第44話 預言者
リベルバースの街。
早朝の大通りを、忙しなく人や荷馬車が行き交っていた。
帰途につく観光客や、仕入れのために出発する商人たちだ。
俺たちはカルダノ男爵領に向かうため、街を出ようとしていた。
そうして街外れに差し掛かると、一人の男の子が立っていた。
如何にも暗~い、陰鬱な雰囲気をまとっている。
「や……、やあ。」
男の子はぎこちない表情で、フレンドリーに挨拶してきた。
レインとベリローゼが、顔を見合わせる。
一度見かけているはずだが、なぜ声をかけてきたか理解できない、といった顔だ。
まあ、それは俺も同じだが。
「何か用か? ていうか、お前だけか?」
俺は周囲を見回し、あの騒がしい女の子がいないか警戒した。
俺のそんな様子に、男の子が愛想笑いを浮かべる。
「ピューリはいないよ。……その、内緒で来たから。」
ピューリとは、あの女の子のことだろう。
どうやら、女の子には内緒で来たらしい。
俺は男の子の前で立ち止まり、レインに目配せする。
「先に行っててくれ。」
「え……うん。」
レインとベリローゼは訝し気な表情をするが、素直に従った。
「それで、何か用か?」
「あ、ああ、うん……。その……お礼をね。」
「お礼?」
この男の子に、何かお礼を言われるようなことをしたか?
もしかしたら、大銀貨をあげたことか?
「ピューリを助けてくれただろう?」
「ああ……、そのことか。」
女の子に聞いた…………訳ではないか。
あの子は、ずっと気を失っていたはずだ。
てことは、傭兵の噂でも耳にしたか。
きっとメッジスとウラコーあたりが、酒場で塔での出来事を面白おかしく話しているだろうから。
「気にするな。ついでだ。」
「それでも、君が助けてくれただろう?」
確かに、最上階で鰐の魔物と対峙した時、俺以外の連中はあまり倒れていた女の子のことを気にしていなかった。
それは仕方のないことだと思う。
自分が生きるか死ぬかの間際にあって、他人のことまで気になどしていられないからだ。
俺もあくまで、可能なら助けてもいい、という感じではあったが。
ただ、俺は少々子供には甘いところがある。
大人なら自己責任で片付けるところを、相手が子供だと大目に見る傾向がある。
甘やかす、というよりは、懸命に生きているなら……ということではあるが。
「お前も兄なら、きっちり言って聞かせろよ? あんな所に忍び込むなんて、死にに行くようなものだぞ。」
「う、うん……分かってる。……でも、あんまり言うと怒るから。」
男の子は、女の子に怒られているところを思い出したのか、身震いした。
情けねーな、おい。
「大事な家族なんだろう? なら、言うべきことは言わなくちゃな。」
「大事な、家族…………うん。そうだよね。」
男の子は意を決したような、真剣な目で頷く。
だが、途端に情けない顔になって肩を落とした。
「でも、何て言おう……。ねえ、どう言えば聞いてくれると思う?」
「知らねーよ。」
見ているこっちの方が、情けない気分になってくる。
だめだな、こりゃ。
ピューリとかいう女の子は、【加護】持ちだった。
スリでも、ピューリが危険な実行役を引き受けているようだし、男の子は肩身が狭いのかもしれない。
「……俺が言えた義理じゃねえけど。いつまでもスリで食ってくのも限界があるぞ?」
裏社会にどっぷり浸かって生きていくのは、さすがに避けてもらいたいと思う。
だけど、あまりそれを言うこともできない。
他に稼ぐアテがあるなら、初めからスリなんかやっていないだろうから。
この兄妹も、懸命に藻掻きながら生きているのだ。
他人の俺に言われなくたって、きっと本人たちが一番よく分かっている。
男の子が、じっと俺を見つめる。
「君は……強いね。」
そんなことを、ぽつりと言った。
「別に、強い訳じゃないさ。」
「そんなことないよ。傭兵としても、立派にやってるし。」
男の子が、羨望の混じった眼差しを向けてきた。
「強い訳じゃないんだ。ただ、取り戻すために必死なだけで。」
「…………取り戻す?」
まあ、これを説明しても仕方ない。
それに、取り戻す、なんて。
