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21本の聖剣の物語  作者: ジャスティン
第1期
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岩土と夢幻の侵蝕1-4

後日、噂を聞いた。あの男は新しく事業を始め、うまくいっているらしい。夜、食卓で―― なぜか皆が妙によそよそしい。「アーガン、座ってていいよ。」 「皿は触らなくていい。」 「ガラス持たなくていいから!」(なんでだよ……?)まるで怪我でもしているかのような扱いだ。(なんか変だな……)「じゃあ俺、先に寝るわ。」「おやすみ〜。」だが―― 実は“寝たふり”だった。(あの人、気になる。)アーガンはこっそり道場を抜け出し、再び街へ向かう。街の中心。あの男は本当に成功していた。高級な服を着て、堂々としている。本当に立ち直ったのか……その時。男がこちらを見る。目が合う。「アーガン!!」大声で呼ばれた。アーガンは驚く。「……俺のこと、知ってるのか?」「そうだよ。君が俺を助けてくれたんだ。忘れるわけないだろ?でも今ちょっと時間がなくてさ、彼女が迎えに来るみたいなんだ。じゃあな。」「……ああ、じゃあな。」アーガンは首をかしげる。(なんか……引っかかるな。)だが、何が変なのかは分からない。その夜、道場に戻って布団に入ったが―― 眠れない。目を閉じても、どこか落ち着かない。翌日。アーガンは公園へ向かった。ベンチに座るあの男を見つける。昼休みらしく、簡単な昼食を食べている。アーガンは近づき、声をかけた。「なんかさ……昨日より元気そうだな。」男は少し驚いて振り向く。「でも俺は……」「どうしたんだ、アーガン?」アーガンは真剣な目で言う。「なんか、変なんだよ。」「何が?」「目が覚めた時、周りの人が妙に優しすぎた。まるで……俺を“英雄”に仕立て上げるみたいに。」男は笑う。「だって君は英雄だろ?」アーガンは首を振る。「違う。俺は英雄なんかじゃない。」少し間を置いて、「それより、あんたの話を聞かせてくれよ。どうやって事業、成功させたんだ?」男は黙る。風が吹く。そして小さく呟いた。「……成功なんて、してない。」アーガンの目が細くなる。男は続ける。「俺は何も変わってない。ただ……現実から目を背けてるだけだ。」「やっぱりな……」アーガンは確信したように呟いた。「聞いてくれ。今起きてること、どこか不自然だと思わないか?俺たち……まだ夢の中にいる。」男は静かに笑う。「分かってるさ。ずっと前からな。でも……目を覚ましたくないんだ。」アーガンは真っ直ぐに彼を見る。「挫折(ざせつ)は誰にだってある。でもさ、だからって眠ったままでいいのか?」男は拳を握る。「君には分からない。俺がどれだけ必死だったか。残業すれば報われると思ってた。努力すれば金も評価も、家族の幸せも手に入るって……。でも何も残らなかった。」声が震える。「現実に戻るのが怖いんだ。」アーガンは一歩近づいた。「できる。あんたならできる。」男は顔を上げる。「人間ってさ、最初は何も持ってない。だったら、もう一度ゼロから始めたっていいだろ?」静かな風が吹く。「痛みから逃げても、前には進めない。苦しくても、向き合う。それが“生きる”ってことだろ。」男の目が揺れる。「……そうか。」ゆっくりと、頷いた。「君の言う通りだ。」アーガンは笑った。「よし。じゃあ一緒に進もう。次の人生へ。」「この夢を――俺が壊す!」アーガンは聖剣を振り抜き、空間に一筋の亀裂を刻んだ。次の瞬間、楽園の景色はガラスのようにひび割れ、粉々に崩れ落ちる。最初に迷い込んだ、あの暗闇の中心へと戻った。そこに――夢刻が姿を現す。「いやぁ、よく眠れただろう?」「決着をつけるぞ、夢刻。」「そうかい? じゃあ、僕も本気の姿でいこうか。」

