第一話:乱の序曲、千代田に激突する野望
平安の世が揺らぎ始める都・千代田の朝廷本部。
周辺四国(文京・豊島・台東・中央)の中でも最大の軍事力と政治的影響力を誇る文京国の使者が、ちくわ天皇の面前で朝廷の役人たちと激しく衝突していた。
「ペンネ上皇の重税のみならず、朝廷の役人どもまで我ら文京の物資を不当に貪るか! これ以上は承服しかねる!」
文京の激昂に、ちくわ天皇は「ひっ……」と身を縮め、母・ペンネ上皇の威光を傘に着る役人たちは「黙れ! 治安維持の費用を出さぬとは何事だ!」と罵り返す。話し合いは決裂。文京の軍勢は吐き捨てるように千代田の朝廷本部を後にし、自領へと引き上げていった。
しかし、この決定的な亀裂を、北区の境界線でじっと息を潜めていたチーかま軍の見張りが逃さなかった。
北区の本陣にて、報告を受けた凄腕の参謀・紋派の目が冷ややかに光る。
「……チィ様、好機です。朝廷の役人と揉めた文京軍が、千代田から無防備に自領へ戻ろうとしております」
総大将チィは、不敵な笑みを浮かべた。
「へえ……文京の奴ら、朝廷と揉めた挙句に無警戒で引き返してるってわけ? 呆れたマヌケね」
「ええ。文京は我らと隣接する最大の脅威。奴らは朝廷を攻めるつもりなど毛頭なく、ただ自領へ戻る途上……今、後ろから奇襲をかければ、長年の宿敵を一網打尽にできます」
紋派の冷徹な分析に、チィはフッと口元を吊り上げた。
「いいじゃない。奴らが朝廷に背いた罪人ってことにして叩き潰せば、私たちは『朝廷を脅かす不届き者を討った正義の軍』として都に乗り込めるってわけね」
北区のチーかま軍による電撃奇襲――四国最強を誇った文京軍は、朝廷を奇襲する気など全くなかったにもかかわらず、後ろから襲われて一夜にして壊滅した。
だが、この強引すぎる文京の排除に対し、残り三国(豊島国・台東国・中央国)の怒りが爆発する。
「文京を無理やりねじ伏せ、千代田に入り込もうとは何事か!」
「チーかま軍の暴挙、断じて許すべからず!」
三国は即座に同盟を結び、チーかま軍討伐のために起ち上がった。さらに、この動乱の知らせは近隣の武士たちにも届く。
常盤台からは、一人の武士――サ・バ・ンナが手勢を引き連れて出撃を決意する。
「チーかまの好きにはさせん。常盤台の武士の力を見せてやる!」
本蓮沼の湿地帯からは、渋き武者・陀下門が太刀を掲げた。
「ペンネの古き権門も、モ・ト・ハ・チィの野心も、全ては虚飾。我らが立ち上がり、新たな世を開く!」
三国・サ・バ・ンナ・陀下門からなる「東軍連合」が結成され、千代田を巡る未曾有の大乱「千治の乱」の幕が静かに上がろうとしていた。




