怖すぎるお客さん相手って挙動不審になりますよね
喋ってみたら恐ろしいほど偉そうなやつだった、しかも典型ツンデレの金色キノコ。
とりあえず仲間になるのはいいが、それよりも安全な所に移動しなければ。
ここがどこで、今が危険なのか安全なのか、生き残るための情報収集が必要なのだ。
「ここはどこなのでしょうか?
僕は井口裕之って言います。
いきなり湖の近くで目を覚まして、蜘蛛に襲われて逃げてきたところでした。
そこでエルヴィティティスさんに会ったんです。」
とりあえず聞きたい内容にボールを投げ反応を見てみる。
「なるほど、貴殿はここの種ではないのか。
合点がいった。
ここは「モン・エンファー」強きものしか生き残ることのできぬ、致死域の森だ。
ここには5つの勢力があり、その中の一角の王が私である。
貴殿は、何もわからずにあの蒼を倒したのか...
恐るべき素質。
どうやったのか気になる。
ぜひ聞かせて欲しいのだ。」
なるほどこの見た目ではあるが、派閥の一つのトップに会えるとは本当に運はまだ見放してはいないようだ。
ただ、素直に訳もわからず、倒したと今知りあったばかりの相手を信じ切っていいものだろうか。
いやここは慎重に、手持ちのカードは隠しておくべきだ。
宝石の効果とわかったら、その時点で奪い取られ餌にされる可能性も十分にありえるはず。
「自分も驚きでした、あの大きな蜘蛛を倒せるなんて。
生き伸びれたのはほとんど運が良かっただけでしょう。」
「ほう、蒼を滅して置いて運が良いと申すか。
あの蜘蛛は私が長年難敵として相対した一つなのだぞ。
運だけで倒せる『可能性』なぞ万に一つもないわ。
何か、あるな、それを教えるのだ。
強引にでも聞けなくはないが、貴殿の意見を含めてどう倒せたのか聞きたい。」
くっ妙にキレるぞこのキノコ、ただ偉そうな化け物じゃない知能ある生命だ。
コイツはヤバい、本気でこちらの考えも読んだ上で見定めてきている。
下手をすると搦手で全て引き出される。
正直に話すか、それともある程度ブラフを混ぜこちらの情報を伏せながら話すか。
話さない、嘘を付くは絶対に悪手だ、金色キノコの機嫌を損ねる危険がある。
考えろ、考えろ、考えろ、それだけが生き残れる道だ。
「く...さすが王ですね、隠し事はできないですか。
私の能力は『溶かす』能力、触れたものを液体まで溶かすことができます。
即座にとまでは行きませんが、触れてしばらく経てば対象に応じて溶かすことが出来ます。
いかがです?あのお困りだった蜘蛛を倒せる程度なら、お役に立てるとは思いますが?」
「ほう...、溶かすrootsか。
そして蜘蛛を倒す程度役に立つとまで言うか?
面白い...、本当に面白いぞ貴殿は。
その能力と才能、十分に私の元で生かすがいい。
いずれは同族として迎えいれてやろう。」
「ありがとうございます。
エルヴィティティスさん、いや様!
ぜひよろしくお願いします。」
SE営業の経験よ!本当にありがとう!
鼻につかない程度だが、しっかり自己PRと強みを御社責任者に売り込んでいく!
これよ!これこそ日頃からの営業スキルの賜物!
突撃営業をしていた際にモノホンのヤ○ザさんみたいな社長から、
「テメェんとこはいったい何が出来んだよ?ガキの使いみたいな営業ならボコボコにして追い返すからな?」
と半ば脅しとしか思えない第一声に対し、ギリギリの局面でひり出た答えは...。
徹底した相手の要求を、さらに上からのハードルで押し返すという「玉砕覚悟の特攻」であった。
これには強面の社長も、
「ビビってるのはバレバレだが、こんな強気に言われちゃ頼んでみたくもなるぜ。
よし、兄ちゃんに頼みたいことがある。
啖呵切ったからには『結果』を期待してるぜ。
間違っても失望させてくれんなよ?な?」
と営業マンとしては最高の結果を残したものの、関係者全員に10円ハゲができるほどの遺恨を残す結果となった。
その時にこの必殺技は封印しなければと後悔し、それ以降使うことはなかった。
だが今こそその封印を解く時と確信し、導き出した答えのであった。
その結果が功を奏し、彼の命は今しばらく生き長らえることは叶ったらしい。
満足気な雰囲気でエルヴィティティスは、大声を上げた。
「ということだ諸君!彼もこれから我々の一員である。歓迎と尊敬を持ち節度ある対応をしてあげなさい。」
と言うと周囲の様々な陰から、ベニテングダケによく似た真っ赤な四足歩行のキノコが大量に湧き出してきたのである。




