人々は再び古いものを排除し新しいものを欲する・・それの繰り返しだ。
「レキ、俺達はこれに記されている所を行ってみようと思う」
ライメイが言うのは、シンが捕まっていた場所で見つけた書類・・旧軍の施設。
「まだあんな場所がありそうだしな・・」
「レキはどうするの?」
メグがレキの方を見ると、他の者達もレキの方を見た。レキはしばらく黙ったまま、書類を眺めていた・・そして口を開こうとした時。
『・・・キ・・レキ・・』
『聞こえる・・け無い・・』
『・・せぇ・・これで・・大丈・・夫なハズ・・』
「・・ギル?」
レキはポケットからベルトが壊れた時計を取り出す。これは前に機械いじりが好きなクラスメイトから、俺達4人はこれを貰っていた・・。一見普通の時計に見えるが、色々便利な機能がついている・・今使っているこの電話の様な機能もそれの一つだったはずだ。
『レキ!?ほ・・ら!やっぱ・・り通じた!』
「どうした?」
『動きだした!・・ガーディ・・アル、政府達も動き始めたみたい・・』
どうやらギルが言おうとしているのは、ガーディアルを含めた政府が何かしらの動きを見せたみたいだ・・。
「ギル、今どこにいるんだ?」
『・・俺達は・・ガーディアルを離・・れてる!今は・・シリウスに向か・・てる・・』
それを聞いたレキははじかれたように顔をあげて、シリウスに向かうと一言言って慌ただしく用意を始める。
「そんじゃ、一応決定か~皆用意してくれ!!」
「シン、行くぞ」
シンはレキに何も聞かず、用意された車にレキと2人乗り込む。
「・・何も聞かないのか?」
「・・・レキはずるい・・レキは何も語らない・・けど、俺や他の人達には聞く・・それって何かずるい気がする」
シンの言葉にレキはしばらく黙ってこっちを見る。俺はその視線に負けそうになりながらもレキの方を見る。沈黙がお互い続いているとレキが口を開く。
「・・本当は俺自身もわからないだ、俺はどうしたいのか・・どうするべきなのか」
「言っとくけど!俺は自分で決めてここにいるんだ、だからレキはもっと俺に頼ってもいいんだぞ!!」
っといつも足手まといになっているのに偉そうに言ったあとチーンと固まっていると、珍しくレキが笑った。いつもの少し悲しげな影がある笑顔ではなくて・・・俺はそれだけで嬉しい気持ちになった。
「あ゛!レキ今笑っただろ!!」
「そうか?」
何事も無かったかの様に、レキの表情はいつもの顔に戻っている。
「絶対笑った!レキいつも無表情だからさ、レキって表情あるのか気になってたんだ~うん!時には笑った方がいいよ!」
「・・・じゃ、行くか」
「うん、どこへでも行っってやる!!」
レキの事は気になる。けれど今はただレキが少しでも自分の背負っているものを一緒に支えられたらって思う。とりあえずやれるだけやってみようと一人こぶしを握りしめ誓ったシンだった。
「お久しぶりですね・・・ガーディアル理事長様・・・」
映像に写る男は、偉そうに椅子に腰掛け、腕組をしている人物。
「いえ、今はこうお呼びした方がいいですかな?・・政府特別指揮官長様」
【政府特別:新政府が裏向きに作られた部署。旧政府の者達が多く集まっており、武器なども多く所持し新政府と口論が耐えない。】
「お前こそ何を考えているんだ?・・シト」
シトと呼ばれた男は怪しい笑みを浮かべている。
「それはもちろんレキ・D・キサラの捕獲でしょう?」
「まぁいい・・すぐにお前の面の皮など剥がせる・・今回の動きについて話に来た」
「では、やっと清浄なる世界を作るプログラムが?」
「そうだ・・詳しいことは後知らせる」
そう言うと、映像は切れた。
「ククク・・・これであの方の思う通りだな・・」
この時、俺は何も知らなかった・・・。
そしてレキ自身も気づいていない・・本当の意味を・・。
それは・・俺達をどこへ導いていくのか・・。
「シン見えたぞ、シリウスだ」
でも、俺達の思いより先に・・未来のプログラムは決まっていたのかもしれない・・。
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