47 弘子「信太朗。行っておいで。本当にやりたい事、できたんだろ?」
私は、信太朗と敦ちゃんを、過去へ送り出した後、大学に戻った。
結局信太朗は、敦盛について過去へ旅立ってしまった。
「姉ちゃん、今まで本当にありがとう。それで……俺……。敦ちゃんと一緒に行くよ。」
なんとなくそうなるんじゃないかと思っていた。
いや、私自身、むしろそうなるように行動していたかもしれない。
ずっと手のかかる弟だった。両親が事故死した時に、最初に考えたのは、弟の事だった。
この子を立派にするまでは、結婚できないなと、当時中学生の私は思ったものだ。
「信太朗。行っておいで。あっちで本当にやりたい事、できたんだろ?」
やはり弟と二度と会えないというのは寂しいものだ。
「姉ちゃん。姉ちゃんも一緒に来てくれると、俺たちすごくうれしいんだけど。」
鼻の奥がツーンとする。やばい。
「私に敦ちゃんの時代でできる事はないよ。私の事は気にしないで。扶養家族がいなくなって、気兼ねなく研究に打ち込めるってもんだよ。」
それだけ言うのが精いっぱいだった。
「弘子お姉さま。今まで、本当にありがとうございました。」
敦ちゃんが頭を下げる。
本当に可愛い子だ。自慢の嫁だよ。
隣にいた蛭尾所長が声をかける。
「3人とも、わかってるよね。タイムマシンの起動は構造上今回で最後。もう戻ってこられないんだ。もう二度と。それでもいいのかい?」
二人がうなずく。
「所長、若い二人の旅路ってやつですよ。私らがなんか言うのは野暮ってやつですよ。」
「弘子君……。」
それから私たちは黙々と荷物を詰め込んだ。
敦ちゃんが運転席に、信太朗が助手席に乗り込む。
「二人とも頑張ってね。精いっぱい生きるんだよ。」
「姉ちゃん、蛭尾教授。行ってきます。」
「お二人ともありがとうございました。さようなら。またいつか……。」
瞬間、青白い光が周りを包んだ。
タイムマシンは無事発動して、目の前から消えた。




