第1010話 カケラ争奪戦 イタリア6(3)
「ありがとう。うん。やっぱり君はいい奴だね。フェリートとか殺花は君の事を嫌ってるけど、俺は君の事やっぱりけっこう好きだな」
「ふん。別にお前の俺に対する好感度はどうでもいいんだよ。・・・・・ただ気になっただけだ」
笑顔でそんな事を言ってきたゼノに、影人は顔を逸らした。別に恥ずかしいからとかではない。本当は敵であるはずの人物から、礼を言われるのが気持ち悪いだけだ。
「それよりもレイゼロールの奴はどこだ? 視界内には見えないが・・・・・・・・」
影人は周囲を見渡した。周囲の崩れた観客席であったであろう場所にも、真ん中の半分舞台のようになっている場所や、中心の遺跡部分にもレイゼロールの姿は見えなかった。すぐに後を追ったはずなのにだ。
「さあ? でも、レールがカケラを見つけたらすぐに分かるはずだよ。だって――」
ゼノが言葉を紡いでいる途中だった。2人は突然、凄まじい闇の力が世界に奔ったような感覚を感じた。
「今みたいに俺たちは感じるからね」
「・・・・・そうだな。これでレイゼロールが吸収したカケラは8個目か・・・・」
ゼノの言葉に影人は頷いた。ファレルナは残念ながら間に合わなかったが、まだ焦る時ではない。影人の本命は次の9個目のカケラか、最後の10個目のカケラだからだ。
影人とゼノがそんな話をしていると、中心部の遺跡部分からレイゼロールが黒い翼を羽ばたかせ飛び出してきた。
「どうやら、首尾よくいったみたいだな。どこ行ってたんだ?」
「地下だ。石柱に埋め込まれていた。用事は済んだ。『聖女』が来る前に帰るぞ」
影人の問いかけにレイゼロールは素直にそう答えた。レイゼロールは影人とゼノの前に降り立つと、そう言って虚空に手を向けようとした。
だが、
「もう逃がしはしませんよ」
不幸な事にそのタイミングで、ファレルナがコロッセオ内の空に現れた。
「ちっ・・・・・・・・」
「・・・・そう全てが上手くはいかないみたいだな」
「そうみたいだね」
ファレルナを見たレイゼロールは舌打ちをし、影人とゼノはそんな言葉を呟いた。ファレルナの身に纏う白い光が再びレイゼロールたちを照らす。闇を扱う3者は再び弱体化の影響を受けた。レイゼロールも先ほど言っていたように、この状況下では繊細な力のコントロールを伴う転移は使う事が出来ない。
「これ以上逃げられても困るので、ここで勝負を決めさせてもらいます」
ファレルナは上空からレイゼロール、影人、ゼノを見下ろし揺るぎない口調でそう言うと、両手を合わせ、目を閉じ、祈るような形になった。
「主よ、光よ、私は祈りを捧げます。私に出来る事はただ祈る事だけ。願う事だけ。遍く罪を、闇を照らす暖かな光。この身に宿る全ては贖いのために」
ファレルナが言葉を唱える。すると、ファレルナの3対6枚の羽が大きく広がり、信じられない事に天からファレルナに向かって光が差した。夜だというのに、天から光が差す。太陽の光ではない。尋常ならざるその光景はまさに奇跡のようであった。
「「「っ・・・・・・・・・!」」」
レイゼロール、影人、ゼノは急激にこの場の浄化の力が高まっている事を感じた。その証拠に、ファレルナの纏う白い光はその輝きが更に増した。
「全ては平等に救われる。例え闇に染まった者でもそれは変わらない。それが光の慈愛」
ファレルナの纏う白い光が、ファレルナを中心に美しい円形へと形を変えた。かなり大きな円形だ。
「慈愛の光はいま開く。主の奇跡の一端をいまここに」
天からの光。ファレルナの周囲の円形の光。それらが夜を照らす。ファレルナの浄化の力が最高潮にまで高まる。
「これは・・・・・本当にダメなやつだな」
ゼノは真剣な顔でそう呟くと、再びあの力を使用した。ゼノの全身から闇が噴き出し、周囲の物質が壊れ始め闇の粒子となってゼノに吸収されていく。そして、髪も半分ほど黒色に染まった。