それが夢物語であることは、誰よりも俺が一番分かっていた。
「俺はただ……、必死になって頑張ってるだけさ。」
そう言って、男の子の肩をバンと叩いた。
「お前も頑張れよ。大事な家族を守りたいんだろう?」
「う、うん……!」
少々頼りないが、男の子が口を強く引き結んで頷く。
それでも、その目にはしっかりとした意思が宿っているように見えた。
「ありがとう、頑張って見るよ。」
そう言って、男の子が手を差し出してきた。
「僕はセステバラン。良かったら、君の名前も教えてくれないか。」
だが、俺は目を瞬かせて、セステバランと名乗った男の子を見る。
「それ、魂の名前か? 真実の名、とか。」
「何が? 普通に、僕の名前だけど……。」
どうやら、本当にこの男の子の名前がセステバランというらしい。
無駄に恰好いいな、おい。
厨二病のくせに。
俺はセステバランの左腕に巻かれた、ボロボロの包帯を指さす。
「別に、怪我なんかしてないんだろう? 取った方がいいぞ。」
「こここっ、これは、たたたたた大切な封印で……!?」
俺が包帯について突っ込むと、セステバランが途端にきょどり始めた。
だから、その設定やめろや。
俺はセステバランの差し出した手を取り、ちょっと本気で力を込める。
だが、意外にもしっかりとセステバランは握り返してきた。
思ったよりも、握力はあるようだ。
「意外に力あるじゃないか。妹を守りたいなら、変な設定をやめて真面目に鍛えた方がいいぞ。」
「だから、そのっ! 設定じゃないし!」
ムキになって反論する、セステバランの手を放す。
「俺はリコだ。傭兵をやってる。お前は?」
「……………………無職、です。」
まあ、そうだろうな。
「次に会う時があるか分からないが、それまでには何か名乗れるようになっているといいな。」
叶うのであれば、少しでもまともな職に就いていてもらいたい。
それが、この国ではとても大変なことは、十分に分かってはいるけど……。
そこで俺は、一つ思いついたことがあった。
「そうだ。ちょっと待ってろ。」
「……へ?」
そう言って俺は、魔法具の袋から紙とペン、インクを取り出した。
周囲を見回し、台になりそうな物を探す。
しかし、生憎とこの街の建物は石や土で作ったものばかりで、木の板なんてほとんどない。
仕方なく、俺は近くの酒場に入った。
夜通し飲んでいるような連中がいるため、まだ開いている店はいくつもある。
カウンターに銀貨を一枚置き、適当に飲み物を頼む。
そうして、カウンターでざっと手紙を書く。
届けられた飲み物を一息に飲み干し、俺は酒場を出た。
セステバランは、律儀に待っていた。
俺は、今書いた手紙をセステバランに差し出す。
「もし、まともに生きるつもりがあるなら、帝都に行ってみろ。」
「はい!? 帝都っ!?」
訳が分からず、セステバランは素っ頓狂な声を上げる。
俺が書いたのは、商人のモルマバ宛の手紙だ。
それなりに稼いでいるようだし、新しく店を増やすことも視野に入れていた。
俺の紹介でどこまで通用するか分からないが、「近いうちに顔を出すので、それまで頼む」と書いておいた。
「絶対とは言えないが、もしかしたらその手紙を見せれば雇ってもらえるかもしれない。」
俺のことを、雇ってもいい、と言っていた。
どこまでアテになる言葉かは分からないが、もしかしたら雇ってもらえる可能性はある。
俺は金貨二枚を取り出し、それもセステバランに押しつける。
帝都までは、俺なら八日くらいだが、子供の足だと十日以上はかかるだろう。
乗り合い馬車もお金がかかるし、旅支度もある。
少し多めに渡しておかないと、途中で行き倒れられたら後味が悪すぎる。
「絶対に行け、とは言わないさ。俺も保証ができる訳じゃないからな。それでも、もしかしたら何かが変わるかもしれない。……二人でよく考えてみてくれ。」
「リコ……。」
セステバランは、茫然とした様子で俺を見ている。
そして、しっかりと頷いた。
「分かった。ピューリと話し合ってみるよ。」
「ああ。」
俺はセステバランの肩をポンと叩くと、歩き出した。
「じゃあな。」
「ありがとう、リコ! 僕、頑張ってみる!」
俺は片手を挙げ、軽く振る。
