表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレイブ・クロニクル・オンライン ~全員が捨てた初期職を7000時間やり込んだら、Lv1で最強になっていた~  作者: ぶらっくそーど


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

137/377

《聖王の涙》


 記憶を取り戻した住人たちが、カレンの周りに集まってきた。

 同時にシステムメッセージが全プレイヤーに表示された。




【──聖都ルクス復興イベント:記憶封印解除──完了】

【NPC記憶復元数:153/153──全住人の記憶が復元されました】

【聖都ルクスの信頼度:MAX】

【聖都の全施設が完全解放されます】



 メッセージがまだ続く。



【新規施設解放:ガルドの鍛冶工房──聖光武器の鍛造が可能になりました】

【新規施設解放:リーナの宿屋──完全回復+経験値ボーナス付き宿泊】

【新規施設解放:フィオナの花園──精霊強化素材の栽培が可能になりました】

【新規施設解放:聖都市場──ルミナリア固有アイテムの売買が可能になりました】

【新規施設解放:エリーのパン工房──全プレイヤーがパン焼きミニゲームに参加可能】




「施設が一気に解放された──!」

「鍛冶工房! 聖属性の武器が作れるのか!?」

「宿泊で経験値ボーナス!? 神じゃん!」

「花園で精霊強化素材が──ルーナちゃんとかセレスちゃんを強化できるのか?」

「パン焼きミニゲーム──えっ、パン焼けるの?」

「エリーさんの工房でパン焼き体験!? やりたい!!」



 プレイヤーたちが各施設に殺到し始めた。──だがその前に、カレンが広場の中央に立った。



「少し──聞いてくれ」



 騒ぎが収まった。住人百五十三人と、三百人以上のプレイヤーが、カレンを見ている。



「わたしは……千年前に、お前たちの記憶を奪った。お前たちの名前を。過去を。それは、王として最も許されない行為だった。だから……王をやめる。私はもう、お前たちの上に立つ資格がない。……ただの旅人に、戻る」



