第1275話 平和な世界、予兆(2)
「まだ1年先だけど、香乃宮くんは進路どうするの? やっぱり進学?」
「うん。一応、そのつもりだよ朝宮さん。でも、まだ本格的な受験勉強は初めてないけどね」
「香乃宮くんは頭がいいからきっと大丈夫よ。まあ、私たちはさっき話し合ってたんだけど、気合いで頑張る事にしたわ。結局、私たちにはそれしかないから」
「あはは、月下さんと朝宮さんがそう決めたなら、まず間違いなく大丈夫だよ。だって君たちは、その気合いと頑張りでレイゼロールを浄化して、世界を救ったんだから。その世界を救った気合いと頑張りがあれば、何だって出来るよ」
「それは買い被り過ぎだよ香乃宮くん。私たちがレイゼロールを浄化出来たのはみんなのおかげ。全世界の光導姫や守護者。『終焉』の闇から私たちを守ってくれた、シェルディアちゃんやしえらさん。それに、最後は私たちに協力してくれた闇人。みんな。もちろん香乃宮くんも」
「陽華の言う通りよ。私たち、そこだけは履き違えないから」
光司のその言葉に、陽華と明夜はキッパリと首を横に振った。それは2人の本心だった。
「うん、そうだったね。ごめん。でも、君たちが大きな役割を担った事は事実だ。だから、それは自信にしてほしいな」
2人のその本心を傷つけないように、光司は2人にそんな言葉を送った。
「ありがとう、香乃宮くん。そう言ってくれる人がいるなら、そこはちゃんと自信にするよ」
「本当、気配り上手なボーイよね香乃宮くんは。イケメンで気配り上手で、その他諸々の美点あり。うーむ、香乃宮光司は化け物か・・・・・」
光司の言葉を聞いた陽華と明夜はそんな言葉を述べた。相変わらず、明夜は色々ズレた感じだが、まあそれが月下明夜という少女だ。
そうこうしている内に、3人は「しえら」の前に辿り着いた。光司がドアを開け、3人は店の中に足を踏み入れた。
「・・・・・いらっしゃい」
喫茶店の中に入ると、店主である女性――その正体は、真祖と呼ばれる吸血鬼――この喫茶店の名前と同じ名前のシエラが、そう言って3人を迎えた。
「あら、陽華に明夜。それと、あなたは元守護者だったわね。ふふっ、奇遇ね」
「げっ、元光導姫に元守護者・・・・・」
3人の姿を見てそう言葉を漏らしたのは、カウンター席に座っていたシェルディアとキベリアだった。2人はお茶をしていたのか、カウンターの上には紅茶とコーヒーが置かれていた。2人以外には、他の客の姿は見えなかった。
「あ、シェルディアちゃん。こんばんわ!」
「キベリアさんもこんばんわ」
「・・・・どうも」
陽華と明夜は何でもないように2人にそう挨拶し、光司は少し硬い表情で軽く頭を下げた。
「ええ、こんばんわ」
「はあー・・・・どうも」
3人に挨拶されたシェルディアは笑みを浮かべ、自身も挨拶の言葉を返した。キベリアはため息を吐きながらも、3人に一応そう言葉を返す。
「シェルディアちゃんも、このお店によく来るようになったよね。これで、このお店で会うのも3回目くらいだし」
「ええ、まあね。あの戦いが終わってまだこの世界が続いていたら、シエラの店にお茶に来ると約束してしまったのがきっかけだけど、思っていた以上にお茶も食べ物も美味しかったから、そのまま通っているという感じね」
陽華と光司と共に4人掛け用の席に着きながら、明夜がシェルディアにそう話しかける。明夜の言葉に、シェルディアは小さく頷きながらそう答えを返した。