これが、セステバランとピューリという兄妹のためになるか、俺にも分からない。
それでも、少しでもマシな生き方を選ぶ。
そのきっかけの一つになってくれれば、と思った。
出会って間もない、よく分からない子供に金貨を二枚も渡すなんて、自分でも気前が良すぎると苦笑してしまう。
だけど、この殺伐としたくそったれな世界で、俺もそれなりに苦労してきた。
そんな世界を懸命に生きる二人の兄妹のことを、俺は少しだけ気に入ってしまったのだ。
無責任にモルマバに押し付けてしまうことになるが、これで少しでも何かが変わってくれれば。
そんなことを思いながら、俺はリベルバースの街を出た。
街を出ると、少し先でレインとベリローゼが待っていた。
先に行けって言ったのに。
俺は空を見上げ、歩き続ける。
荒野に吹く風が砂を巻き上げ、秋晴れの空は少しだけくすんで見えた。
■■■■■■
【アウズ教の聖地、ステイル】
リコたちが、リベルバースの街を出てから数日後……。
帝都から、東に一日の距離にアウズ教の聖地がある。
聖なる存在。
聖なる御名を持つ、世界を統べる貴き神が最初に地上に下り立った地、とされる。
毎日数万人ものアウズ教の信者が訪れる、アウズ教の総本山である。
そうした信者たちでごった返すのは、巡礼用の施設だ。
聖地の大半は教会関係者しか立ち入りのできない場所であり、更に奥には誰も立ち入ることの許されない禁足地もある。
そんな禁足地の手前に、総大主教専用の礼拝堂があった。
ここで行われる儀式は秘中の秘であり、代々の総大主教だけが執り行ってきた儀式がある。
御神託。
神の意を授かるのも、そんな総大主教にのみ伝えられてきた秘儀の一つだ。
神の言葉を預かる者。
現総大主教のヤイヒムは、『預言者』として信者から熱狂的な支持を得ていた。
御神託を得る儀式を行っても、実際のところは毎回得られる訳ではない。
過去には、一度も御神託を得られなかった総大主教もいる中で、ヤイヒムは突出していた。
なんと、ヤイヒムは総大主教に就く前から御神託を授けられていたのだ。
御神託を授けられる時、空から光が降り注ぐ。
誰が見ても、ヤイヒムが御神託を授けられたのは明らかだったのだ。
特別な儀式を行わずとも、御神託を授かる。
どれほど神から愛されれば、そのような奇跡が起きるのか、と評判になった。
四十歳になる頃には、すでにその名はすべてのアウズ教徒が知るほどになっていた。
そうして、みなに請われて総大主教に就いて二十年。
ヤイヒムは今も、神への感謝の祈りと、御神託を得るための儀式を毎日礼拝堂で行う。
専用の礼拝堂は、総大主教一人が使うには立派過ぎる建物だった。
数十の椅子が並び、説教台もある。
かつてはここで、主教たちを集めて儀式を行っていたのかもしれない。
そんな礼拝堂に、一人の老人が跪き、神に祈りを捧げていた。
年齢は六十代前半。
くすんだ灰色の髪は、丁寧に撫でつけてある。
品がありつつも、煌びやかな主教服を身につけていた。
現総大主教、ヤイヒムだった。
普段は柔和に微笑む顔を、今は苦し気に歪めていた。
ヤイヒムの前には、リベルバースの塔から回収してきた、数々の品。
御神託によって回収を命じられ、無事に回収が済んだ報告を行っているところだった。
ヤイヒムには、光が降り注いでいた。
神々しい光の中、ヤイヒムは苦し気に呻く。
そうして光が消えていくと、その場に手をつき、荒い呼吸を繰り返した。
「ハァ……ハァ……、な、何ということだ……!」
神は、怒りに満ちていた。
こんなことは、ヤイヒムが御神託を授かるようになって初めてだった。
ヤイヒムは、目の前に置かれた杖を見る。
邪悪な存在を模した、杖。
翼を広げた蛇が絡みつく、見るからに禍々しいな杖だった。
「……偽物? 『違う』とは、何を意味する……?」
神が何度も言われていた言葉。
雷のような声で、叫ばれたのだ。
――――違う、と。
ここにある物は、すべてリベルバースの塔から回収された物で間違いない。
……はずだった。
「すり替えられた……?」
その可能性を考えない訳にはいかない。
しかし、いつ、どこで?
