第九章: 真実の声1-1
その日、ライトは街で一人の少女を手助けしていた。「ありがとう、ライトお兄ちゃん! お守りを見つけてくれて……これ、私にとって本当に大切なものなの」少女は感謝を伝えた。「力になれて光栄だよ」ライトが答えると、少女は笑顔で去っていった。ふと見ると、壁にポスターを貼っている人々がいた。ライトは好奇心に駆られ、民衆に尋ねた。「これは何ですか?」「おっ、忍者のライトじゃないか。これはね、アイドル歌手がここでコンサートを開くっていう告知だよ。地元出身の『メイジウ』っていう子らしいんだ」「そうそう、彼女の歌を聴いていると、なんだか愉悦な気分になれるんだよね」ライトはその名前に、どこか聞き覚えがあるような不思議な感覚を覚えた。「そうですか……でも、その名前、どこかで聞いたことがあるような。…… 一枚、ポスターを頂いてもいいですか?」「ああ、いいとも。持っていきな」「ありがとうございます」ライトはポスターを受け取ると、道場へと戻り、皆にそのことを知らせた。「みんな、ある人物について聞いたことはないか?」「誰のこと? ああ、そういえばアーグアン、チーディ、ビンチェン、アーガンの四人は元素の件を調べに行ってるわよ」チーランが答えた。「そうなんだ。……で、チーランはどうして行かなかったの?」ライトが尋ねる。「師匠にここで待機するように言われたのよ。……それより、あなたが手に持っているのは何?」「これはポスターだよ。メイジウっていうアイドル歌手の。なんだか、どこかで聞いたことがある名前だと思ってさ」チーランはポスターを受け取ると、目を見開いた。「嘘……本当に彼女なの?」「誰なんだ?」「彼女は音の忍者。音を操ることができる忍者よ。……子供の頃、私たちと一緒に修業していたこともあるわ」ライトは、またしても聞き覚えのある展開に驚く。「そうだったのか……。でも、どうして彼女はコンサートを開くんだ? というか、どうしてここに戻ってこないんだ?」その時、道場の門を叩く音が響いた。ライトが門を開けると、そこには灰白色の長い髪をした一人の少女が立っていた。「ええと……君は?」二人が見つめ合ったまま固まっていると、背後から彼女の姿を見たチーランが、激しく声を上げた。「メイジウ!!」「そんなに大きな声を出さないで」少女は静かに答えた。「……中で話しましょう」「ほら、見て。ポスターにあなたの名前があったから、てっきり同姓同名の別人かと……。……メイジウ?」チーランはそこまで言いかけて、少し沈黙した。目の前の緑の忍者を見つめ、彼女は口を開いた。「この方がライトね。久しいわ」「……こんにちは、よろしく」「ちょっと、メイジウ。そんな他人行儀な話し方しないでよ」チーランが口を挟むと、メイジウは淡々と答えた。「……悪いわね、チーラン。私は聖剣を返しに来ただけなの」「聖剣を返す……?」「ええ。私はもう、歌手としての道を行くと決めたの。忍者になるつもりはないわ」「どうして!? わけを聞かせてよ!」チーランの問いに、メイジウは迷いのない瞳で返した。「私はもともと歌うことが好きだった。自分の夢を追いかけたいの。忍者の使命はあまりに危険すぎるわ。私は一人の歌手として、元素の力ではなく自分の実力で勝負したい。それが、私の望みなの」「師匠の教えを忘れたの?」「忘れてはいないわ。でも、夢がすぐそこまで来ているのに、それを追わずにここでヒーローごっこを続けていろと言うの? ……とにかく、失礼するわね」「待って、メイジウ!」呼び止めるチーランに、メイジウは振り返らずに告げた。「……コアと聖剣は師匠に渡しておいて。お願いね」「行ってしまったな……」ライトが呟くと、チーランは自分に言い聞かせるように溜息をついた。「……仕方ないわ。彼女には彼女の理想があるんだもの。応援してあげるしかないわね」「これは……?」ふと見ると、聖剣が置かれていた場所の下に、一枚のチケットが残されていた。「どうやら、彼女のコンサートに来てほしいみたいだな」「そうね……」しかし、このコンサートはある人物によって仕組まれたものだった。そしてその人物の体内には、元素の力が宿り、彼を支配していたのだ。ウーミエの拠地にて。「……そういえば、お前たちには他の元素の場所を特定する能力があるはずだろう?」ウーミエが問いかけると、粘潮が冷静に答えた。「私たちは目覚めてからまだ日が浅い。その能力が回復するにはもう少し時間がかかるわ。……もっとも、別の街に一人の気配を感じるけれどね。すぐにここへやって来るはずよ」ウーミエはさらに問いを重ねる。「なぜ元素同士で団結しようとしない?」「仕方のないことよ。それぞれの元素には自身の考えがあり、皆が勝手に振る舞いたがっている。けれど、彼らを統率する存在もいるわ。すべての反面元素を統一し、従わせる者……それが『核雷』よ」「それは知っている。力の元素から聞いたからな」二人の会話は仲間のようではあったが、その実、互いを利用し合っているに過ぎなかった。そこへ滅炎が歩み寄ってくる。「なあ、俺たちは参戦できないのか?」「……状況を見てからだ。無意味な戦いに首を突っ込む必要はない」ウーミエは淡々と言い放った。調査を進める四人の忍者の場面に戻る。「……あのさ、師匠は記憶の忍者の手がかりを探せって言ったはずだろ。お前ら、ここで一体何をしてるんだ?」チーディが激昂して声を張り上げた。「一人は食べ物を見れば食いつき、一人はゲームを見れば遊びたがり、もう一人は老人と将棋を指してやがる!」対するアーガンが問い返す。「……お前だって、ここで一日中座り込んでたじゃないか」「うっ……」チーディが言葉に詰まったその時、一枚のポスターがひらひらと彼の手に舞い込んできた。「これは……? おい、みんな見ろ! これ、メイジウじゃないか」「彼女がコンサートを開くのか?」「明後日みたいだな。……なあ、行ってみないか?」「いいぜ! とりあえず戻ってチーランたちに知らせよう!」道場に戻った一同。「何だって? メイジウが忍者を引退する(やめる)だと?」チーディが問い返す。「ええ。それに、私たちに一枚だけチケットをくれたの。誰か見に行く人はいない?」チーランの説明に、全員の視線がライトに集まった。「……お前に任せたぜ」「えっ、でも俺、彼女とはあまり親しくないんだけど……」ライトが戸惑いを見せると、チーディが答えた。「気にするな。一緒に育った仲なんだ、親しいも何も関係ないさ」その後、チーランは師匠の部屋を訪れ、コアと聖剣を差し出した。「師匠、これが……彼女から返されたコアと聖剣です」師匠は淡々と告げた。「そうか……。だが、それはお前たちが持っておきなさい。わしが預かるまでもない。遅かれ早かれ、それは主の元へ戻ることになるだろう」「……分かりました」一息ついたところで、師匠が尋ねた。「アーグアン、記憶の忍者の手がかりは見つかったかな?」「いいえ……えーと、正直に言うと、一日中サボって遊んでいました」




