紅蓮の激闘1-4
現実へ―― チーディは地面に倒れ伏していた。意識が薄れかける中、ぼんやりと二つの人影が見える。「チーディはどこだ? 連絡がつかない!」「砂漠だ!」「砂漠!? 本気か?」「うん、早く来て!」「どうして分かる?」
「え……直感だ!」二人は全力で駆ける。やがて遠くに黒い影。「……あれは」「ウーミエ!」そして―― 「チーディ!!」ライトが迷いなく飛び出した。「源力!!」蒼い光が一直線にウーミエへ放たれる。だがウーミエは微動だにせず、静かに呟く。「無能。」次の瞬間、源力は霧散した。「……そんなことまでできるのか!?」ウーミエは微笑む。「ライト。いいタイミングで来たな」ライトは剣を構える。だが視界の端に、倒れたチーディ。そして、ジェンシャンが小さく首を振る。――今は戦う時じゃない。ライトは歯を食いしばる。「源力!」再び放つ。「無能。」ウーミエが一瞬、注意を向けたその隙に―― ライトはチーディを担ぎ上げる。「撤退だ!」砂煙の中、全速力で離脱する。ウーミエは追わなかった。ただ静かに、立っている。――安全な距離まで来た。「大丈夫か、チーディ?」チーディはかすれた声で言う。「……あっちだ」震える指が、ある方向を指す。「……あれは……」ライトの目が見開かれる。遠くに落ちているもの。「チーランの聖剣と核心だ」チーディたちが退いた後―― ウーミエは静かに立っていた。
だが次の瞬間。「……っ」左腕に、遅れて熱が走る。じわり、と炎の感覚が滲む。視線を落とすと、先ほどチーディが斬りつけた傷口から、微かに赤い火が残っている。完全に消えていない。ウーミエは小さく息を吐く。「……ふっ」黒い瞳が細められる。「あの小僧……」腕に残る炎を見つめながら、静かに呟く。「当初の“あの人”によく似ている」砂漠の風が吹き抜ける。「力も、あいつに劣らない」残火がまだ消えない。「……あの闘志もな」ウーミエはゆっくりと腕を握る。その火を、あえて消さずに。「師匠、俺たちは――」その瞬間。チーランは反射的に両手を構えた。「水!」鋭い水流がライトへ放たれる。「うわっ!」ライトは慌てて身をかわす。背後でジェンシャンが苦笑する。「危な……前に立ってなくてよかった」「ちょっと待て! チーラン、俺は本物だ!」「どうやって信じろっていうの? また変装だったらどうするの!」疑いはまだ解けていない。ジェンシャンが一歩前に出て、聖剣と核心を差し出す。「これ、君のだろ?」チーランの目が見開かれる。「……私の聖剣と核心」それを受け取ると、彼女はようやく構えを解いた。「それより……」ライトがチーディを支え直す。「お前の兄さん、かなりやられてる」「え!? 兄さん!」チーランはすぐに駆け寄る。「師匠! お願い!」
師匠は静かにチーディを受け取り、治療を始めた。しばらくして―― チーランが不安そうに問う。「……師匠、兄さんは?」「命に別状はない。ただの負傷だ。大事には至っていない」チーランは胸をなで下ろす。「よかった……」師匠は視線を落とした。「詳しい話は、目が覚めてからだな」道場の外―― ライトは苛立ちを隠せず、拳を握りしめていた。「ウーミエはいったい何を企んでるんだ……?目的は何だ? あいつの言ってた“計画”って何なんだよ……!」そこへチーランが歩み寄る。「ライト……今回は兄さんを助けてくれてありがとう」ライトは少し照れくさそうに笑う。「はは、気にすんなよ。仲間だろ? そんなに改まらなくていいって」そのとき、休憩室の方から物音が聞こえた。「……誰かいるのか?」「兄さん!? やっと目覚めたのね!」チーランが駆け寄る。「ちょ、ちょっと待て、そんなに揺らすな……!」チーディはまだふらつきながらも起き上がった。「無事でよかった……」ライトが胸を撫で下ろす。チーランがすぐに問いかける。「兄さん、変貌の元素はどうなったの?」チーディの表情が曇る。「……ウーミエに吸収された」場の空気が一瞬で重くなる。「このままだと……どうなるんだ」ライトが低く呟く。「師匠、あいつはどうやって封印を解いたんですか?」師匠はしばらく沈黙した。「……わからん。だが、おそらく剛力の元素が手助けしたのだろう」「剛力……」チーディは拳を握る。「今のあいつは桁違いだ。交戦してはっきりわかった……実力差が、まるで断層みたいに開いている」その言葉に、誰も反論できなかった。師匠が静かに言う。
「……続きはまた別の日だ。今は養生しろ(ようじょうしろ)、チーディ」チーディは悔しそうに目を閉じた。「……はい」




