第1008話 カケラ争奪戦 イタリア6(1)
「コロッセオ・・・・・・・・・? それはまた何というか・・・・・有名な場所だな」
レイゼロールから教えられたカケラの気配を感じるという場所。その場所の名前を聞いた影人は、ついそんな感想を漏らした。
「へえ、コロッセオにあるのか。あそこには昔何回か行ったことがあるけど、知らなかったな」
ゼノも呑気にそう言った。影人とゼノ、2人の感想を聞いたレイゼロールはこう言葉を述べる。
「とにかくそういう事だ。移動する。だが、転移は出来そうにない。『聖女』の光のせいで、我も弱体化し、少し力が不安定になっている。転移は力のコントロールが繊細だからな。そのような状態では色々と難しい。ゆえに、駆けるぞ」
レイゼロールはそう言うと、身を翻しコロッセオの方へと凄まじいスピードで駆け出した。あの速さは間違いなく『加速』の力を使用している。
「は・・・・・? ったく、急すぎるだろ・・・・!」
「レールたまにああいうところあるからね」
既にかなり先に進んでしまったレイゼロールに、影人とゼノはそれぞれの反応を示す。そして、影人とゼノもレイゼロールの後を追うべく走り始めた。
「っ? 逃走した・・・・? いや、これは――」
(カケラの場所をどこか特定しやがったか!)
レイゼロールたちの行動を見てそう直感したのは壮司だった。エリアも、ここに来る前にラルバに聞かされた事を思い出し、レイゼロールが何かを見つけたと考えた。そして、それは宙に浮かぶファレルナも同様だった。
「思い通りにはさせません・・・・!」
ファレルナは翼を羽ばたかせレイゼロールたちを追った。チラリと後方を振り返り、ファレルナが追って来るのを見た影人はゼノにこう聞いた。
「おい、お前もっと速く走れないのか? このままじゃ途中で追いつかれるぞ」
「悪いけど難しいな。俺、身体能力上げるような力は持ってないし。これでもけっこう全力だよ」
ゼノの速度はかなりのものだが、それは所詮闇人として身体能力のみの速さだ。当然普通の人間の速度とは比べ物にならないが、レイゼロールや影人の最高速度には遠く及ばない。影人は今ゼノにスピードを合わせているが、このままだとファレルナに追いつかれるのは間違いない。
「ちっ、なら仕方ねえか。・・・・・・・・おい、ゼノ。1回その纏ってる闇を引っ込めろ。後、全身の『破壊』の力も解除しろ。癪だが俺がお前を運ぶ」
「え、嫌だよ?」
「言ってる場合かてめえ! さっさとしやがれ!」
「えー・・・・・はあー、分かったよ」
ゼノはため息を吐くと、自分の力を全て解除した。途端、ゼノの全てを破壊し喰らう闇が解除され、ゼノから噴き出し、吸収されていた闇も消える。そしてその闇で構成されていた偽腕も消え、ゼノは隻腕に戻った。左の黒腕も普通に戻り、髪の色も元に戻る。
「運ぶ格好に文句は言うなよ。俺も嫌なんだからな・・・・・・!」
影人はどこか覚悟を決めたような顔になると、右手をゼノの背中に、左手をゼノの太腿辺りに伸ばした。
そして、影人はゼノを両手で抱え、地を蹴り空を飛んだ。走るよりもファレルナのように飛んだ方が速いと思ったからだ。
「・・・・・・・・・・ねえ、これってさ・・・・・」
「言うな。それ以上は言うんじゃねえ。咄嗟に出来るのがこの方法しかなかったんだ・・・・!」
ジッと影人の顔を見つめて来るゼノに、影人は嫌そうな、どこか恥ずかしそうな声でそう言葉を絞り出した。
要は、影人がゼノを抱えている格好が、いわゆるお姫様抱っこというものだからだ。まあ、それはそういう空気になるというものだろう。普通に気まずいし恥ずかしい。
「光よ!」
なんとも言えない空気になっている事などお構いなしに、ファレルナは影人たちに向かって光の帯のようなものを複数飛ばしてきた。




