43 信太朗「これは全部俺が好きでやっていることだからさ。」
「ごちそうさま。さて私は大学に戻らなくちゃ。」
「え?もう少しゆっくりなされては。」
「タイムマシンの調整しなくっちゃね。敦ちゃんのためにも頑張らないと。じゃあね!」
姉ちゃんはそういうと、数分後には車で大学へ戻っていった。
二人きりになった家は、少し寂しい。
敦ちゃんは、お茶碗とお皿を片づけていた。
考えてみれば、元の世界にもどったら、笹団子も気軽に食べられないんだよな。
俺はスマホで「笹団子 作り方」で検索してみた。
「ねえ、敦ちゃん」
「はい!?」
「笹団子。作ってみようか?」
「えっ!?」
「ほら、元の世界に戻っても、食べられたらいいでしょ。材料はあの時代でも手に入るように調べてみてさ。」
「それは……素敵ですけど。」
「ようし決まりだ。まず材料を書きだそう。もち米は、たぶんあるよね、上新粉って何だろう……笹の葉ってどこでもとれるのかな……?」
俺はノリノリでスマホで調べては紙に書きだしている。楽しい。
なるべくあの時代でも手に入りやすい食材でそろえよう。重曹ってあるのかな?
「信太朗様……。」
「うん?」
「どうして……。」
「えっ!」
「どうして……信太朗様は、こんなに私に優しくしてくださるのですか?」
「どうしてって……。」
「もともと、私が勝手に信太朗様の車に入ってきて、それで勝手に頭を打った私を病院に連れて行っていただいて。」
「……。」
「その後もいろいろお世話を。この世界のことも、水道やガスやインターネットの事も、教えていただきました。いつも、いつも私のことを心配してくださいました。」
「そんなことくらい……。」
「今日は素敵な服も一緒に選んでいただきまして、それだけでもうれしかったのに。私が笹団子が好きだと言ったら、一緒に……一緒に作ろうだなんて……。」
敦ちゃんはその緋色の瞳から涙をボロボロ流していた。
「そんなに、そんなに優しくされたら……私……信太朗様、私は……。」
「敦ちゃん……。」
「何の、何の恩返しもできないのに……信太朗様さまぁ……。」
そのあとは涙声でほとんど聞き取れなかった。
俺は泣きじゃくる彼女が落ち着くのを、ずっと待った……。
「敦ちゃん。」
「……はい。」
「敦ちゃんは気にすることないんだよ。これは全部俺が好きでやっていることだからさ。」
「好きで……。」
「そう、楽しいんだ、敦ちゃんのためでもあるんだけど、俺が楽しくてやっているんだからさ。恩返しとか、全然考えなくていいからさ。」
「楽しいから……ですか?」
「そう。それで、戦いが終ったら。笹団子をさ、あいつらにも作ってやってくれよ。」
俺はあの夜見送ってくれた5人。熊谷直実、熊谷直家、那須与一、曽我十郎、曽我五郎。
あいつらの、別れ際に流してくれた涙を思い出し、俺も涙が流れた。
敦ちゃんは両手で顔を覆い、しばらく何かを考えているようだった。
「……うん、作りましょう!笹団子!」
敦ちゃんは急にパッと立ち上がり、俺の顔をみて言った。
「そ、そうだね。作ろうか。まず材料を買ってこようよ。」
「はい!」
彼女は今日一番の笑顔でそう答えた。




