第1292話 蘇る影なる少年(2)
「『死者復活の儀』、執行」
女が儀式を実行する言葉を述べると、祭壇と方陣が光を放ち胎動した。これで儀式は開始された。後は影人が蘇るのを待つだけだ。
そして、これもちなみにではあるが、レイゼロールが行った2度目の「死者復活の儀」の時には、祭壇からエネルギーの柱が天に伸び、空の模様を変えたが、今回は柱も立ち上がらず、空の模様も変わっていない。それは儀式の規模の違いから来る、現象の違いだった。
「ふふっ、もう少し。あと本当にもう少しだ。ああ、影人。早くお前に会いたいよ」
女はニコニコと笑みを浮かべながら、影人が蘇るのを待った。その顔はまさに恋する乙女の顔そのものだった。儀式が誰にも邪魔されないように、既にこの周囲一帯には力を漏れ出させない結界と、人払いの結界も張ってある。だから、女は何の心配もなく儀式を待つ事が出来た。まあ、それでももし邪魔をする者が現れたとしたら、何人たりとも殺すだけだ。人間だろうが、神だろうが、怪物だろうが、悉く全て。
「ふんふふーん♪」
女は上機嫌も上機嫌だった。鼻歌を歌いながら、ずっと祭壇を見つめ続ける。待つ時間は女にとって苦痛には全くならなかった。むしろ、待つ時間すらも愛しい。
それから約2時間後。
「うん? もう夜明けか」
太陽が空に昇り始めた。女は昇り始めた太陽をチラリと見つめながらそう言葉を漏らす。儀式は普通ならば1時間と少しばかりで終わるが、その倍近くの時間が既に経過しているのは、影人がその存在を現在消されてしまっているからか。
太陽が昇り始め1日が始まりを告げる。儀式に変化が訪れたのは、そんな時だった。
突然、祭壇と方陣が一際強く輝き始めた。
「っ! ようやくかッ!」
女が抑え切れない歓喜の声を漏らす。光は更に輝きを増し続ける。同時に、祭壇に供えられている供物も光を放ち始めた。供物の光も徐々にその輝きを増していく。
祭壇の光と供物の光、それと方陣の光がこれまでで1番強い輝きを放つ。祭壇、供物、方陣の3つの光が共鳴し、やがてそれらの光は供物の光へと引かれ始める。3つの光が合一する。光はやがて人の形へと姿を変える。
そして、
「・・・・・・」
光が収まる。祭壇と方陣は役目を終えたように、跡形もなく消え去った。すると、その代わりにそこには1人の人間がいた。
その人間は見たところ10代後半の少年のように見えた。服装はそれが少年が最後に着ていた服装だからだろうか。ブレザータイプの制服を着ていた。
その少年の最も特徴的だったのは、その前髪の長さだった。顔の上半分が長い前髪に覆われており、少年の目は完全に隠れていた。
「・・・・・・・・・・・・ん?」
そして、その少年――帰城影人は、長い前髪の下の目を見開いた。