 住人たちがざわめいた。



「王をやめた!?」

「まあ、まあ。──カレン王って呼ばなくていいなら、楽だけどね」リーナが軽く言った。

「リーナ……もう少し空気を読んでくれ」

「千年も我慢していたんでしょう? これ以上我慢してどうするの。──おかえりなさい、カレン。それでいいじゃない」



 エリーが一歩前に出た。



「カレン……王でもカレンでも、あなたはあなたよ。わたしのパンを美味しいって言ってくれた人。それだけは、変わらないわ」



 ガルドが頷いた。



「俺の剣を褒めてくれたのはお前だ。王でも旅人でも、関係ねえよ。……それよりお前、千年間剣の手入れしてなかっただろう。あとで持ってこい、研いでやる」

「鍛冶師の最初の仕事が、私の剣の研ぎか」

「当然だ。王の剣は特別料金だぞ」

「王はやめたと言っただろう」

「旅人料金でいいか?」

「……頼む」



 フィオナが花束を持ってきた。



「カレンさん! お花どうぞ! おかえりなさいのお花!」



「……ありがとう。フィオナ」



 カレンが花束を受け取った。そして、泣いた。



「……泣いてるな」

「泣かせてやれ。──千年分だぞ」

「こっちまで目が痛い」

「ゲームで泣いてんの、俺だけじゃないよな?」

「お前だけじゃない。俺もだ」

「俺も」




 その時──新しいシステムメッセージが表示された。



【隠し実績解除:「聖王の帰還」】

【聖都ルクスの記憶封印を完全に解除し、聖王カレンを大聖堂から解放した】



【報酬:称号「聖都の恩人」(全参加プレイヤーに付与)】

【報酬:聖光の祝福(全ステータス+5%・聖都滞在中永続)】




「実績解除きた!」

「全参加プレイヤーに称号──!?」

「友好度レイドに参加した人全員が対象か!」

「聖都の恩人……いい称号だ」

「全ステ5%バフ! 聖都にいるだけで!?」

「聖都に住むわ。引っ越すわ」

「引っ越し先がゲームの中って何だよ」



 泣いているカレンの横で、プレイヤーたちが実績解除に沸いている。




「泣いてるところ悪いんですけど、カレンさん──鍛冶工房いつから使えますか!?」

「今泣いてるんだ。少し待ってくれ」

「あ、すみません」

「いや……いい。鍛冶工房はガルドに聞け」

「泣きながら対応してくれるのか……さすが元聖王だな……」



 タマキが横でハンカチを差し出した。



「カレンさん。──はい、これ」

「……すまない。千年ぶりだったから──我慢の仕方も忘れた」

「我慢しなくていいですよ。泣きたい時に泣けるのは、元気な証拠です」

「薬師の君にそう言われると、安心するな」




    ◇




 聖都は大変なことになっていた。


 鍛冶工房にプレイヤーの長蛇の列。ガルドが「一人ずつだ!並べ!」と怒鳴っている。

 宿屋にチェックインの行列。リーナが「満室よ! 増築するから待って!」と叫んでいる。

 花園にプレイヤーが殺到。フィオナが「お花踏まないでー!」と泣きそうになっている。



 そして、パン工房。



「パン焼きミニゲーム、楽しい!」

「俺のパン焦げた」

「わたしのは生焼け……」

「エリーさんの指導が丁寧すぎて感動する」

「エリーさんに褒められた……嬉しい……」



 NPCが記憶を取り戻したことで、聖都が「生きた街」に変わった。住人がそれぞれの仕事をし、プレイヤーと交流し、クエストが発生し、施設が稼働する。──VRMMOの理想郷だ。




 フォーラムも活況を呈していた。




【速報】聖都ルクス完全復興! 全施設解放! 神アプデ!



 ──「鍛冶工房で聖光の剣を打ってもらった。ATK+800は破格」

 ──「宿屋の経験値ボーナスが地味にでかい。レベリングが捗る」

 ──「花園で精霊強化素材が取れる。これ、精霊持ちのプレイヤーには必須じゃないか」

 ──「パン焼きミニゲームが思ったより本格的で草」

 ──「エリーさんの親密度10にするとレシピ全解放されるらしい」

 ──「ガルドさんの親密度10で最上級武器鍛造が解放。これは聖都に通うしかない」

 ──「事実上、聖都がBCOの新しいエンドコンテンツの拠点になったな」




 また、別のスレッド。




 【感想】記憶封印解除イベントに参加してきた



 ──「NPCの名前を呼んだ時の表情変化、やばかった。プログラムとは思えない」

 ──「担当してた武器屋のガルドさんが、俺の顔見て『お前か。毎日来てくれてたな』って言った時、泣いた」

 ──「BCOのNPCはNPCじゃない。住人だ」

 ──「カレン王──カレンが泣いてるの見て、こっちまで泣いた。でもその横でセレスちゃんがパン食べてて笑った。感情が忙しい」

 ──「セレスちゃんは空気を読まないからな。そこが好きだが」




    ◇




 その夜。



 カレンが管理システムの設定を変更した。「常に昼」から「昼夜サイクルあり」に。

 ルーナの力ではなく、聖都の自然な夜が、千年ぶりに訪れた。

 空に星が浮かんだ。セレスの銀月ではなく──ルミナリアの本来の月が昇った。

 ルーナが影の外に出ていた。本物の夜なら、ルーナは自由に動ける。



「トワ、夜だよ! 本物の夜──!」



 セレスとルーナが、夜空の下で並んで飛んでいる。月と夜。銀色と紺色。

 プレイヤーたちも夜空を見上げていた。




「夜だ──聖都に、夜が来た!」

「星がきれい……」

「BCOの夜空、こんなにきれいだったっけ」

「昼しかない聖都しか知らなかったから──夜がこんなに良いものだとは」

「夜の聖都、雰囲気ありすぎる。窓に暖色の明かりが灯ってるの、最高だな」

「スクショ撮りまくってる」



 住人たちも夜空を見上げていた。千年ぶりの星。



「おばあちゃん。──空に星が戻ったよ……」フィオナが空に向かって呟いた。

 カレンが広場のベンチに座っていた。エリーのパンを齧りながら。

 隣にヴィアが座った。いつの間にかオアシスから来ていた。



「やっと出てきたのか」ヴィアがお茶を啜りながら言った。

「……来てたのか」

「手紙を渡したと聞いてな。──受け取ったか」

「受け取った。──千年前に書いた手紙を、千年後に」

「遅いにも程がある。──郵便局に苦情を入れるべきだな」

「この国に郵便局はない」

「ないか。じゃあ、旅人に感謝するしかないな」



 ヴィアがトワの方を見た。トワは少し離れた場所で、タマキと話している。夜空の下で。



「今回も良い旅人でしたね、トワさん」

「かなり作り込まれていたな……NPCが、本当に生きているみたいだ」

「みたいじゃなくて、本当に生きているのかも」

「だからこそ、歩きたくなるんだ。この国には、まだまだやり残したことがある」

「モンスター図鑑も、まだまだ空いてますからね」

「明日からまた歩いて行こう、少しずつ」

「はい……お供しますよ、どこまでもずっと」

「助かる。ありがとう、タマキ」

「どういたしまして」



 二人で夜空を見上げた。

 聖都に、千年ぶりの星が瞬いていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