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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1293/2162

第1293話 蘇る影なる少年(3)

「なん・・・・・・だ・・・・・・? 俺は・・・・・・」

 覚醒した影人は自分の体や手を見下ろした。何だかずっと長い夢を見ていたような気がする。ただ闇を彷徨っていたようなそんな夢を。

「ああ、ああ・・・・・・この時を待ち望んでいたぞ。久しぶり、久しぶりだな・・・・・・吾の愛しい玩具。吾の愛しい者・・・・・・なあ、影人!」

 蘇った影人を見た女は嬉々とした様子で影人にそう語りかけた。成長し、女の記憶の中の姿とは異なっている影人。前髪もあの頃よりかなり長くなっており、その顔の上半分は見えない。だが、魂で分かる。目の前の今蘇った少年は間違いなく、女が唯一その心を惹かれた人間だ。

「っ・・・・・・? な、なんで・・・・・・なんで、お前が・・・・・・」

 自分の名を呼ばれ、正面にいる女に気がついた影人は呆然とした顔を浮かべた。忘れるはずがない。目の前にいる透明と白を纏う女の姿を。影人の中の禁域。その中に封印していた記憶が否応にも溢れ出てくる。


「なんでてめえが俺の前にいるんだ・・・・・・! お前は俺が封じたはずだろッ・・・・・・! 《《零無》》ッ!」


 影人は抑え切れない怒りを抱きながら、女の名前を呼んだ。

「ふふっ、そうだ。吾の名前は零無れな。お前が吾につけてくれた、お前しか呼ばない名前。ああ、お前にそう呼ばれて、吾は本当に本当に嬉しいよ」

 影人に名を呼ばれた女――零無は明るく笑いながら影人にそう言葉を返した。

「感動の再会だ。どうだい影人? 場所も吾とお前が出会った場所、この神社にしたんだぜ。まあ、あの時あった石は吾の封印が解けると同時に、砕けてしまったがな」

「そんな事はどうでもいいんだよ! 問題はてめえが俺の前に存在してる事だ! クソがクソがクソがッ! ふざけるなよ! 俺がどんな思いしててめえを封じたと思ってる!?」

 怒りと憎しみの炎が、影人の中からとめどなく燃え上がる。影人は前髪の下の両目で零無を睨め付けながら言葉を叫ぶ。影人がここまで怒りと憎しみを露わにするのは零無くらいだ。それ程までに、影人は零無の事を憎んでいた。

「まあまあ、そんなに吾に感情をぶつけないでくれよ影人。照れてしまうぜ」

 だが、影人から凄まじい怒りと憎しみをぶつけられている当の本人はどこ吹く風といった感じだ。零無は言葉通り、少し恥ずかしそうな顔になる。その零無の様子が、更に影人の怒りと憎しみを増長させる。

「っ、てめえのそういうところが・・・・・・! 俺は心底嫌いなんだよ・・・・・・!」

「嫌よ嫌よは好きの内。嫌いは好きの裏返し。分かっているよ影人。お前の気持ちは。吾もお前の事は好きだよ」

 歯軋りをしながら影人が言葉を吐く。その言葉を聞いた零無は、まるで話が通じていないかのようにそんな言葉を返して来た。影人は吐き気を覚えた。

「・・・・・・本当に、何でお前の封印が解けてるんだよ・・・・・・! よりにもよってお前の封印が・・・・!」

 影人が全てに絶望するようにそんな言葉を漏らした。その言葉に、零無はこう返答する。

「おやおや、覚えていないのかい影人? お前はシトュウに頼んで、自身をこの世界から消去した。世界改変の力によって、お前の存在は初めからなかった事にされたんだ。その結果、お前が封じた吾の封印も解けたというわけさ」

「っ・・・・・・!?」

 零無からそう聞かされた影人がハッとした顔を浮かべる。瞬間、影人は思い出した。自分が消える前の最後の記憶を。

「そう・・・・だ・・・・・・俺は、あいつに頼んで死ぬと同時に・・・・・・」

 最後に見たのは、泣きじゃくるソレイユの顔。そうだ。自分は既に死んでこの世界から消えたはず。なのになぜ、自分はこうして生きているのか。影人には訳が分からなかった。

「何で、俺は生きてるんだ・・・・・・?」

 影人は再び、どこか呆然としながらそう言葉を呟いた。

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