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救世ちゅっ! ~Break a Spell~  作者: 大野はやと
第二章、『かえってきた救世ちゅ』

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第96話、魂の入れ替わりは、はたして真かあるいは振りなのか



SIDE:ローサ




「はぅあっ!?」

「……っ! これ、急に声を上げるでない。びっくりするだろう」

「急にどうしたの? ローサさんがそんなかわいい声をあげるなんて」

「いえ、何だかとってもステキなスチルを見逃してしまったという残念な気持ちと、とうの昔になくなっている尊厳を奪われてしまいそうな予感が同時に襲ってきたものですから」


といいますか、全くもってかわいい気配などなかったと思われますが。

まぁ、間抜けっぽいのをそう称したいのならば分かりますけれど、セラノさんはそんな事を言う娘じゃないですからね。

男性より女性を好ましいと思っていらっしゃるセラノさんがそうおっしゃるのですから、今のわたくしも大分板についてきたと言うことなのでしょう。


などと言いつつも、実のところを申しますと、しっくりくるようになってきたのは確かなのです。

お兄様……サーロからわたくし、ローサに変わったばかりの頃は、あくまでガワだけが変わっていて。

魂は男の子なのだと思い込んでいる節がありましたが、セラノさんとは少々毛色の違う形で男性が苦手なルキアさんが、その様子すら見せずにスキンシップをわたくしに対してお取りになっていることで改めて気がつかされたといいますか……。


