またその続きを
それから、しばらく経った朝、まだ日も上らない頃、私はそこから出ることにした。
今、肌を刺すような寒さの中、白息ばかりを見つめている。
ここに、確かに安寧というものが存在したのだろう。ずっと感じていないものも、少しわかったような気もする。
実際、私は男に感謝している訳であって。
…だが、私が真に知りたいのはあくまで自由だ。
自由とは難しい言葉であるが…今は漠然としたものだ。でも、それでいいと勝手に思う。わかってしまえば、案外つまらないかもしれない。
男は、見送ってくれるようだ。
「…そろそろ、行くよ。」
「なんだよ、靴まで見繕ってやったのにそんだけかぁ?」
…ふむ…「…感謝する…」
私はすっと左を向く。
「今度は、変じゃなかったな」
…む。
「変とはなんだ?」
「えーや、なんでもないさ。それより最後にこれだ。1番大事なモンだ。」
彼はそう言ってポケットからおもむろに古びた手帳を取り出した。
「なんだこれは…」
私は動揺する。
「…大切なもの。だ」
愛しみの中で寂しげにつぶやく。心の中で、申し訳なくなりながら口にする。
「そうか。なら、汚さないようにしないとな」
彼は顔を上げてこっちを向く。
「…訳は聞かないんだな」
「必要か?」
「もう自語りは別にいいかな」
と、また彼は笑う。
「…じゃあな。精々、足掻いてみることだ」
「…ふん…そうだな」
私は、太陽を見て、また遠くへ歩き始めた。




