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神の器  作者: ハルサメ
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第50話

 最上階にいた誠の下層への進み方は、降りるというよりは落下する、と言った方が正しかった。


 レーザーがあけた穴は神の場所に直通になっている。


 所々壊れ果てているが、何とか足場にしながら、落下を繰り返す。


「ん……社!」


 下を見ていた誠は、神の回りをうごめく人影を見つけ、二階部分で落下を止めた。


 声に反応した社は誠を視界に納めると、神から距離を取って誠の傍へとたどり着く。


「そっちは終わったのか?」


「イオは飛鳥に任せた。それでこいつはどうなってる?」


「どうもこうもあれが神だよ。やつら人間と神器を融合させて、足りない神力を生命エネルギーで代替し、神器の中にいる神を召喚したんだ」


「そんな事が出来るのか?」


「原理的にはイオの延命と近い。神一柱分の神力の供給ができれば、可能だ」


「一柱分って」


「ざっと平均的な人間で百人分の生命エネルギー。私と戦っていたコンステラチオンの構成員全員の命であの神は召喚された」


 社の言葉に流石の誠も言葉を失った。


「でも一度死んだ神だ。自我は完全に崩壊しているし、だからこそあんな知性の無い動きばかりを繰り返す。暴走してるんだよ」


 一階ロビーで立ちすくんでいる神は、動物的な動きを繰り返している。今まで相手をしていた社を探しているのか。


「自己崩壊するほどのフルパワーな分、こっちはそれに対抗できない。放って置けば勝手に自爆するけど、ここら辺一体焼け野原になるだろうね」


「んなもん却下だ却下。それにイオの延命に近いって事は、今のあいつは神一柱分の神力をもってるって事だろ? ならその神力貰っちまった方が得じゃねえのか?」


「あぁそれね、イネーヴァと同じ思考回路だよ」


「……一気にやる気を削ぐ事言うんじゃねえよ」


 憎まれ口を叩くが、そうでもしないとやってられない。


 先ほどからあの神が発する強力な神撃が襲っているのだ。


「じゃああの神力が残っているうちに、ケリつけねえとな」


「僕があいつを引きつけて、隙を作る。その間に君があいつの神核を叩く。簡単だろ?」


 今の奴に直接殴りつける距離まで近づくのは難しい。それ故、社が囮になることで奴の注意を十分引きつける。


 それは社があの砲撃に更に晒され続けるということになる。


 そこを気遣うような真似は、しない。


「よろしく頼んだ」


 するのは、信頼することだけだ。


「……よし。お前は頃合を見て下に下りろ。じゃあ、始めようか」


 かみ締めるような間をおいて頷き、社の姿が消え去った。


 社が、自身の存在感という認識を殆ど消し去ったのだ。


 誠はロビーにいる神を見る。それはいまだ空気を振動させるほどの神撃を放ちながら、周囲を不規則に警戒している。


 今ここで飛び込んで、奴のレーザーを掻い潜り神核を叩くヴィジョンを浮かべるが、途中であやふやになって消滅する。


 いくら能力を消し飛ばせると言っても、同量の神力を当てる必要があり、あのレーザーを相殺できるかと言われると、自信が持てない。


 ここまで自信の無いミッションは久しぶりだ。


 そこでロビーの入り口付近に、社が姿を現す。だが、それを見て誠は直ぐにあれが虚像であることを見抜いた。


 イエーガーの能力は他者から見た自分の認識をずらすと言うもの。それが抽象的であろうが、具体的であろうが関係ない。


 このイエーガーは以前の飛鳥のように虚像を写し、本物は別の場所に控えているのだ。


 だがそんなもの、奴には関係がなかった。


 その口から、先ほどの光線が放たれる。直径ははるかに小さい。


 だがその衝撃は、それなりに離れている誠のところにまで届いた。


 光線が通過した虚像はそのまま消滅する。だが直ぐにその近くに新たな虚像が生まれる。


 それを幾度となく繰り返す。


 すると奴は痺れを切らしたのか、今まで二足歩行だったものを、四足歩行に切り替えた。


 両手を前足のように展開し、体を十分に固定する。


 でかいのが来る。そう予期した誠は場をより注視した。


 社を信じるならば、この後に奴に大きな隙が出来るはずである。


 奴の動きが変わったことに応じて、社の虚像が消える。


 社―これはおそらく本物である―は奴の背中側であるエレベーターの方に、姿を現す。


 そしてそのまま天井に向けて跳躍する。


 やつは社の方向に姿勢を動かす。反対側を向き、そして宙に飛んだ社に標準を定める。


 奴の口に光が集まり出したところで、誠はロビーへと躍り出た。


 着地した時、奴の特大のレーザーが社を飲み込んだ。


 だがそれに気を取られている暇はない。顔を上に向けている奴の胸部は、誠の目の前にある。


 緑色に光る球体が、さらけ出されている。


 そしてやつは特大のレーザーを放ったことで、しばらく動きが鈍っている。


「これでぇーー終わりだあぁぁぁ!!」


 そこで、奴の口が一瞬早く誠を捉える。


 だが―レーザーが放たれるよりも前に、誠の拳が神核へと叩き込まれた。

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