わたくし、思い出したのです。

そもそも、わたくしとお兄様の種族である『レスト』とは、魂が入れかわりし種族と言われていて。

きっかけ、状況に応じて魂を、体ごと入れ変えることのできる、世にも奇妙な存在であると言うことを。


ですから今のわたくし、ローサはサーロでありながらも別人と言えるのです。

故にこれで堂々とお風呂や寝室を皆様とともに……することは恥ずかしくてできませんが。

十中八九、その嘘のつけない性格上、わたくしがローサであったことを知らないルキアさんやウルルさんに。

イゼリさんはゲロ……失礼、おしゃべりになっているでしょうし、言い訳は立つというものでしょう。



「ふむ、よく分からんが、どうせまたラルさま絡みであろう?」

「まぁ、否定はできませんね。でも多分、ラルさまの我が儘による被害は、わたくしだけに留まらないとは思いますが」

「被害とはまた、穏やかじゃないの」

「何でしょう。ラルさまからのものなら、その、ええ。わくわくしますね」


ラルさまの、ある意味で破天荒っぷりを、レミラさんもセラノさんも思い出していたのでしょう。

素直に嫌そうに身震いしているレミラさんに、思ったより強いと言うか、図太い感じのセラノさん。

こうして、一緒に旅を、ラルさまのお供をしていますと、不思議な連帯感があるといいますか、

今まで知れなかったみなさんの、様々な面が見られて楽しいですね。


兄さま……サーロのままであったのならば、きっとこうはいかなかったことでしょう。

それも結局は、ラルさまがいたからこそと言えて。




そんなわたくしたちは今、イゼリさんの故郷でもある『フーデ』国の、総合ギルドなる場所へと来ています。

国の地下一帯に広がっているらしいダンジョンや、フーデの王、獣王の一族が過ごすと言われる王城に次ぐほどの大きさの建物で。

商業や冒険者などから始まって、あらゆるものが一緒になっている、そんなギルドの最上階にて調べ物をしていました。


これから向かうこととなる、闇の一族(レミラさんのお家、エクゼリオ家とは親戚ですらない別物、だそうです)が暮らしていると言われる『ボークジュ』の国についてですが。

その、一見平和に見える世界に迫り来る危機と、それを封ぜるための12人の乙女とは、一体どんな役割を持っていて、何を成せばいいのか。

調べる、という意味合いもありました。



そんなわけで、その事を最初に口にしていたリーヴァさんは、自身でも曖昧で半信半疑なところがあったらしく。

ギルドに所属している一人として、ギルドの内側からもう一度確認、調べてもらうことになっていて。



一方でレミラさんの妹分にして【ヴルック】の魔に愛されし人の形でもあるノアレさんは、これから『ボークジュ』の国へ行くと言うことで。

せっかくだからそのついでにと言うおはあれですが、せっかくギルドに来たのですからとその行程でできる仕事がないか探してもらっていました。

なんて思っていましたら噂をすれば。

ノアレさん戻ってきましたね。


「おぉ、どうだった妹よ。何か具合の良い仕事は見つかったかの?」

「そうですネ。報酬としてはあまり望めませンが、『ボークジュ』へ荷物を運ぶシゴトをいくつかピックアップしてきましタよ」


『ボークジュ』の国へ向かう人の護衛や、街道に出るモンスター退治、さほど大きくない手紙などの荷物の配達など、多種多様な依頼たち。

張り出している紙を片っ端から剥いでくるのではなく、しっかりメモをとってきていらっしゃるのがステキです。


ノアレさん曰く、メモ機能など搭載していてとうぜんデス、とのことですが。

わたくし少しばかり失礼ながらも勘違いしていたのかもしれません。

ノアレさんは、生まれたばかりでいらっしゃると聞いていましたが。

基本的に世間知らずなラルさまのように、勝手が分からず楽しそうな、面白そうなものをドヤ顔で持ってくる、なんて思っていたのです。


そう言うことでしたら、ラルさまの遊楽旅の負担にならない程度で、少しでも興味を引けそうなものを選びましょうかと言いかけたところで。

早速前言撤回とばかりに、無表情ぎみだったノアレさんの表情がほころびました。



「ワタクシとしましては、このイライに注目ですネ」


そう言いつつ、取り出したるはアナログなのか、ハイテクなのかファンタジーなのか。

手のひらからにゅっと出てきた羊皮紙の小さな巻物。

そこには、わざわざ古代語でメモ書きがなされています。


「なになに、この街から『ボークジュ』へ向かう街道途中まで地下が続いているんですねぇ。モンスターの巣や、盗賊さんたちの住まいにもなっていて対処が必要ですと」

「いえね、注目すべきはそれだけじゃぁないのデス。何でもこのダンジョンにはワタクシの同類、同属性によって構成されたモンスターさんたちがいるみたいなんですヨ。是非とも分解ヲ……じゃなかった、ひと目お目にかかってみたいと思いましてネ」

「地下ではありますが、一応当初の予定の道ではありますし、それほど悪くはなさそうですね。ダンジョンで手に入れたものはいただけるようですし」


ノアレさんがもったいぶって、おすすめしてきた依頼は、興味半分であるとしても悪くないものに思えました。

どうやら、『フーデ』の街の地下にあるというダンジョンには、獣人族【アーヴァイン】属性由来のものが苦手としている、【ヴルック】属性のモンスター、いわゆるゴーレムのような存在が多く徘徊しているらしく、街の人があまり近づかないことをいいことに、盗賊などの類の棲み家になっていたり、追い出されるように地上の街道などに出てきてしまうモンスターもいるようで。

そうは言っても、ダンジョンは街の資源であるからして。

定期的に冒険者、他国から来た旅人に対して、それらに対応する仕事、依頼が出ているようで。



移動するだけならば、当然街道の方が早いのでしょうが。

ラルさまがそれをお知りになれば、きっとノアレさん以上に『面白そう』だからと、やる気になられることでしょう。




「それじゃあ改めまして、その依頼を受けましょうか」

「受付へ向かうわけじゃな。われ、一度体験してみたかったのだ、あの依頼の紙をびりっとするの」

「常時依頼ですのに、そんな仕様なんですねぇ」

「姉サマなら、そう言うと思ってマシた」


そんなわけで、変わらずわいわいしながら、ギルド受付へと向かうと。

ちょうど受付の奥から、リーヴァさんが歩いてくるのが見えて。


「おぉ。リーヴァどのは真にギルド職員だったのだな」

「まぁ、それらしい方ではありますけどね」


ギルド職員の制服を着ていないから、多少浮いてはいるものの、メガネと立ち振る舞いも相まって、受付嬢さんだなぁといった雰囲気はよく出ていて。



「受付嬢サン。この依頼を受けたいとおもいマス」

「フーデダンジョンの常時依頼ですね。承りました」

「わぁ、ほんとに流れるように自然ですねぇ」

「一応、出張、出向といった形をとっていますからね。はい。受理いたしました。……って、それはともかく、私たちの旅の目的、詳細が掴めましたわ。ラルさまたち戻ったら、改めて説明するけれど、集合場所は街の中央、噴水公園のところだったわよね」


何やら手がぶれるほどの速さで、手続きを終えて。

隣にいた受付嬢さんに後はよろしく頼みますと言付けすると、リーヴァさんはそんなことを言いつつも受付のテーブル(扉がくっついている)を颯爽と開き、受付嬢フリーランスから、A級冒険者に様変わりして。


「すさまじい速サの切り替えですネ。ナルホド、参考になります、実ニ」


見た目で言えば、ノアレさんとレミラさんは、姉妹さかしまというか、どうみてもノアレさんがお姉さんにしか見えないところもあるからなのか、ノアレさんはリーヴァさんのようなデキるお姉さんに憧れているようで。


それで、ラルさまの可愛さに弱くなければいい感じなのだけど。

それに関して言えばわたくしも大差ないので、もちろんそこまでの全てを口にすることはなく。

いつの間にやら集っていたギャラリーをすり抜けるようにして、『フーデ』の総合ギルドを後にするのでした……。



   (第97話につづく)








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