剣の製造、依頼。
冒険者ギルドに進められた宿、「渡り鳥の巣亭」で女将に聞いたら、一人部屋が一室錫貨七枚で開いていると言う。
やったぜ、ご都合主義!
銀貨一枚を両替してもらい錫貨三枚と鍵を受取り、階段を上がる。
尚、現在の俺の所持金はトータル銀貨十枚と錫貨三昧だ。
この宿は一階が受付と酒場兼食堂で、二階が部屋だ。
異世界系でもこういうスタイルの宿が主流だったけど、この世界でもそうらしい。
後、錫貨七枚とは晩飯と朝御飯込みでの値段である。
部屋は...なんてこと無いな。
ベッドが一台あり、あと小さなテーブルと椅子が一つ、さらに重要な荷物を入れておける宝箱風の箱だ。
尚、宝箱の鍵はこの部屋の鍵だ。
一応全財産が入った袋を宝箱に入れて、ベッドで横になった。
服の替えは無いが、仕方ない。
明日買おう。
今日は一杯起こったからな...あぁ、もう眠い。
...ってか俺まだ晩御飯食べてねぇや。
さっさと食べて、寝よう。
晩飯は、意外と豪盛だった。
いや、豪華ではないけど...まぁ、質素じゃなくて、量がすごかった。
ビーフシチューみたいな感じの肉や野菜がたくさん入ったシチューがメインだったんだが、これがもう丼みたいな器ににたっぷり入っていた。
更に黒パンが二十センチ×十センチ程の長方形で、これが二枚も付いてきた。
更に更にサラダがてんこ盛り。
ティムさんの話から、錫貨七枚はちょっと高いかな〜なんて思っていたけど、この飯の量なら納得だ。
流石は冒険者向けの宿。
しかもー
「ウマッ!!」
シチューは肉の味がしっかりとしてて、味付けも薄いことはなく、勿論その肉も細かいスジ肉とかじゃなくってちゃんとゴロゴロした大きな塊で、瞬く間に減っていった。
ちょっとシチューが重いなんて思ったら、すかさずパンを取り、大きく噛みつき、頬張る。
こっちもやや固くて口の中の水分が持ってかれるが、しっかり旨い。
水をがぶ飲みし、口直しがてらサラダも口に突っ込む。
こっちもオリーブオイルと酢と塩と胡椒を使った、いわゆるイタリアンドレッシングである。
勿論、こっちもちゃんと味が濃くて旨い。
「いやー、にしてもこのシチュー美味しいです、おばちゃん」
尚、ウェイターは女将さん一人だ。
「ふん、アンタにおばちゃん呼ばわりされる筋合いはないよ。でもいいでしょ、それ。魔物肉が沢山入ったからとかで、ギルドから安く入荷したのよ。」
「え、これ魔物肉なんですか!?何の魔物ですか?」
いやー、にしてもこれ魔物の肉だったんだ。
どうやらこの世界の魔物は美味しいらしい。
して、昼食の串刺しは何の肉だったのだろうか...
「たしか、ハウルウルフだったはずよ。」
...ッ。
......そっか。
まじまじとシチューの中の肉を見ながら、俺はなんとも言えない気持ちに押し流された。
...俺が殺した魔物の肉。
それが、こんなに美味しい...
「ッ!!なにさね、アンタ、急に泣き出して...」
「おばちゃん、牛乳おかわり!」
「...あいよ」
ひとしきり泣いて、飯を完食したら、気持ちがだいぶ良くなった。
厨房で料理を作っていた女将さんの旦那さんに礼を言って、自室へ戻って今度こそ横になった。
もうすっかり夜だ。
明日はやることが沢山あるし...やっぱりクエストを受ける前に生活環境を整えたほうが良かったかも。
まあ、過ぎたことは仕方ない。
明日に、持ち、こ...
「ふぁ〜」
だめだ、もうまぶた開けてらんねえ。
俺は起き上がり、魔導ランプを消した。
ちなみに、この程度の魔道具は、割りと普及している...ぞ...
ー✦翌朝✧ー
朝御飯もこれまたなかなかボリューミーだった。
昨日と同種の黒パンをまたまた二枚に、昨日より少し少ないサラダ、更に野菜スープと卵を二個使った卵焼き、あとカリカリのベーコン二枚だ。
これもまた旨くって、瞬く間に完食してしまった。
...して、この卵は何の卵なのだろうか...?
まぁいいや。
それよりも、今日はしたいことがありすぎる。
金が入った袋も持ってきたし、出発とするか。
まずは、服屋さん。
男の服なんて適当でいいからな。
最初に入った店で全部買っちゃえ。
「おう、兄ちゃん、気前いいな。サービスで下着は全部タダにしてやるよ!」
「お、ありがとうなおっちゃん!」
やったぜ、ご都合主義発動だ!
普通の服上下三着、さらに寝るときの服二着、あと靴下やパンツ。
総じて銀貨二枚にまけてもらった。
にしても、中世に靴下なんてあったけ...?
まぁ、よしとしよう。
お次は武器屋。
「おお、ゲント!やっと来たか!」
「まだ最後別れてから二十四時間経ってないぞ...ってあれ、この世界の時間制ってどうなってるんだ?」
「ん?あってたぞ。一日は二十四時間だ。それよりも、どんな剣にするか決まったか?」
それからは、もくもくと剣の構想を練った。
まだ持っていたあの木刀もどきを基に、片刃で切断特化の剣が欲しいことを説明した。
「なるほど...お前が言うカタナは知らないけど、まあそこそこ重いサーベルでいいだろう。」
「サーベル、か...」
「実物見るか?ええと、これは軽いやつだけど...よいしょっと。」
そう言って、マイケルは俺たちが剣のアイディアをまとめていた鍛冶場(武器屋本店の奥にある)の一角に沢山あった樽から、一本剣を引き出して持って来た。
「良いのか?そんなもの出しちゃって。」
「良いって良いって。そもそもここにあるのは全部失敗作や駄作その他だからさ...主に俺の...」
「...何か悪い。」
「...いや、ゲントは悪くないさ...」
...まぁ鍛冶屋の弟子してたらそういう品々も出るか。
それにしては多い気がするが。
あれ?
でも確か...
「でも、この剣が打たせてもらった最初の剣になるんじゃなかったっけ?」
「まあ、客に売るものとしてはな。あそこの武器は全部練習で作った物だし。」
「へー」
それはともかくマイケルが出した剣を見る。
この剣は刀身が細く、刃圧が薄い。
「こんな感じの剣を、もっと肉厚にして、刺突を捨てて、切るのに特化するんだ。それなら、ゲントが求める剣ができるだろう?」
「うん。にしても、この剣の問題点って...」
あそこに入っていたし、当然この剣も失敗作だ。
まぁ、実はその理由も見れば解るな...
「ああ...薄くしすぎて、実戦じゃ使えないって言われた。」
「...存外、マイケルの問題は鍛冶の腕じゃなくて、ただドジなだけなんだろうな。」
誤字、脱字、その他諸々の難点をお教えください。
全て読み、善処します。
読んでくれて有難うございます。




