第1006話 カケラ争奪戦 イタリア5(3)
(やっぱ、このチャンスを逃す手はないよな。俺はこんな厨二臭い、いかにも闇サイドですって格好してるが実は守護者だし。光による弱体化の影響なんてない。スプリガンを殺せるなら今だ。スプリガンがいなくなれば、レイゼロールも殺しやすくなる。さっきの言葉だと、レイゼロールが手を出してくる様子はない。・・・・・今日はスプリガンを排除する事に専念するか)
現在の状況を改めて考えた壮司はそう結論した。元々、ラルバが望んでいるのはレイゼロールの死だった。しかし、スプリガンという存在が現れてからは、ラルバはスプリガンがレイゼロールを殺すのに邪魔な存在になると考えていた。初めは謎の怪人ゆえに何をするか分からない。どちらの味方か分からないという理由からだった。釜臥山で壮司がスプリガンを襲った理由はそのような理由からだ。この時点で、スプリガンは殺せるならば殺すくらいの位置付けだった。
しかし、現在は明確にスプリガンがレイゼロールの味方になり確定で邪魔な存在になった。しかも、ここ最近は明らかにスプリガンはレイゼロールを守るように動いている。スプリガン程の力を持つ者がレイゼロールを守れば、壮司がレイゼロールを殺せるチャンスは格段に減る。ゆえに、現在のラルバの目的はレイゼロールとスプリガンの死というものに変わっていた。今回、壮司はその目的の内のスプリガンの死を取るべきだと考えたわけだ。
「・・・・・・・・」
壮司は黙って大鎌を構えた。近距離戦でスプリガンに勝つのはほとんど不可能だという事は理解している。しかし、壮司はこの大鎌でまぐれでも一撃を入れればその瞬間に勝ちだ。ゆえに、勝負はいつだって分からない。
「・・・・・そうか。やっぱり来るかよ。なら第2ラウンドだ」
影人は面倒くさげにため息を吐く。もしかしたら今回は状況が状況だけに(ゼノとファレルナの大怪獣バトルの余波の事。ただし、このネーミングセンスは前髪による)、もしかすれば撤退してくれるかもと期待していたが、それは影人の淡い期待だったようだ。影人は黒フードを見つめると、こう言葉を紡いだ。
「闇よ、我が肉体を『加速』させろ。闇よ、我が眼に宿れ」
影人がそう呟くと、影人の瞳に闇が揺らめいた。既に身体能力の常時強化はしているため、その詠唱はしない。そして次の瞬間、影人は自身の肉体を『加速』させ、凄まじい速度で壮司に近づき左の蹴りを放った。
その神速に近い蹴りを、壮司はほとんど反射的に避けた。普通なら壮司はその蹴りを避けられるはずはなかった。壮司がその蹴りを避けれたのは、レイゼロールや普段のスプリガンの攻撃よりも少しだけ、少しだけ遅かったからだ。
(っ、避けられた・・・・・!? ちくしょう、やっぱり身体強化や『加速』の力の倍率が普段よりも下がってる感じか・・・・・・・! 聖女サマめ、やっぱりとんでもねえ奴だぜ・・・・・・・・・)
壮司に蹴りが回避された事に内心驚きながらも、影人は同時にそんな分析をした。ファレルナの光、今はその身に纏う白い光によって、影人は依然弱体化の影響を受けている。それが、壮司に蹴りを避けられた最も大きな原因だという事を、影人は自覚していた。
(あっぶねえ・・・・・! だが、俺がこの一撃を避けれたって事は、やっぱりスプリガンはかなり弱体化してやがるな。レイゼロールやスプリガンのイカれた速度の攻撃を何回も体感した甲斐があったって事か。よし、これならいけるかもしれねえ・・・・!)
壮司はほんの少しだけ口角を上げた。やはりチャンスは今だ。壮司は刈り上げるようにその大鎌を振るった。影人はその一撃をギリギリで回避した。
(ちっ、やっぱ眼の方もいつもより調子が悪いか。だが使えないよりかはマシだ)
いつもは眼の強化をすれば、世界がスローモーションに映るが、今回はそのスローモーションの倍率とでも言うべきものが低いのか、多少スローに映るくらいになっていた。それでも、影人が思ったように充分なアドバンテージだが、やはりダメージを受けただけで即死というこの状況において、不安がないと言えば嘘になる。
「光よ、息吹となって吹き荒れて」
影人と壮司が戦いの第2ラウンドを行なっている間にも、当然ゼノとファレルナの戦いは続いている。ファレルナがそう呟くと、ファレルナの6枚全ての羽が大きく前方に羽ばたいた。すると、凄まじい浄化の力を宿した風が起こり、ゼノに襲いかかった。