空間が歪み、目の前に一人の人影が現れる。夢刻の意識が形を持った存在―― 「さあ、忍者。始めよう。」アーガンは地を蹴った。「土ノ刺撃(つちのしげき)」鋭い岩の槍が地面から突き出す。だが―― 夢は微動だにしない。「無駄だよ。」パチン、と指を鳴らす。次の瞬間、アーガンの全身に激痛が走る。「くっ……!」「言っただろう? ここは僕の領域。主役は僕だ。」「まだだ……土ノ斬撃!」重い一閃。しかし夢は軽やかに跳び越え、逆に無数の尖刺(せんし)を降らせる。岩の雨がアーガンを打ち据える。「神亀戦甲(しんきせんこう)」土の鎧が身体を包む。「反射なんて効かないよ。」夢刻は冷笑した。アーガンは歯を食いしばる。(時間がない……このままじゃ皆が……)そのとき―― 視界の端に、あの男が立っていた。夢の中で出会った、あの失業した男。「……あんた?」夢とアーガンの間に立ちアーガンは目の前の男を見つめた。「……どうしてここに?」男はゆっくりと振り返る。「宿主として約束しただろう。俺はずっと、いい夢を見させてもらっていた。」夢刻が静かに口を開く。「この夢は彼の脳内世界。僕はただ、“夢を操る力”を与えただけだよ。」男は拳を握りしめた。「もう十分だ……。俺はずっと現実から逃げていただけだ。頼む、みんなを現実に戻してくれ。」夢刻は冷たい声で告げる。「可能だよ。でも、その瞬間――君の脳は壊れる。」「なっ……!?」アーガンの表情が凍りつく。「そんな……他に方法はないのか!?」「ない。」即答だった。夢刻は薄く笑う。「最初に彼の中へ入った理由?簡単さ。彼は“何か”を強く求めていた。だから僕は、夢を見る力を与えた。」アーガンは叫ぶ。「結果がこうなるって分かってたのに、どうして!」夢刻は肩をすくめる。「人間って面白いだろ?美しさを望みながら、代償を恐れる。楽園を求めながら、責任から逃げる。」黒い霧がゆらりと揺れる。「欲望と恐怖。その矛盾(むじゅん)こそが、人間さ。」男は静かにうつむいた。「……俺はもう逃げない。」空間が震え始める。アーガンの胸が強く打つ。(ここで終わらせるしかない……)アーガンは歯を食いしばった。「この夢が消えたら……お前はどうなる?」夢刻は軽く笑う。「僕は外へ出るだけさ。そしてまた、新しい“宿主”を探す。」「ふざけるな……!」アーガンの拳が震える。怒りの矛先は、目の前の存在ではない。(俺は……何も止められないのか)そのとき、男が駆け寄ってきた。「アーガン……すまない。俺のせいで、みんなを巻き込んだ……」「くそっ……俺は何もできない……!」男は夢刻を睨みつける。「全員を外へ出して、この夢を壊す方法は?」夢刻は淡々と答える。「簡単さ。“これは夢だ”と、強く思い続けること。“俺は夢を見ている”と自覚し続けること。」「それだけで?」「そう。意識が現実を選べば、夢は崩れる。」空間がひび割れ始める。「じゃあ僕は行くよ。あとはごゆっくり。」「待て!――」「行かせてくれ。」男が静かに言った。「残りの時間、少しだけ……話をさせてくれ。」夢刻の気配は薄れ、黒い霧は消えていく。崩れゆく夢の中、二人だけの時間が残された。男は小さく笑う。「……あと数分だな。」夢の空間は、ゆっくりと崩れ続けていた。男は静かに続ける。「……どうしてだよ。何かあったら相談しろって言ったじゃないか。なのに、最後は自分の命まで賭けるなんて……」アーガンは拳を握る。「そんな言い方するなよ……!」男は苦く笑った。「この夢で、俺が手に入れたものがあるとしたらな…… それは、お前がちゃんと俺の話を聞いてくれたことだ。」崩れ落ちる空の下、彼の声はどこか穏やかだった。「仕事では誰も俺と話さなかった。空気みたいに扱われてさ。それがずっと自信を削っていった。」「……」「そんな時に妻と出会った。