第十五章: 偽りの記憶と新たな絆1-1
静寂を破り、天から降り注いだ眩い光。それは異世界の冷たさではなく、どこか懐かしく、春の陽だまりのような温かさを持っていました。光の中に佇むシルエット。かつて共に戦い、あるいは守りたかった、血の繋がった絆。「お兄ちゃん、久しぶり」その一言がライトの耳に届いた瞬間、彼の心に去来したのは驚きか、それとも安堵か……。アーグアンが目にしたのは、変わり果てた光景と、あまりに冷酷な真実でした。「ライヤ......!」
画面を見つめるアーグアンが叫ぶ中、闇の底から核雷の嘲笑う声が響いた。
ライトを徹底的に痛めつけ、絶体絶命の危機に追い込むこと――それこそが、潜伏していた妹のライヤを戦場へとおびき出すための、核雷の仕組んだ罠だったのだ。
「ようやく現れたか、ドブネズミども。いつまで隠れ続けられると思っていた?」「……貴様、聖剣を集めるために、一体どれほどの時間をかけてこの計画を練ったんだ!」アーグアンの問いに、核雷は狂気じみた笑い声を上げました。「計画? ハハハハハ! 私は千年の時を準備に費やしたのだよ。通りすがりの貴様らには、私の孤独な待ち時間の長さなど想像もつくまい! 私は証明したかったのだ。我らのような存在が、貴様ら高等元素の支配を受ける器ではないことをな! ……あのアダム(最初の人類)が、我らを軽視した時のようにな!」「アダムだと……!?」「そうだ。記憶の聖剣、そして源力元素の抹殺……すべては私の筋書き通りだ。源力元素が誕生しなければ聖剣も現れない。だから私は『剛力元素』を唆してウーミエを解放させた。奇跡の剣であり虚無の剣を誕生させ、源力の聖剣を誘い出すためにな……。その後の展開は、もう言わなくても分かるだろう?」アーグアンは戦慄しました。一介の元素が、これほどまでの知性と執念を持ち、千年の時をかけて世界を弄んでいたという事実に。「今さら真実を知ったところで手遅れだ。間もなく私はこの世界のすべてを統治する。その時、貴様らは……」「……ライトたちは、必ず目を覚ます! 彼らが、お前の思い通りにさせるはずがない!」「ほう。ならば、楽しみに待たせてもらおうか」傷ついたライトをかばうように、妹のライヤがその背中に立ちふさがりました。彼女の瞳には、かつての幼さはなく、静かで底知れない決意が宿っていました。「……ここは私に任せて、お兄ちゃん」ライヤの背中に向かって、チーランが鋭い言葉を投げつけます。「ライヤ! なぜそこにいるの!? なぜそんな裏切り者を助けるのよ! 彼は力を手に入れるために手段を選ばなかった、一族の恥なのよ!」その言葉に、ライヤは悲しげに、しかし毅然として言い返しました。「……目の前で兄が連れ去られるのを、黙って見ていろというの? それに、お兄ちゃんは何もしていない。あなたたちは、誰かが作り上げた『偽りの真実』に目を眩まされているだけよ」その一言に、メイジウの表情がわずかに動きました。何かに気づいたような、戸惑いの色がその瞳に浮かびます。しかし、逆上したチーディは剣を構え直しました。「理屈はいい! 我々の邪魔をするなら、お前もろとも捕らえるまでだ!」残された六人の忍者が、一斉に一人の少女——ライヤへと武器を向けます。多勢に無勢。絶望的な状況。しかし、ライヤは怯えるどころか、口元に微かな笑みを浮かべました。「ふふ……この感覚、悪くないわね。いいわよ、六人がかりで来なさい。私が相手をしてあげる」「いい度胸ね」とビンチェンが吐き捨てる。少女は黄金に輝く聖剣を抜き放ち、自信に満ちた笑みを浮かべた。「さあ、抜剣なさい!」黄金の忍者がその姿を現した。「容赦はしないわよ、行くわよ! メイジウ、バフをちょうだい!」チーランの号令が飛ぶ。「助奏楽、楽声舞台! 楽声の人形たち、攻撃開始!」メイジウが操る人形たちが一斉に襲いかかる。「ふん……閃光剣!」