言い出せ7話
ー7話
クリスマスソングが街に流れている。
SIONが歌っている。
ー12月クリスマス気分~ー
彼のCDはもう販売されてない。シオンではなく、SIONとカラオケで検索すると5曲が出てくる。
44のリリースで、また稲沢さんと新宿のカラオケ店に行った。
店長と話をして帰ろうとした。
二組の男女がカウンターに出てきた。
女性はほの子と春菜だった。男性は知らないイケメンだった。
小林に気付いたのは、春菜に話し掛けていたメガネの真面目そうな男だった。
いきなり右ストレートが飛んできた。
そんなタイプじゃなかったので予測できなかった。顔のど真ん中にヒットして入口に吹っ飛んだ。
「なにやってんだあんたは!クリスマスに春菜一人ぼっちにして!俺は振られたよ!あんた裏切れないって!なのに、上司とカラオケかよ!ガッカリだよ!小林智昭っすげえ尊敬してたのによ~」
痛む鼻を押さえると血が手を染めた。
稲沢さんが割って入る。
「待て。小林くんを引き込んだのは私だ。私を殴ってくれ」
もう一人の連れも止めに入った。
春菜はみるみる目を見開いて小林をにらんだ。
「春菜…」
ほの子が春菜の腕に触れた。
「いや~っ」
かがむようにして、絶叫してほの子の手を振り払い、小林の横を抜けて外に飛び出した。
ほの子が追いかけて出て行く。
稲沢さんが連れの二人に、事情を説明してくれる。
カウンター前のソファーで二人は納得してくれた。
「小林さん。知らなくて殴ってすいませんでした」
小林は鼻をティッシュで押さえたまま言った。
「僕が君でも殴ったさ。春菜に辛い思いをさせてる事に変わりない」
「カラオケ製作が全部終わったら、春菜のところに戻るんですか?」
「戻るよ。メジャーデビューすれば、小林智昭に専念する。ただ……」
小林は黙った。
殴った彼が続けた。
「春菜が迎えてくれるかどうか…ですか?」
小林はうなづいた。
「まだ。終わるまで半年は掛かる。この仕事は手を抜いたら失敗する。急げない」
「はい」
「春菜に伝えて欲しい」
「何をですか?」
カウンター上のモニターでEXILEが歌っている。
「メジャーデビューしたら。ハッシーくんの前で、記念路上ライブをやる。そこで、プロポーズする。受けてくれるなら、行けないならそっちに行くを初めて歌った日の服で手を振って欲しい」
彼は微笑んだ。
「分かりました。記憶力良いんで、一字一句正確に伝えます。あの…」
「どうした?」
「僕とコイツの事覚えてないですか?」
小林は二人を見た。
「アツシとエイジです」
小林はランドセルの小学生を思い出した。
「お前ら。あのクソガキ?ピック盗んでった?」
二人共笑って、財布を取り出すとピックを出した。
「路上ライブを先月から始めたんです」
小林はうなだれてから、笑って顔を上げた。
「来年の夏までに腕上げとけ。そのレベルになってたら、サポートをやってもらう」
「すげぇ。まじですか?」
「マジだ。なってなかったらやらせないからな」
「ギター教室通いますよ。なぁエイジ」
アツシにエイジがハイタッチした。
小林は作業に戻った。
急げない。しかし一日でも遅らせたくなかった。




