1.ここはどこ?
鳥のさえずりと小動物の鳴き声。
明らかに、元いた場所ではないところで彼女は倒れていた。
「お姉さん、大丈夫ですか?」
少女のような声が聞こえる。
誰かが私の体を揺さぶる。そんな感覚がありながらも、私の目は開くことはなかった。
【梅姫‹メイジー›side】
倒れた彼女を見つけたのは、近くの村に住む女の子、梅姫‹メイジー›。彼女は、夕食の材料の野草を取りに森に来ていた。
野草を取り来た道を戻ろうとすると、来るときはいなかった女性が倒れているのが見えた。
女性は息はあるようで、規則正しい呼吸が見られた。何かに襲われたのでもないらしい。
その女性の服装は見たことなく、「起きてください、お姉さん。」と声を掛けても目覚める気配はなかった。
夕暮れ間近で、夜は動物たちが活発になり危険な場所になるため、ここにおいていくことはできず、自宅に連れて帰ることにした。
見知らぬ女性を引きずって帰宅した梅姫‹メイジー›を見て、家族はすぐに駆け寄ってきた。
母の悦安‹ユエアン›は、
「この人、どうしたの?!」と驚きながらも、寝床の準備をしてくれた。
女性を寝床に寝かせると、場所を移動し説明した。
「森で野草採って帰ろうとしたら、このお姉さんが倒れてたの。でも、夕暮れ時にほっとくことができなくて連れてきちゃった。」
と女性との出会いを母に話した。
これを聞いた母は、「不思議なこともあるもんだね〜。あの辺には村人以外近づかないというのに。」などといいながらも女性の面倒を見ることを許可してくれた。
夕食を食べても、女性は起きる気配がなかったので、自室に戻り休むことにした。
自室に戻り、女性の格好を思い返すと、黒のような脚のラインの出るものを着ており、この国では見ることのない格好だったのを思い出し、どこから来たのだろうかと考えた。
夜更けまで考えても答えは出ないままだった。
そのまま寝落ち、気づけば朝になっていた。
【ルナside】
背中に痛みを感じ目を覚ますと、見慣れない天井が見えた。慌てて起き上がりあたりを見回すと、ドラマの世界のような中華時代劇のような光景だった。
呆然とし動けないでいると、部屋の入り口から声がした。
「あら、起きたのね!体きついところない?」
と母親くらいの年齢の女性から声を掛けられた。
(この人は、、誰??異世界転移ってやつ?!)
とひとり脳内で混乱し、答えられずにいると、部屋にもう一人女の子が入ってきた。
「あっ!お姉さん起きたんだね!!よかった~!」
といいながら駆け寄ってきた。
「梅姫‹メイジー›、まだ起きたばかりだからそんなに前のめりにならないよ。」
「ママ分かってるよ〜。でも、安心した!」
(この2人は親子なのか〜。)
と思いながら、「ご迷惑をおかけしました。体は大丈夫です。」と言うと2人は安心したような顔をした。
そして、「あの、私は大崎ルナといいます。ここはどこですか?」と自己紹介すると、
母子は顔を見合わせながら、「私は悦安‹ユエアン›。この子は、私の娘の梅姫‹メイジー›っていうの。ここは、耀という国の龍雲‹ロンウン›という領地の陽渓‹ヤンロウ›という村だよ。ルナといったね、なんであんな森にいたの?」
と母子の名前とこの場所について教えてくれた。
(耀?そんな国聞いたこともない。。昔の中国にもそんな国は存在しなかった。。、、私、ほんとに、異世界転移しちゃった?!)
そんな事を考えながら、悦安‹ユエアン›さんの質問に答える。
「私、試験の途中と、紙がグニャリとして、、、。。気づいたらここにました。。」
と答えると、「愛子‹アイ・ズー›ってことね。」
と急に納得した様子。
詳しく聞くと、
愛子‹アイ・ズー›とは、神の愛し子という意味で、願いのある子の思いに応えその場所まで連れて行ってしまうというものらしい。日本でいう神隠しのような。
この地でも、都市伝説のような言い伝えがありたまに迷い子がいるとのこと。
ここ2.30年はいなかったと言っていたけれど。。
(私って、薬膳に対する思いが強すぎた?!)
などと考えていると、
「ルナ、これからどうするの?この村で暮らしてみる?」
と聞かれ、自分が今無一文だということに気づいた。
急に顔が青白くなる私を見て、悦安‹ユエアン›さんは、
「しばらくこの家にいてこの国についって知っていけばいいじゃない。元の世界に帰る方法を調べてもいいし、ここで住んでみるのもいいし。」
と提案してくれた。
ここで住んでいいのはありがたい。ここについて知りたいという気持ちが大きくなっていた。
その時ふと、自分の中に元の世界に戻りたいという気持ちが大きくないことに気づいた。友達がいなかったわけじゃないし、家族がいなかったわけでもない。
それでも、自分自身がうまく溶け込めることのできる環境ではなく、姉だけをかわいがる毒親、ハラスメント満載の職場、時間が経つほどに疎遠になっていく友達。
(案外、私って薄情なのかな〜、会いたい人を思い浮かべることができない。ここが第二の人生の始まりってことなのか。。。?)
1人考えにふけていると、悦安‹ユエアン›さんはどこかにいなくなっていた。
考え込む私をじっと見つめながら、梅姫‹メイジー›が「ルナさんっていくつなの?」と聞いてきた。
「24才だよ~」と言うと、「私は15才だよ~、ルナ姉って呼んでいい?!」というのでいいよと頷けば満面の笑みを浮かべていた。
この子の笑顔は癒されるな〜と思って、「このまま、優しくいてね」と言うと、よくわかっていないようで首を傾げていた。
梅姫‹メイジー›と話していると、奥の扉から悦安‹ユエアン›さんが出てきて、「これ、若い頃の私の服なんだけど、これ着なさい。その格好のままだと外を歩くのもできないわよ。」と言われきれいな淡黄色の服を手渡された。昔の漢服のような型で、着け方がわからなかった。
「悦安‹ユエアン›さん、着付けの仕方も教えてもらっていいですか?」と聞くと、
「分かったわ。」と快く応じてくれた。
1つずつ教えてもらいながらなんとか着ることができた。
部屋にあった銅鏡を見ると、普段とは違うこの国に溶け込んだふうな漢服も今の私にはすごく似合って見えた。そして、ここで生活するという決意を固めた。