ライヤが放った強烈な閃光が全員の視界を奪う。「くっ、何も見えない!」その隙を逃さず、ライヤは瞬時にメイジウの背後に回り込み、強烈な蹴りを見舞った。さらに追撃する人形たちに対し、「爆刺斬!」と一閃。人形たちは一瞬で粉砕された。「甘いな、本命の攻撃はこっちだ! 岩刀爆裂斬!」アーガンが巨剣を振り下ろす。しかし、ライヤは不敵に微笑んだ。「光輝制裁!」さらに巨大な光の刃が上空から降り注ぎ、アーガンを地面へと叩き伏せた。激しい爆発音と共に、アーガンはその場に倒れ込む。「まだやるの?」ライヤの挑発に、チーディが激昂した。「このアマ……!」燃え盛る火炎拳が放たれるが、ライヤはそれを軽々と受け止め、チーディの腕をひねり上げて拘束した。そのまま左手から光元素の光線を至近距離で浴びせ、赤地を吹き飛ばす。「チーディ!……おのれライヤ、仲間をここまで傷つけるなんて!」チーランが悲鳴のような声を上げるが、ライヤは冷淡に言い放った。「手加減はしてあげたわ。そうでなければ、お兄さんは今頃死んでいたもの」「おのれ……!」チーランの怒りは頂点に達し、濁流のごとき勢いでライヤへと斬りかかりました。「水剣刺斬!」「爆刺斬!」二人の聖剣が火花を散らし、幾度となく交差します。「水浪流れ!」チーランが放った巨大な奔流に対し、ライヤは不敵に微笑みました。「ふん、その濁流……いただくわ。光波斬!」黄金の光が水を飲み込み、逆にチーランを押し流しました。自分の技に飲み込まれたチーランは、信じられないといった表情で後退します。「次は誰?」ライヤが挑発した瞬間、足元から冷気が這い上がりました。「全凍結!」ビンチェンの術により、ライヤの両足が氷の枷で固定されます。「今だ、アーラン!」「おう! 任せな!」アーランが風を纏って飛び出しました。ライヤはその瞳を静かに見つめます。「アーラン……」「風颶斬・聖剣モード! ライヤ、この裏切り者がぁッ!」猛烈な竜巻がライヤを襲いますが、彼女は黄金の剣を天に掲げました。「あなたたちには、今の状況が何も見えていないのね……光輝制裁!」光の大刀が暴風を真っ向から叩き潰しました。しかしアーランは止まりません。「狂風爆斬!」「閃光剣!」再び放たれた強烈な閃光。視界を奪われ、アーランが動きを止めた一瞬の隙に、ライヤの追撃が炸裂しました。「爆刺斬!」黄金の針がアーランを地面に縫い付け、身動きを封じます。「くっ、この野郎……!」「破軍歌姫!」その時、ライヤの周囲を六つの巨大なスピーカーが包囲しました。メイジウの放つ破壊音波が、ライヤの鼓動を揺さぶります。「手厳しいわね、メイジウ」ライヤが顔をしかめた瞬間、ビンチェンがさらに追撃を重ねます。「ビンチェン、合わせろ!」「了解だ! 霜刃・弓モード!」氷の矢が、音波に足止めされたライヤの眉間を狙い澄まします。ライヤは、包囲されながらも表情を崩しませんでした。「……遊びは終わりよ。光輝制裁・光環モード!」彼女が聖剣を天に掲げると、剣は無数の光の粒子に分解され、彼女を取り囲む七つの巨大な光輪へと姿を変えました。「全力で行くわよ。ハァッ!」七つの光輪が一点に集中し、そこから放たれた超特大の光線が周囲を真っ白に染め上げました。「なっ、何という威力だ……!」「そんな、防ぎきれない……っ!」メイジウとビンチェンの叫びも虚しく、光の激流がすべてを飲み込みました。一瞬の後、光が収まると、そこには立っている者は一人もいませんでした。ライヤだけが、傷一つない姿で静かに佇んでいます。「……まだ、続ける?」ライヤの圧倒的な実力を前に、チーランは悔しそうに地を叩きました。「くっ……おのれ……! 全員撤退よ! 今は引くわ!」ボロボロになった忍者たちは、光の余韻に怯えながら、霧のようにその場から去っていきました。一人残されたライトは、信じられないものを見る目で妹を見つめていました。