やっと人生が良くなるって思ったんだ。」一瞬、声が震える。「でも子どもが生まれた後、あいつは別の男のところへ行った。あとで知ったよ……最初から目的は“子ども”だったって。」アーガンの目が見開かれる。「その男は子どもができない体だったらしい。だから俺を利用した。俺の人生を、全部壊していった。」空間の亀裂がさらに広がる。「その後は同僚にも裏切られた。機密を外に流したのはあいつらなのに、罪を全部俺に押しつけてさ。」男は空を見上げた。「解雇だよ。全部終わった。」静かな沈黙。「だからな…… 夢くらい、見させてくれてもいいだろ?」アーガンは首を振る。「……夢は悪くない。でも、逃げ続けたら現実は何も変わらない。」男はゆっくりと笑う。「分かってるさ。だから今、目を覚ますんだろ?」崩壊は加速していく。「悲しむなよ、アーガン。お前は十分やった。」崩れゆく夢の中で、アーガンは言葉を失った。「俺は……」男は静かに微笑む。「最後に一つだけ、頼みがある。」「……?」「君の名前、ちゃんと教えてくれたよな。今度は俺の名前も覚えていてほしい。」アーガンはまっすぐ見つめる。「……名前、教えてくれるか?」男は少し照れくさそうに言った。「(リー・ジャオシン)。」「……いい名前だな。」男は目を丸くする。「そうか?名前を褒められたの、初めてだ。」空間が完全に砕け散る。「じゃあな、アーガン。」「……ああ。さよならだ、リー・ジャオシン。」——アーガンは、はっと目を覚ました。冷たい地面。現実の空気。遠くから、金属がぶつかる音が聞こえる。戦っている……?だがアーガンは、まず立ち上がり、街の片隅へ走った。そこには—— 黒い霧が消えた後、静かに横たわる一人の男の姿があった。リー・ジャオシン。もう、動かない。アーガンは膝をつき、そっと目を閉じさせる。「……ちゃんと、目を覚ましたんだな。」遠くで、再び戦いの音が響く。だが今は、ただ静かに。アーガンは立ち上がった。「ありがとう。」そして、戦いの方へと駆け出した。アーガンは、倒れているリー・ジャオシンの体を見つめた。近くに落ちていた白い布を拾い、静かにその体にかける。「……ちょっと待ってろ。」その瞬間—— 黒い霧のような存在が、遺体からふわりと浮かび上がった。「お前……!」「やっと見つけたぞ、夢刻。」低い声が背後から響く。振り向くと、そこに立っていたのは黒衣の男。「誰だ?」「ウーミエだ。」その名を聞いた瞬間、夢刻は慌てて逃げ出す。だが—— 「逃がさない。」ウーミエはまるで最初から軌道を読んでいたかのように、一瞬で距離を詰め、黒い渦で夢刻を包み込み、そのまま吸収した。「なっ……何をしてる!」「見て分からないか?元素を回収してるんだ。」口元に薄く笑みを浮かべる。「こいつはなかなか見つからなくてな。……その格好、忍者だな?」「だったら何だ。」「お前の仲間は、もう全員倒してきた。」「……何だと?」胸がざわつく。「まあ安心しろ。まだ殺してはいない。」ウーミエは肩をすくめる。「じゃあ俺は行く。」「待て!」ウーミエは振り返り、冷たい目でアーガンを見る。「どうした。お前もやるか?」アーガンは拳を握りしめる。だが、頭に浮かぶのは仲間の顔。もしここで戦って倒れたら—— ライトも、チーランも、まだ眠ったままの二人を守る者がいなくなる。ウーミエは続ける。「それに、水の忍者と緑の忍者、まだ眠ってるんだろ?」心臓が強く鳴る。……確かに。ここで無理に戦えば、自分が倒れた瞬間、全てが終わる。歯を食いしばる。「……くそ。」ウーミエは背を向ける。「賢い判断だ。」黒い霧のように姿を消す。アーガンはその場に立ち尽くしたまま、静かに呟く。「今は……撤退だ。」




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