一体、誰が……。
リベルバースに派遣した特使、ムバイト主教は教えを正しく理解する素晴らしい男だ。
彼が神を裏切るとは思えない。
また、ともに派遣した教会騎士団数十人が、常に護り固めていた。
持ち帰る段階での、すり替えは不可能と考えていい。
それでは、そもそも引き渡された物が、すでに偽物だった?
「……そう、考えるのが自然か。」
ヤイヒムは、怒りに打ち震えた。
強く握り締めた拳が、微かに震える。
その目には、はっきりと憤怒の業火が宿っていた。
「謀りおったか…………傭兵風情がっ……!」
教会騎士団の犠牲を厭い、傭兵などを使ったのがそもそもの間違いか。
ヤイヒムはゆっくりと立ち上がりながら、ムバイトからの報告を思い出す。
最終的に、邪悪な存在の象徴たる杖を回収したのは、五人の傭兵と一人の司祭。
彼らの言葉をどこまで信じれば良いか判断がつかないが、それを言っては報告のすべてが意味の無いものになってしまう。
ある程度は、信じざるを得ない。
ムバイトが報告した、傭兵たちから聞いた内容はこうだった。
最上階に、凶悪な魔物がいた。
その魔物の護る祭壇に、この禍々しい杖が祀ってあった。
祭壇に辿り着き、回収してきた傭兵は二人。
他の傭兵たちは、魔物の相手で手一杯であり、杖に触れるタイミングは無かった。
そして、回収後はその二人の傭兵から、直接ムバイトに引き渡された。
つまり、すり替えることが可能なのは、この二人の傭兵だけ。
「こうしたことを防ぐために、塔の攻略に司祭を同行させたというに……。」
ヤイヒムは、使命を伝え、送り出す時に会った司祭を思い出した。
見るからにだらしのない、気弱な、欲望に弱そうな男。
確か、ホーマーと言ったか。
「いや、まさか……!?」
ヤイヒムは、その可能性に思い至る。
「…………司祭もグル、か?」
見落とした、のではなく、あえて見逃した?
