17 平敦盛「私は、その為に生まれてきたのですね、父上。」
いよいよ敦盛の過去編がスタートします。
お楽しみください。
一部加筆訂正しました。
平敦盛。
嘉応元年(1169年)に、平清盛の弟・経盛の娘として生を受けた。
敦盛の上には5人の兄がいる。
彼女が生まれたころは、平家一門の全盛期だった。
父の経盛は、武士というより文化人であった。
京の歌人を集めサロンを開き、彼らの良きスポンサーとなっていた。
そして、文化人らしく、人一倍信心深かった。
経盛が44歳の時に、兄の平清盛が突然、病に倒れる。
彼は毎日毎晩、兄の病気回復を神仏に祈った。
ある日、いつものように寺にこもり経を唱えていると、どこからか声が聞こえた。
『今度あなたの家に生まれる子が、男子で会ったら女子、女子で会ったら男子とすれば、大願成就し、また一族の危機を救うであろう』
経盛はその言葉に従うことを神仏に誓った。
果たして兄清盛は奇跡的に回復した。
翌年、生まれた経盛の子は女子だった。瞳は燃えるような緋色で、見目麗しい赤子だった。
経盛は娘を男子として育てることを決意した。
経盛の母は猛反対した。
いくら神仏に誓ったからといって、このような可愛らしい姫を、なぜおのことして育てなくてはならないのか。
もしいくさが起きたらこの子も武士として出陣しなくてはならないのか。
しかし、経盛の決意は固く、姫ではなく、六男とされ、平家の公達として育てられることになった。後の敦盛である。
女子であることを知っているのは、父母と乳母だけで、兄たちや郎党にも秘密だった。
敦盛は、男性として育てられた理由を、幼い時から父から聞かされていた。
父に信心深く育てられた彼女は、いつか自分が一族の危機を救うのだと信じてた。
「私は、その為に生まれてきたのですね、父上。」
いつか幼い敦盛はそう聞いたことがある。
父経盛は何も答えない。
その代わり、懐から笛を取り出し、おもむろに奏でだした。
その美しい音色を聞いた敦盛は、神々しい気持ちになった。
(私にできる事は何だろう。一族の危機を救うとはどういうことだろう)
自分にそう問いかけるが答えは出ない。
しかし、父の笛の音はただただ美しく、敦盛の胸を深く打つのであった。
このお話は、必ず完結させます。
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