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見破る男  作者: パンジ
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14/22

電話

事件発生から三日目の昼


警察署、捜査本部。


田中刑事は、


自席でスマホのメッセージを見ながら


コンビニのパンをかじっていた。


署内には疲労の空気が充満している。


娘の優子からのメッセージ。


『お母さん、また入院した』


『仕事、大事なのは分かるけどさ』


『たまには電話くらいしたら?』


田中は数秒、その画面を見つめていた。


やがて無言でスマホを伏せる。


冷えたコーヒーを一口飲む。


その時だった。


スマホが鳴る。


「非通知……?」


嫌な予感がした。


田中はすぐ通話ボタンを押す。


「もしもし」


数秒の沈黙。


そして。


『……田中刑事、伊藤タケルです』


その瞬間。


田中が勢いよく立ち上がる。


椅子が後ろへ吹き飛んだ。


周囲の刑事達が一斉に振り向く。


田中の目が鋭くなる。


「タケル!お前、どこにいる!?」


「本当の目的は何だ!!」


だが。


タケルは答えない。


代わりに。


異様に冷静な声で言った。


『神奈川県大和市』


『食品冷凍倉庫に来い』


田中の表情が変わる。


『早く来ないと』


短い沈黙。


『凍死するぞ』


プツ。


通話が切れた。


「くそっ!」


田中はスマホを握り締めたまま叫ぶ。


「大和市の冷凍倉庫を洗え!!」


「全員動け!!」


捜査本部が一気に騒然となる。


刑事達が飛び出していく。


無線が飛び交う。


田中は机を叩いた。


――伊藤タケル。


次はいったいなにを企んでる。



真島アキラ邸。


広すぎるリビングには、不自然な静けさが漂っていた。


先日までの華やかさは無い。


代わりに居るのは、無表情な警察官達だけだった。


アキラはソファへ深く腰掛け、退屈そうに天井を見上げている。


ラフなTシャツ姿。


髪は乱れたまま。


その正面には、一人の刑事が座っていた。


いかにも真面目そうな男。


姿勢も固い。


アキラは現在、自宅で警察の保護下に置かれていた。


「なぁ」


アキラが気怠そうに口を開く。


「そろそろスマホ返してくれない?」


刑事は即答した。


「ダメです」


「いつ犯人から連絡が来るか分からない」


「常に監視する必要があります」


アキラは大きくため息を吐く。


「じゃあ酒は?」


刑事は無言で首を横に振った。


「……地獄かよ」


アキラはソファへ沈み込む。


「それにしても」


「タケルの野郎」


「めんどくさい事してくれるぜ」


刑事は冷めた目でアキラを見る。


「自業自得では?」


一瞬、空気が止まる。


刑事は小さく咳払いした。


「……おっと」


「失言でしたね」


アキラの目が細くなる。


鋭い視線。


だが次の瞬間、アキラは鼻で笑った。


「別に」


「俺は悪いと思ってねぇよ」


刑事が眉を顰める。


「何ですって?」


アキラは気怠そうに笑う。


「お互い」


「自分の好きな役を演じてただけだ」


「役?」


刑事が聞き返す。


アキラは天井を見たまま答えた。


「俺が“都合のいい間男”の役」


「タケルが“愛されている夫”の役」


数秒の沈黙。


そして。


アキラは突然、ゲラゲラと笑い始めた。


「ははははっ!!」


「愛や信頼なんて錯覚でしかないのに、笑えるよなぁ!!」

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