しかし、こうなってくると、最終的に回収してきた傭兵たち、全員が怪しく見えてくる。
だが、普通に考えれば、さすがにそこまではない。
いくら金を稼ごうと、命を落としては意味がない。
塔の崩壊に巻き込まれる可能性。
塔の魔物に殺される可能性。
これらを考えれば、普通はリスクが高すぎると考える。
実際、リベルバースに集まった傭兵たちの多くが、そう考えた。
塔周辺の警備や、地上に近い階層での戦いならいいが、塔の攻略まではできない、と。
ヤイヒムは踵を返し、礼拝堂の出入り口に向かって歩き出す。
そうして歩きながら、どうするべきかを考えていた。
傭兵たちの中にも、信仰心から危険に挑んだ者はいただろう。
『神が、それを望まれている。これは、神の意である。』
そう喧伝したおかげで、多くの傭兵たちが集まった。
信仰心が行き過ぎ、死地にまで喜々として足を運ぶ者はいる。
おそらく、回収してきた傭兵の多くはこのタイプの者だろう。
そうした者の中に、悪しき考えの者が紛れ込んだ。
「そう考える方が自然か。」
ヤイヒムが礼拝堂を出ると、外では六人ほどの側仕えが跪き、待機していた。
「ムバイト主教を、すぐに執務室に呼びなさい。回収した物は、封印庫へ。」
厳しい表情で伝えるヤイヒムに、側仕えたちは少し驚く。
普段のヤイヒムからは想像もつかないほど、低く厳しい声。
一人の側仕えが、急いでムバイトを呼びに行く。
二人は礼拝堂の中へ入り、回収してきた物を片付ける。
残りがヤイヒムに付き従った。
ヤイヒムには焦りがあった。
少し状況が見えてきたが、それで状況が好転した訳ではない。
むしろ、非常にまずい事態が進行していることに気づいたからだ。
この大陸は、表面上は均衡が保たれ、平和が維持されているように見える。
しかし、違う。
実際は、今も戦いは続いているのだ。
神の戦い。
邪で、愚かで、恐ろしい教えが大陸に蔓延している。
そのために、唯一つの神に背を向け、堕落する者のなんと多いことか。
大陸に住まう者たちを、救済しなくてはならない。
正しい教えを説き、正しい行いを説き、人々に邪悪な教えからの脱却を促さなければならない。
邪悪な教えに耳を塞ぎ、邪悪な行いから目を逸らせさせなければならなかった。
幸い、帝国は賢明な皇帝が統治しているため、多くの民が救われていた。
国教として、帝国の全土では、正しい教えを広めることができている。
しかし残念なことに、それでも大陸の半分以上に神の声が届いていない。
神の愛が届いていないのだ。
長く、苦しい戦い。
それは、神が人に与えたもうた試練である。
真なる教えの下、選ばれし者たちは戦い続けなければならない。
その決意はあれど、それでも思わずにはいられない。
(一度の躓きのために、いつまでも思い煩わされるものだ……。)
九十九までが上手くいっても、残りの一つのために随分と煩わされる。
ヤイヒムは廊下を歩きながら、そっと溜息をついた。
とは言え、三年前から問題を抱えていたあの塔の件も、これで一応の決着がついた。
今はまだ片手落ちだが、それもすぐに挽回できよう。
本物の象徴の回収によって。
ヤイヒムは、総大主教の執務室に着くと、すぐに命令書を書き始めた。
そうして書きながら、指示を出す。
「教会騎士団を動員する。団長をここに。」
「は、はい、聖下。すぐに!」
その指示に、側仕えが慌てて部屋を飛び出す。
教会騎士団の動員と聞き、ようやく側仕えたちは、どれほど大事なのか理解できた。
きっと、御神託でとても重大な内容を告げられたのだろう、と。
命令書を書き上げると、ヤイヒムはサインした。
そうして、印璽管理者より印璽を受け取る。
命令書に印璽を押し、これで正式に総大主教令の命令書が発効した。
『邪悪な存在に魅入られた者、三名の捕縛。』
『邪教徒を捕えるため、教会騎士団より中隊を派遣する。』
『盗まれた邪神の像、象徴の回収こそが、もっとも重要である。』
ヤイヒムは、今打てる手を打ち、一息つく。
だが、油断してはいけない。
忍び寄る邪悪な影は、常にすぐ傍に潜んでいるのだから。
…………それでも、と思う。
これで今日も、神の教えは守られる。
そう安堵し、ヤイヒムはいつもの穏やかな微笑みを取り戻す。
そんなヤイヒムの姿に、側仕えたちはようやく胸を撫で下ろすのだった。
【後書き】
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
第四章はこれにて完結です。
次回から第五章となります。
五章はすでに書き始めています。
何を書くか(珍しく)ばっちり決めてあるので、あとはただキーボードに叩きつけるだけです。
いつ投稿できるかは分かりませんが、決まり次第また活動報告で告知したいと思います。
それでは、次章もよろしくお願いします。
リウト銃士




