39 信太朗「俺はリュックサックから秘密兵器を取り出した」
「本当に……本当にタイムスリップしたね……」
姉ちゃんがつぶやく。
タイムスリップは、姉ちゃんの研究成果でもあるんだ。感慨深いだろう。
俺は車を降りる。
静かだ。
空には計算通り満月が光っていた。
敦ちゃんが続いて降りて、一緒に荷物を降ろす。
姉ちゃんが助手席から運転席へ移る。
静かにドアを閉める。
バタンという音が、夜の空に響く。
「じゃあ……二人とも頑張って。信太朗、しっかり敦ちゃんを守ってあげるんだよ。」
「ああ、わかってるよ。」
「……死んじゃ……死んじゃ駄目だよ。信太朗……。」
やばい、姉ちゃんが涙声だ。俺まで泣きそうになる。
その時車からウィーンという機械音がして、車体全体がグラグラと揺れはじめた。
次の瞬間、視界が揺れた。青白い光。
車と姉ちゃんは目の前から姿を消した。
竹林に静寂が戻った。
「戻ってきた。」
信太朗と敦盛が同時につぶやいた。
竹林の中を一本道が通っている。
突如。
ガサっと足を踏む音が聞こえた。
一人ではない。
「信太朗様!!」
「ああ。」
武者が十数人、小高い丘から俺たちを見下ろしていた。
距離20メートル
弓を構えるもの、槍を向けるもの。
敦ちゃんは彼らを見上げ、腰に差した刀を抜く。
「何者だ!盗賊の手合いなら立ち去るがよい。当方に用があるなら名乗り要件を言え!」
良く通る声で一喝する。
敦ちゃんかっこいい……。
俺はその凛々しさに美しさを感じた。ってそんな場合じゃない。
賊らしき輩はじりじりとこちらに近づいてくる。
俺はリュックサックから秘密兵器を取り出した。
折り畳み式の軍用スコップだ。
銃器が使えない状況の場合、接近戦では最強ともいわれている。
正面に構え、敦盛と背中合わせになる。
不思議と恐怖はない。
そうだ、これは多いなる冒険の始まりなんだ。
「信太朗様、危ないです!」
「大丈夫!!」
賊は槍を繰り出した。俺は斜めに避け、スコップを思い切り振り下ろした。
3話連続投稿しました。
次回から、また、与一や曽我兄弟の場面に戻ります。




