第95話、モフモフな耳と尻尾が、仮面の下に隠していた可愛い本性をさらけ出す
SIDE:ラル
可愛くてもふもふ出来るだけでも有用なのに。
売っていた耳やしっぽには、それぞれ様々な効力がついていて。
一石二鳥な上に、早くみんなにプレゼント(特にローサ)してあげたいと思っていたラルであったが。
きつね耳をつけたことで、ただでさえ五感が優れているラルの、特に聴力が一層強化されてしまって。
普段なら、拾いたくても拾えない音、声まで聞こえてきて。
「……ん? この声は。助けを呼んでいる? イゼリさんっ!」
「はいっ、どうかしたの? ラルちゃん」
「この街って、地下っていうか、地面の下にダンジョンとか、広がっていたりしない?」
「あぁ、うん。地下にはダンジョンがあるはずだよ。元々この街は、ダンジョンの上につくられたっていうのもあるけど、地下を好んで暮らす獣人たちも中にはいるからね」
「なるほど、やっぱりダンジョンか。いいね。もぐってみたい……じゃなくて。誰かが助けを呼んでいる声が聞こえたんだ。ダンジョンの入口はどこにあるか分かる? お、私ちょっと見てくるよ」
「はいっ。そういうことならわたしもお供しますっ」
「凄いねラルちゃん。元々耳が良いからなのかな。その声が聞こえるのはこの辺り?」
「うん。そう遠くないと思う。同年代……いや、だいぶ下かな。女の子の声だね。近くに複数の気配があるから。モンスターとかに襲われているのかも」
「そうなのっ? それじゃ急がないと。正規の入口はちょっと遠いから……うん、地元の人が知ってる抜け道があるんだ。ついてきてっ」
三人とも、見ている限り人助け……になるかどうかも分からない(もしかしたらラルは救世主としての勘のようなものが働いて確信持っているのかもしれないが)、危険がある場所へ飛び込むことに躊躇いはないらしい。
「うふふ。そう言うことでしたらアイさまの侍女としてついていかないわけにはいきませんね」
「おいおい、私だけ仲間外れは勘弁しておくれよ。それなら早速みんなで行こうじゃないか……って、言いたいところだけど、先にローサ嬢たちに連絡しておかないと。集合場所に集合時間に、みんなして現れないとなれば、さすがに心配させてしまうだろうからね」
「それもそうだね。何かあって時間通りに戻れない可能性もあるかもしれないし……よし。
【フレア・ミラージュ】。 タイプ、『ひこう』。アイア、久しぶりでごめん。出番だよ」
「あ、あの時の水の……じゃなかった。火の神様のお仲間さんですか?」
「くぇっ!」
ウルルが思わずそう呟くように、アイアはリムと同じグラデーションのかかった炎色をしているが。
この世界にラルが降り立った時と比べると、鷲サイズが小鳩サイズ程に縮んでいたが。
それはラルが街中であるから気を使った出力を抑えているというのもあるが、いかにも形態変化できそうなリムが、火の星の人といったラルの確たるイメージに固定されてしまって、姿を変えることができないかわりに、アイアは空を駆るものであるのならば、大抵のものに変わることができる。
「うん、リムとともに私についてきてくれた頼もしい仲間さ。あ、そうだ。せっかくだからイクタの方も紹介するね。これからダンジョンに行くんだから、土竜モードでよろしくっ」
「チューっ!」
「わわ、ガイアット・モール? めずらしー」
「はとさんももぐらさんもかわいいですっ」
「もう、そんな事言ったってお花くらいしか出ないよ」
「わぁっ、きれいっ!」
「何と言う自然さ。勉強になるなぁ」
ラルは、もうほとんど名前を呼ぶくらいの手軽さで、【フレア・ミラージュ】タイプ、『地』と『木』を発動する。
生まれ出でし二体のけもの。
使い魔めいた二人と戯れるアイたちを見て、何故だかラルの方が照れ出して、髪飾り兼炎耐性のついた炎色のバラを創り出したそばからみんなに配りだす。
正しくも、それこそがラルと11の乙女たち……仲間たちのシンボルが生まれた瞬間であったが。
ラルが、照れ隠しにそんなことをしたのは、ラル自身がこれだけ様々な世界を行脚し、褒めそやし讃えられても。
まったくもって自身の魅力というものを自覚していないせいもあるが。
リムを始めとする炎色の使い魔をやってくる彼らが、ラルによって生み出された存在、分け身のようなものであるからだろう。
元々の、【フレア・ミラージュ】と呼ばれる魔法は、簡単に言うのならばラルがイメージしたものを創りだすもので。
今回、一人で出ずっぱりであったからと言う理由で、お休みしているリムは。
リカバースライムと呼ばれる種の、リムそっくりの人形をつくってもらったといった故あって、イメージが固定されてしまっているからこそ、リムはリムとしてしかあれないとも言える。
初めはそれこそ、一人遊びのように。
腹話術のように、リムの役もラル自身がやっていたが。
いつからそんな力がついたのか、一度聞いた音、声ならば再現できるようになったのを皮切りに。
学習したのか、成長したのか。
あり余りすぎるラルの魔力を込められすぎておかしくなってしまったのか。
リムだけでなく、アイアやイクタも自由意思、自我を持つようになって。
最近は特に付き合いの長いリムが、主であり分身でもあるラルのことをからかうようになってしまって。
「……っ、よし。それじゃあアイア。ローサさんたち別班への連絡を頼むよ。イクタはイゼリさんについて進路の露払いをお願い」
アイに言われて耳としっぽをつけたままながら、何とか仮面をつけていなかったのならば。
リムのからかいを思い出して、顔を真っ赤にしていることが皆に知られてしまったいただろうことは間違いなくて。
ラルは、アイさんありがとうと心内で一人ごちつつ。
はっと我にかえって切り替えるかのように二体の使い魔にそう指示して。
じゃあ行こう、とばかりに駆け出そうとして。
「あ、待ってラルちゃん。直線距離でまっすぐは行けないよ。こっちこっち」
「あ、ごめん」
「……そして時にはかわいい趣味とお茶目なギャップを見せるわけだ。うん、何度でも言おう。勉強になるねっ」
イゼリに呼び止められ、照れくさそうに戻ってくるさまは、仮面をつけていて尚、目の当たりにしたものを軒並みノックダウンしてしまいそうな威力を持っていて。
それで心酔しないわけがないと、しみじみ納得させられるルキアがそこにいて……。
SIDEOUT
(第96話につづく)




