第1287話 ただ1つの願い(2)
「少し長くなってしまったが、これが今の吾の行動理念だ。死した人間を生き返らせる事は禁忌だが、真界には何の問題も起こらないだろう? だから、許せよシトュウ。この吾をな」
女はシトュウにそう言い残すと、右手を虚空に向け黒い門を開いた。そして、女はその門の中に身を入れようとする。
「っ、行く気ですか・・・・・・全ての消えた存在が辿り着く、『虚無の闇辺』へと・・・・・・ですが、いくらあなたといえど、あの無限の虚無の闇の中に揺蕩う、帰城影人の残滓を探す事は不可能なはずです」
「それについては、アテがあるから大丈夫だよ。お前の言う通り、最終的には吾は『虚無の闇辺』に行くつもりだ。だがその前に、奴に聞かなければならない事があるからな。少し寄り道するよ」
女はシトュウの問いにそう答えると、最後にシトュウにこう言った。
「さらばだシトュウ。また会う事もあるだろうぜ」
そして、女は黒い門を潜り「空の間」からその姿を消した。女が潜ると、黒い門は溶けるように虚空に収束した。
「あなたは、本当に・・・・・・」
女が去った後に、シトュウは変わらず地面にへたり込みながら、ポツリとそう言葉を漏らした。
「さて、残りの業務は・・・・・・」
冥界。天の国と地の国を包括する、いわゆるあの世と呼ばれる世界。その世界の最上位の神である、レゼルニウスは自分の住居の執務室で、黒い豪奢な椅子に腰掛けていた。元々、レゼルニウスは地上の神であったが、人間に殺されてしまったためにこの冥界に来て、気づけばこの世界の最上位の神となっていた。
だが、レゼルニウスの妹であるレイゼロールや、神界の神々たちはその事を知らない。基本的に、冥界の神は他の世界に干渉できないからだ。
「・・・・・・なしか。じゃあ今日の仕事は終わりだな。よし、なら地上にいる可愛い妹の様子でも・・・・」
だから、レゼルニウスは一方的に、こっそりと冥界から地上世界を観察していた。冥界の神は他の世界に干渉は出来ないが、地上世界を見守る事は出来る。レゼルニウスは、空間にウインドウのような物を出現させ、地上にいるレイゼロールの様子を見ようとした。
だが、
「よう、レゼルニウス。ちょっとお前に聞きたい事がある。悪いが、吾の質問に答えてもらうぜ」
突如として、レゼルニウスの部屋の中央に黒い門が出現し、その中から透明の瞳の女が現れた。女は気安い態度で、レゼルニウスにいきなりそう語りかけて来た。




